第57話 用意周到
あれ以後。エリーゼさんはアルさんの家に住み始め、一緒に働くようになっていた。
エリーゼさんはお嬢様だと言うだけあって、色々な人に会うからか、コミュニケーション能力はかなり高い。接客も手慣れたもので、諸々の手順さえ覚えた後は、難なく仕事をこなし始めたのだった。
大人の余裕というやつだろうか。急なお客さんの質問にも臆せず対応し、テキパキと働く姿は優雅でもある。
「ご注文は以上でよろしいですか?」
赤い髪を括り、更にバンダナで清潔にまとめたエリーゼさんがレジで微笑んだ。会計の後は風雅な所作でお釣りを手渡し、アルさんが手早くも丁寧に作った商品を渡す。
アルさんとエリーゼさんは真摯に働いており、営業中は全くそういう素振りを見せないものの。画になる2人の間からは、隠しきれない幸せなオーラが漏れ出て来る程だ。
人間不思議なもので、幸せそうな人々を見たりその側にいると、雰囲気が伝播して、周りに居る人も何だか幸せな感じがするらしい。しかもアルさんとエリーゼさんの場合。疑いようのない美男美女なのもあるだろうが、見る者に妬みや嫉みが湧く余裕も無いくらいの圧倒的な『幸せ』を醸し出しているので、もうただただ圧倒されるだけだ。
愛と幸福を放ち続ける魔王2人組とでも言ったらいいのだろうか。仮に殺意と使命感に満ちた勇者が現れたとて、2人の前に立つと剣を納めて膝を着く以外無い。そう思える程の雰囲気で疑い無い。
「周りに花が咲いて見えるわね……」
「はい。私はこういった場面を漫画で読んだ事があります」
シルベーヌとミルファは、エリーゼさんとアルさんの空気をそう表現した。そして更に2人は言う。
「良いわねえ恋人って。目の前であそこまで幸せそうにされると、羨ましいとか通り越して良いなあってしか思えないもの。良いわねえ」
「アルさんもエリーゼさんも、活力に満ちていますしね。美味しい食事と暖かい家に愛する人。体力気力の充実に愛の後押しで、向かうところ敵なしなのでしょう。良いですね」
そう言うと2人は、どこか遠くを見るようにため息をついた。
ともあれ。幸せ満載の美味しい料理で売上は伸び続けており、なるべく騎士団の詰所近くや治安の良い場所を選んで営業する事も功を奏したのか、先日のような悪漢は一度も見ていない。むしろ実際に恐喝紛いの事が起きたのもあってか、ちょくちょく騎士団員が制服を来て来店してくれるようにもなった。
アルさんとエリーゼさんも真摯に応対して、美味しい商品を騎士団員が買っていくのも手伝い。美味いと噂を聞いた騎士が近くの詰所から『パトロール』に来る事も多々ある。新米らしい若い騎士が、詰所のみんなの昼食用にと山盛りのホットドッグを買っていくのは、都市の住民たちにも微笑ましい目で見られていた。
俺達は探索者協会を頼っての警備などを考えたが、そんな事をしなくとも、騎士団という社会秩序を守る組織が働いているのだ。街を離れれば生体兵器がうろつくような世界だが、沢山の人が集まる都市がきちんと運営されているから、社会の安定具合を考えると当然と言えば当然だ。
どうも考え方が探索者に染まりすぎているというか、自分の身は自分で守る。という考えに寄り過ぎているのを自覚した。
そして念願の報酬だが――
「協会で見た額より多いじゃないですか!」
「ええ! 皆さんのお陰ですよ! 利益の多いメニューや飲み物なんかも飛ぶように売れたおかげですね。広告料なども支払わないと駄目だとお嬢様に言われて、それらも含めて色を付けておきました。ああ、安心してください。これだけ払っても余裕はありますから!」
払う予定だと言われた数字を見て俺が驚くと、アルさんが爽やかに笑って答えた。
今はアルさんの家の中。お客さんを気にする事も無いので、アルさんとエリーゼさんは幸せオーラを3倍に増して放っている。そしてそのオーラに当てられる俺達は、お金の事や舞踏号の事を考えなければ、意識を持って行かれそうだ。
シルベーヌが大きく頷き、嬉しそうに俺に言う。
「この額なら、舞踏号の改修も少し出来るわね。改修案も図面は少し引いてあるし、307の人達と相談して、諸々の調整したら手が付けれるわ」
「おお。って事は」
「久しぶりに機械油とタンパク燃料にまみれるわよ! あ、でもアルさんのお店はどうしましょうか?」
それを聞いたアルさんは、大丈夫です、と大きく頷いて爽やかに語る。
「皆さんが居ない間も、自分とエリーゼ様とでやっていけます。それに。実は皆さんが離れても大丈夫なように、昔うちで働いてくれていた人たちにも声をかけてあります。皆さんが妙な人たちを追い返してくれてからは安全ですしね」
「なら安心ですね。それでも何かあったら、私達を頼って下さい」
「もちろんですよミルファさん。こんな事を言うのも変かもしれませんが、優しい探索者の知り合いが出来たのは、私とアルにとって心強いですから」
アルさんの後にたおやかに微笑んだミルファへ、エリーゼさんがあでやかに微笑み返す。深窓の令嬢と良家の御嬢様が微笑み合うのは、その一角だけ違う雰囲気に見える何かがあった。
しかしまあ、お店を気にしないで良いのはありがたい。知り合いには酷い目に遭って欲しくないものだ。それに人手も目処が立っているようだし、安心して舞踏号の改修や他の事に専念できる。加えて。また店を手伝ってくれるなら喜んで給料も支払うと言われ、俺達は改めて御礼と共に頭を下げたのだった。
そういう訳で挨拶なども程々に、ひとまずアルさんの依頼は完了だ。
任務完了の報告をしに行った際。それとなく探索者協会の中で噂話などを探ってもみたが、あまり有益なものは無い。
最近は寒くなって来たから野外での依頼は暖房が必須だとか、儲けの少ない仕事もやらないと良い評価がもらえないだとか、どこかの探索者が輸送船の船長をぶん殴っただとか。何とも言えない噂ばかりである。
ただ。寒くなって来ているのは事実で、急に冷え込んできたというより、季節の変化が急激な感じがするのだ。それをシルベーヌとミルファに聞いてみると、まずミルファが答えてくれる。
「戦後はよくある事です。メイズ島の気候は安定していますが、それでも急激な気温の変化は珍しい事ではありませんよ。春夏秋冬もありますが、春と秋が極端に短い時もあります。今年はそういう年なのでしょうね」
「嘘かホントか。昔の戦争で使われた超磁力兵器で地軸がねじ曲がってるとか、どこかで気象コントロールの機械が人知れず動き続けてるって話もあるわよね。本当なら、とんでもない事するわよねえ昔の人」
冗談のように言うとシルベーヌは電話を借りに行き、ミルファは探索者協会の発行する情報誌を取りにいったのだった。
俺は変わった依頼が無いか端末を触りに行ったところで、どこかで見た戦闘服姿の人が視界の隅を横切る。短く切った黒髪に、濃い無精髭と岩を削ったような横顔の人物。同業者のナビチさんだ。
大股に歩くナビチさんは、どこか苛ついた表情で受付に向かうと、勢いよく机に何かの書類を叩き付ける。それなりに大きな音が響いたはずだが、探索者協会全体の喧騒の中では誰もその音に反応はしない。そしてナビチさんは、唾が飛ぶ勢いで受付の職員に何事かを言い始めた。
「――だろうが! ふざけやがって! オレ達の命を何だと思ってやがる!」
「申し訳ありませんが、私に言われても……」
「ああ! 八つ当たりだってのは分かってる! すまねえ! でも言わずにいられねえんだ! だからあのジジイを出せ!」
「連絡を取るには、少々時間が――」
「街中で使える電話くらい秘書が握ってんだろうが! 今すぐ呼び出せ!」
その後も押し問答を続けるナビチさんと受付の職員だったが、しばらくするとナビチさんは再び机を叩き、何事かを職員に囁いた。すると職員は小さく頷き、ナビチさんをカウンターの奥へと誘う。ナビチさんはカウンターを飛び越え、大股に奥へと歩いて、どこかへ繋がる扉を抜けて姿を消した。
俺がぼんやりとその方向を見ていると、戻って来たシルベーヌとミルファが妙な顔をして俺に聞く。
「どうしたのブラン?」
「ああいや。ナビチさんが居てさ。凄い形相で奥に向かって行ったんだ」
「旧市街で会った探索者の方ですね。何かあったのでしょうが……」
何があったのか聞く機会を逃したので、今から聞きに行くわけにもいかない。
先日の喧嘩でも感じたが、タイミングというのは本当に大事だ。今だって、失礼だとか馴れ馴れしいという気持ちを打ち捨てて、何事かを聞きに行く事も出来たはずである。きちんと機会を掴む行動力を養わねばなるまい。
シルベーヌが腕を組んで少しだけ悩み、難しい顔をして俺とミルファに言う。
「まあ。機嫌悪い時にわざわざ話を聞く必要もないんじゃない? そもそも私達、ナビチさんとは1回会っただけだし。というか、私は会った事無いわね」
「だよなあ。あんまり関わりないから、ちょっと尻込みするし……」
「また次回と言う事で。今日は電話を借りて、307小隊の整備班の方々に手伝いをお願いしましょう」
ミルファの言葉にシルベーヌが明るく返し、彼女は軽い足取りで電話をしに向かったのだった。
受話器から離れた俺でも分かる程の声量の『YES』を聞くと、また数日後の非番の日に来てくれることが決まり、それまでは調べものに腰を入れて過ごす事になる。
調べものの中でも収穫があったのは、シルベーヌがじわじわと解析していた機械の残骸についてだ。
曰く。『一種のパルス発信機』との事で、それだけなら何でもない事だが、戦前の技術と戦後に再発見された技術の合成品であり、普通の発信機ならここまでする必要は無いという。
そして一番の問題が、運よく回収できた部材が存在したが、シルベーヌの力では解析できないという事だ。
「中のプログラムを覗けたけど、ちょっと私には難しすぎてねー。特化したソフトウェアの何か。っぽいのは分かるんだけど、そこから先がちんぷんかんぷん。もっと勉強しないと駄目ねー」
そう言ってシルベーヌは背筋を伸ばし、ミルファに肩を揉まれていた。だらしない顔で目を閉じ、肩や背の筋肉を解されているシルベーヌは、更にだらしない声で言う。
「う”ぁー……しばらく同じ姿勢で固まってたから、思ってた以上に凝ってたみたいね……すっごい気持ちイイ……」
「お疲れ様です、シルベーヌ。頭と首の付け根辺りも負担がかかっていたようですから、この辺りを押すと」
ミルファが優しく微笑み、両手でシルベーヌの首の付け根を軽く押した。するとシルベーヌの身体が一瞬ぴくんと動き、だらしない顔がさらにだらしなくなり、悶えて声を上げる。
「う”あ”ぁ”あ”ぁ”……イイわね、これ、あっ……お”ぉ”ッ……」
「シルベーヌは人型機械の身体の疲労などは気にするのに、自分の身体を気にしなさすぎです。生身の人は、普段から肉体を気にしないと駄目ですよ」
「そうは言われても……お”ぉ”あ”ぁ”ー……効くわねー……」
「キッチンから戻ったら何かと思えば……鈍い声出すか艶めかしい声出すか、どっちかにしてくれ……」
俺は抗議の声を上げつつも、シルベーヌとミルファに言われて作った、甘めのミルクティを差し出したのだった。
さて。待ちに待った、307の整備班員達が来てくれる日。その午前中である。
シルベーヌとミルファ、そして俺は。装甲の広告を剥がした舞踏号を座らせたガレージで、そわそわして到着を待っていた。すっかり冷え込んできたので灯油式のストーブを出し。ストーブを囲んで手を暖めている。
吐く息が白くなる程では無いが、全員が作業着の前をぴっちり閉め。襟元から暖かい空気が逃げるのを食い止めていた。
そこに遠くから、乗用車のエンジン音が聞こえだす。
「来たっぽいな」
俺がそう呟いてガレージの外に出ると、2人も寒そうにしつつ付いて来る。道の先を見れば、大きなワゴン車が2台。こちらに近づいて来ていた。
2台は俺達の前で景気よく止まると、先頭の車の運転席からカメラ頭の整備員、ダースさんが降りて来て笑う。
「久しぶり! シルベーヌちゃんもミルファちゃんも元気そうで何より!」
「お久しぶりですダースさん! またお世話になりますね!」
シルベーヌが答えて頭を下げると、ダースさんは再び笑った。
「オレ達の腕を見込んで声かけてくれるのは嬉しいし、シルベーヌちゃんの頼みだからね! それに割りの良いバイトみたいなもんだから、こっちも大歓迎さ! それじゃあ早速……って言いたいところだけど、お土産があるんだ!」
「お土産。ですか?」
ミルファが小首を傾げると、2台のワゴン車から勢いよく整備員達が飛び出し、色々な機材を車から運び出し始める。その中でもまず。大きな黒塗りのケースがミルファの前に置かれた。
ダースさんが自慢げに胸を張り。そのケースを開く。中に入っていたのは、肘の部分で折りたたまれた2本の『腕』だ。もちろん人間の腕では無く、4本指で黒く塗られた、艶やかな機械の腕である。肘などに継ぎ目の無い見た目をしており、俺の太ももくらいの太さをしていた。
そしてその腕を見たミルファが、目を輝かせてダースさんに問いかける。
「戦闘服用の追加腕ですか。しかもこれ。騎士団の物ではありませんか?」
「よく知ってるね! 騎士団の型落ち品の、そのまた試作品だよ! 倉庫の隅に転がっててね、せっかくなら使える人に使ってもらうのが良いから持って来たんだ。もちろん正式に許可も貰ってるから、物資の横流しとかじゃないよ?」
「私、戦闘服を着て来ます!」
ミルファが嬉しそうに家に入り、またすぐに戦闘服を着込んで戻って来た。そして髪を軽くまとめ。シルベーヌの手助けと共に、重く大きい追加腕を背負うように戦闘服の背中に取り付け始める。
「生身の人がこういうのを使う時は、相当な訓練がいるからねえ。自然そのままならあるはずもない3本目と4本目の腕を動かす感覚なんて、そうそう掴めるものじゃない。でもアンドロイドなら一瞬だ。機械ベースの人間の良い所ってやつさ!」
そうダースさんが俺に言い終わるころには、ミルファの背から黒い2本の腕が生えていた。
戦闘服の上から、背骨、腰回り、足の側面に沿って追加腕の基部が取り付けられている。基部は薄めの追加装甲のような見た目で、ミルファの戦闘服姿をいささかマッシブに見せていた。
そして肩甲骨の辺りを軸に2本の黒い腕が、肘を畳んで拳を握って待機している。近くで見ると異形の腕だが、遠目なら黒いランドセルのようにも見えるかもしれない。
ミルファは背筋を伸ばすと、目を閉じて言う。
「少々お待ちください。最適化を……大丈夫そうですね」
言い終わるや否や、ミルファの背に取り付けられた追加腕が、天に向かって拳を突き上げた。そして動きを確かめるように、四方八方へと追加腕を伸ばしたり曲げたりする。追加腕の、人間で言う肘や肩、手首の関節に可動範囲の制限は無いようだ。肩の上から腕が突き出せたり、脇の下から腕を出せたりと、かなり柔軟に動く。
そして動く追加腕は、改めて見ると大きい。だらりと垂らせばミルファの膝のあたりまで届くし、肩の上から回しても、ミルファ本来の腕と握手出来るくらいには余裕がある。
本来の腕が追加腕の動きに引っ張られる事も無く、それぞれ独立して動かせるのも確かのようで、4本腕の魔人とは、まさしくこういう姿を指すのだろう。
「こりゃすごいな、強そう」
「はい。本当に自由自在ですし、パワーもありますね」
俺が呟くと、ミルファは笑って俺に近寄り、追加腕だけを俺に向けて伸ばし、その黒い手を俺の脇の下に入れる。驚く間もなく、俺の身体はふわりと持ち上げられた。『高い高い』をされている状況で、俺の足は地面に着かず、俺がじたばたしてもミルファは微動だにせず、追加腕もビクともしない。
「おおおっ! 凄いけど! おっ、降ろして!」
「ふふふ。これは少し気分が良いですね。ブランを逃がしません」
ミルファがいじわるに笑いつつも、俺を地面に下ろす。捕食される虫の気分とはこういう物かという体験だ。
そしてミルファは自分の両腕を軽く曲げ、追加腕も少し曲げ、4本の手でVサインを4つ作ると、笑顔と共にクアドラブルピースを俺に向けた。追加腕の4本指も、普通の手と遜色なく動くらしい。
そんなミルファを見たシルベーヌが明るく笑う。
「すっかりウキウキじゃないの。良かったわねミルファ」
「はい。しかしダースさん。こんな良い物を貰っても、本当に良いんですか?」
「もちろんだよ! 喜んでもらえたなら持って来た甲斐があったってもんさ! でも細かい説明書も一緒に入ってるから読んでおいてね! 追加腕の補助機能もあったりするから――」
「これでしょうか?」
ミルファが言うと、追加腕の前腕部が少し開き、そこから更に小さな腕が1本現れた。その小さな腕は、どちらかと言うとマジックハンドなどに近い、機械的な物だ。
ダースさんが大きく頷いて答える。
「それそれ! 弾倉の交換とかに使う補助機能のつもりだったらしいけど、正規品じゃ不採用になったんだ。ライフルくらいなら、その追加腕1本で1丁持てるはずだよ。狙いを付けるのはまた別の才能になっちゃうけど」
「十分です。本当にありがとうございますダースさん」
ミルファが微笑み、深々と頭を下げた。
ダースさんのカメラ頭がどこかにやけた感じになったが、すぐに真面目な雰囲気に戻って話を続ける。
「他にも色々とあるけど、後ろのワゴンから取り出してからだね。シルベーヌちゃん向けの工具とかもあるよ!」
「本当ですか! よーし私も荷下ろしを手伝います! ミルファも追加腕の慣らしで手伝って!」
「もちろんです。これは力仕事も捗ります」
シルベーヌが目を輝かせ、ミルファも嬉しそうに、肩越しに前へ向けた追加腕の手をわきわきさせてワゴン車に向かった。
そしてダースさんがその背を見送った後。俺に向き直り、一層真剣な表情で言う。
「ブラン君にも渡しておく物がある。今の君に必要だろうと思う専門書でね」
「専門書? 整備とか、戦い方についてですか?」
「そうとも言える。重要な書籍さ。見てもらった方が早い」
ダースさんが俺に差し出したのは茶色い紙袋だ。手触りからすると複数冊入っているらしい。促されるままにそれを受け取った俺は、紙袋を開けて中身を取り出す。
まず目に飛び込んできたのは『先天の美! 後天の美! 生身の良さと機械の良さ』という見出しの本。その表紙には際どい水着を着た美人が2人、笑顔でこちらを見ている写真が掲載されている。見出しの通り1人は生身の人で、もう1人はアンドロイドだ。
「何が専門書ですか! 前の球体関節特集と同じ雑誌じゃないですか!」
「ブラン君にはそろそろ新しい刺激が必要だろうと思ってね! 安心したまえ! 前回同様未開封だぞ!」
「前回同様どうでもいいわ!!」




