第45話 メイズ旧市街地下 敵対者
『ふんっ!』
1m四方のコンクリート塊を、俺は思い切り投げ飛ばした。
縦穴の中に居るワームは、投げつけたコンクリート塊をずるりと這ってかわし、憎々し気な呼気を周囲に響かせる。
俺は再び足元にある人型機械の手の平サイズの瓦礫を掴み、右腕をしならせて投げつけた。1m四方のコンクリート塊よりも速度が乗った瓦礫は、鋭い音を鳴り響かせてワームの身体にぶつかる。ほんの少しだけ、鱗が削れて剥がれ落ちた。
ワームは鬱陶しそうな顔をしたが、攻撃を受けても全く意に介していない。
『流石に効果が薄いか』
「異常に成長しているから、痛覚が薄かったり多少の攻撃では効かないのでしょう」
手斧を持ち直す俺の呟きにミルファが答えると、縦穴の端に仁王立ちになって12.7mmの重機関銃を腰だめに構えた。そしてすぐさま銃口が火を噴き、大蛇の身体に銃弾が吸い込まれていく。銃弾は鱗を貫き、その締まった肉を穿ったが浅い傷でしかない。針で少しだけ刺されたような傷と言って良いだろう。
ワームは再び鬱陶しそうな顔をして、縦穴の縁に並んで立つ俺とミルファ。そして余所者達を見た。
『どうやって仕留める?』
「体内にグレネードを放り込むのも効くと思いますが、せっかく上を取っているのです。わざわざ降りて危険を冒すような事はせずとも良いでしょう」
『やっぱり、瓦礫を投げ続けるのが一番かなあ』
「はい。ひとまずは。銃弾のめり込み具合から、銃弾を跳ね返す程の防御力はありません。尖った物であれば、舞踏号の投擲で深刻なダメージを与えられると思います」
『尖った物……』
俺が縦穴の底で這いまわる大蛇から視線を逸らし、周りをちらりと見やった瞬間。ワームはその長い身体をくねらせ、尾で縦穴の端を薙いだ。どこからが尾でどこからが身体なのかはともかく。頭を支点に、下から鞭のように身体を振るった。
その殺気を肌で感じ取った俺は、ほんの少しだけ身を横に向ける。尻尾の直撃は避けたものの、縦穴の縁に大質量が当たった事で足元が揺れ、劣化したアスファルトが俺の足を地面にめり込ませた。
これが生身であったなら、ちょっとしたよろめきで済んだだろう。しかし、今の俺は人型機械なのだ。相応の体重が足を更にめり込ませ、次いで足元が抜け落ちた。
角度の急な滑り台のようになった縦穴の縁で、俺の身体は穴の底へと滑りだす。
『ああヤバイっ!』
「ブラン!」
折角気合を入れたというのに、俺は情けない声を上げて縦穴へと滑り落ちていく。足腰に地下の配管や瓦礫がぶつかるが、足裏や腿の装甲はそれを苦にしなかった。
そして下にはそれを待ち構える大蛇の赤い目。大蛇は俺が着地した瞬間に襲い掛かるつもりなのが容易に察せた。
そうはさせまいと人工筋肉を唸らせ、急な斜面を無理矢理蹴とばして大蛇の方へと跳ねた。蹴り飛ばした壁から土煙が上がり、俺の全体重が乗った足の裏が大蛇の眉間にめり込んだ。大蛇は濁った呼吸音を鳴らす。
俺は何かに少しだけヒビが入った手応えを足の裏に感じつつ、再び足に力を込めて大蛇の眉間から軽く跳ぶ。そして手を着きながら、不格好に縦穴の底に着地した。足腰の関節にとんでもない負担がかかる事をしたが、ぎっくり腰になったりはしていない。
姿勢を立て直して立ち上がると、大蛇も頭を振って姿勢を立て直したところだ。丸い縦穴の底で、鈍色の巨人と大蛇が睨み合う。
人型機械に乗ってなお自身の倍はあろうかと言う大きさの蛇に睨まれるのは、流石にいい気分がしない。しかも額を蹴り飛ばされ、そこから赤黒い血を垂らして怒りに燃えている大蛇だ。更に。逃げ場のない穴の底なのが不安を煽った。
しかし頭に、ノイズ混じりでも不安を吹きとばす明るい声が響く。
「こうなったら仕方ないわ! ミルファは機関銃でブランの援護! 余所者の皆さん! 鉄骨でも何でも良いから、尖った物をたくさん集めて! 使い道? 私のパイロットと舞踏号ならいくらでも思いつくわよ! なんたって素手でミノタウロスを倒したパイロットなんだから!」
おいおい、好き勝手に言ってくれるな!
なんて苦笑いと言葉をのみ込み、自分の胸で燃料に変える。感覚的には笑みを浮かべたのだが、口元のスリットから熱い空気が排出された。
まあいずれにしろ、美人に期待されてるなら応えなければ男が廃る!
『行くぞォ!!』
右手で手斧の柄の先を握りしめ。俺はグッと踏み込む。蹴った瓦礫が真後ろに吹き飛んだ。その猛然とした突進の最中、思い切り右腕を振りかぶって手斧で袈裟切りに振り下ろす。しかし。大蛇の動きは速かった。
大蛇はその長い身体をずるりとうねらせると、瞬時に俺の右側に回り込む。間髪入れず。そのままの勢いで口を開き牙を剥き、俺に噛みかかった。
肌に感じるざわりとした感覚。その気配のまま、横に倒れる程上半身を傾けて右腕の手斧を払った。微かな手応えの後、大蛇の口の端がぶっつりと斬れて、牙が数本折れ飛んだ。大蛇は忌々し気にジュッと呼吸音を慣らし、一旦距離を取る。
バランスを崩した俺は、受け身を取る間もなく背中から地面に倒れ込んだ。無論。その隙を大蛇が逃すはずもない。
再び噛みつきにかかろうとするその眉間に、何十発もの機関銃の弾が降り注いだ。ミルファの機関銃による援護だ。怪我のある額に銃弾が刺さるのは大蛇でも辛いらしく、再び忌々し気な呼吸をして上を見た。
「ブラン! 大丈夫ですか!」
『損傷無し! ごめん!』
無線で短い会話をしながら、俺は立ち上がる。
同時に。大蛇は縦穴の上に居るミルファを睨んでとぐろを巻き、その身体に力を込め始めた。太く長い身体が、まるでばねのように――そうか、バネか!
『ミルファ! 下がって!』
言うや否や、大蛇はとぐろを巻いた身体を凄まじい勢いで伸ばす。
だが、ほんの少しだけ早く気付けたのが幸いした。地面を離れて縦穴の縁に飛びかかろうとした大蛇は、全身が宙を飛びかける直前、俺に尻尾を掴まれていた。
俺は力任せに叩き付けた手斧の刃を尾にめり込ませ、それを支点としつつも、更に両腕で抱き付くように大蛇の尻尾をしっかりと掴む。大蛇が重力に対抗しようとしたベクトルを、腰を落として全身で抑えてゼロへと戻した結果。足元の瓦礫が抉れて、爪先がめり込んだ。
次に腰や背の人工筋肉が唸りを上げ、無茶苦茶な動作を実現するべく収縮する。
『ぬおおッ!!』
苦悶なのか気合なのか。俺はどちらとも取れない叫びとと共に全身の人工筋肉を滾らせ、縦穴の外へ出ようとした大蛇を、力任せに縦穴の底へと引っ張り込んだ。俺は再び倒れ込むが、大蛇も突然の事態に対応できず、穴の底へと叩き付けられる。地響きが轟いた。
だがまだ油断してはいけない。そう念じて再び起き上がるや否や、大蛇が太い身体を捩じって俺の身体を弾き飛ばした。
ほぼ真横に俺は転がり、縦穴の壁に背中から叩き付けられる。
『ぐあっ……!』
視界の急激な動きに頭がついて行かないが、咄嗟に防御した右腕全体の装甲が軋んだ。人工筋肉がギチッと鳴る。叩き付けられた際には背中が痛みを訴え、首の関節がむち打ちのようになった。
まだ大丈夫だ。細かな痛みが増えても、身体の基幹は十分動く。シルベーヌと307小隊整備班に感謝する以外無い。
深呼吸を一度。全身のダクトから白く熱い息を吐き出して立ち上がると、爛々と輝く左目で大蛇を見据える。
大蛇は相当頭に来ているようで、鎌首をもたげて俺に牙を剥きだしだ。
手斧はいつの間にかどこかへ行ったので素手。武器が無いのは心許ない。いや、むしろ身体を存分に使えて良いと考え直す。
腰を落として騎士団仕込みの格闘術の構えを取り、口元で不敵な笑みを浮かべるスリットからゆっくりと息を吐いた。
大蛇の頭が左右にゆらりと揺れ、俺の身体に噛みつこうとしているのが肌で感じられる。次いで肌の感覚が、右はフェイント、左が本命だと叫んだ直後。目では追いきれない速度の噛み付きが走った。
僅かに右横に動き、更に上半身を傾けてスウェー。俺は身体を真横に向けてぎりぎりでかわし、腰を落とした反動で片腕を唸らせ、大蛇の頭を殴り飛ばす。追加装甲と補強で鈍器と化した拳が、大蛇の脳を揺らした。
一度距離を取ってバックステップ。深呼吸して冷静になる。ダクトから短く、熱い煙が上った。
「ブラン! そこからもう少し左へ!」
ミルファの叫びが無線を揺らし、俺はその通りに地面を蹴った。そしてすぐさま、縦穴の端から長さのある瓦礫が何本も降り注ぐ。地面に突き刺さったり横になって落ちて来た瓦礫は、鉄骨や道路標識、鉄パイプという、長さのある尖った物ばかりだ。
今度はシルベーヌの声が頭に響く。
「やる事は分かってるわね!」
『おう!』
「3カウントで手榴弾を投げ込みます! 怯むでしょうから、トドメはブランが!」
『了解!』
ミルファが続けた言葉にも返すと、すぐさまカウントが始まった。
「3!」
縦穴の底。その端に鈍色の巨人が。反対側には大蛇が。互いに目を逸らさず睨み合っている。大蛇はこちらの反撃が予想以上で、攻めあぐねているようだ。
忌々し気に俺を見る大蛇に睨み返しつつ、俺は地面に刺さった鉄骨を1本引き抜いた。長さは7mほど。錆が浮いていて少しだけしなるが、指先に伝わる感触から、中々の強度があるのを感じられた。
「2!」
見た目は錆びた瓦礫の1本かもしれないが、背筋を伸ばして大蛇を睨む鈍色の巨人が持てば、由緒ある名槍の一つに見えるだろう。
「1!」
ミルファの声と同時に、縦穴から何個もの小さな粒が降り注いだ。ミルファだけでなく、余所者達も手榴弾を投げたのだ。小さな粒達は大蛇の背で1度跳ねると、爆風と破片を周囲にまき散らした。鱗を何枚か引き裂き、表面を焼いた気配をセンサが感じ取る。
煙の中で少しだけ怯んだ大蛇に向け、俺は右手で鉄骨という槍を肩に担ぎ、槍の穂先をこめかみに寄せて狙いを定める。左手を前に、右手を後ろに。身体を横向きにしつつも思い切り上体を使い、足は軽くステップ。
『いっけぇぇ!!』
そのまま全身全霊の力を込め、オーバースローで槍を投げた。背中に肩や肘、手首や指先が痛い程勢いのある投擲だ。
ぶん投げられた鉄骨を避けようとした大蛇だったが、手榴弾で怯んでいたせいで反応が遅れ、その太い身体に鉄骨が深々と突き刺さった。苦し気な呼吸音がジュッと鳴り、赤い目が忌々し気に俺を見据え――片目に再び投擲された鉄パイプが突き刺さった。
大蛇の頭が、ぐらりと天を仰いだ。
俺は集められた廃材を、何本も拾っては投擲し続ける。大蛇の身体に廃材が突き刺さる度に、肉を貫く鈍い音が縦穴の底に響き、その動きがどんどん鈍くなっていく。
廃材を全て投げつけた後。俺は全身のダクトから息を吐いた。
身体に10数本の廃材を投げつけられ、その全てが全身に深々と突き刺さった大蛇が、ゆっくりと弱々しく地面を這い始める。その赤い目にはただひたすら、俺への憎しみだけがあった。
こいつが憎い。こいつが憎い。こいつが居なければ。
そういった感情が肌にぶつけられ、感情が感覚を呼び、心が感覚を言葉に変えて俺の頭に響かせる。ただの妄想というより、死にかけた命への哀愁だろうか。言葉を発しない大蛇だが、ただ一つ残った赤い邪眼が、俺への呪詛を延々と呟いているのだけは感じられた。
「ブラン! 最後の1本です!」
頭上からミルファの声が響き、俺はハッとして視線を上げる。彼女は白い塗料の剥げかけた道路標識を両手で掲げ、ふらつきながらも俺へと投げ落とした。
俺は丁度頭上へと降るそれを両手で受け止め、標識のある方を槍の穂先のように大蛇へと向ける。塗装の消えかけた標識のマークは『止まれ』。妙な因果を感じざるを得なかった。
深呼吸をもう一度。口元のスリットから熱く白い息を吐き、頭上でぐるりと槍を回し、その勢いのまま右から大蛇の頭を殴りつける。標識の先が曲がり、頭上から余所者やミルファ、シルベーヌの歓声が上がった。
振り抜いた標識をピタリと留めると、今度は一歩踏み込んで、力を込めて左から大蛇の頭を殴る。標識の先は千切れ飛び、再び歓声が聞こえた。
大蛇の眼が、戦化粧をした巨人を睨む。
大蛇は最後の力を振り絞り、口の端が裂けるほど大口を開けた。その動きは緩慢で、どこか諦めが篭っている。
戦化粧をした巨人は思いきり腕を引くと、その上あごから頭蓋の真ん中までを、力任せに歪んだ槍で突き刺した。貫かれた大蛇は一瞬震え、そのまま動きを止めた。
絶命してなお赤い目が、紅さを増して見開かれたまま、戦化粧をした巨人を見つめていた。
「オーライ! オーライ! はいオッケーよ! そのまま座ってー……はい大丈夫! ブラン! コクピットから出て良いわよ!」
紆余曲折あって何とか縦穴から這い出した後。俺はシルベーヌの誘導でゆっくりとトレーラーの荷台に座り込んだ。コクピットを開ける操作をし、一瞬だけ意識が途切れた後、生身の感覚が戻ってきた。コクピットから飛び降りて地面に立つと、全身がビリッとする。
喉の渇き。空腹。筋肉痛。関節痛。尿意。左腕の痛み。肺の痛み。足の痛み。
今まで感じていなかった全ての感覚が同時に襲い掛かってきて悶え。「ア”アッ」だか「ヘ”ェァッ」だかよく分からない声を上げ、地面に膝を着いた。
ミルファが慌てて俺に近寄る。
「大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫大丈夫……あ”ぁっ! ごめん! 肩貸してくれるのは嬉しいけど、左腕は死にそう……!」
「失礼しました。ですが、元気そうでよかった」
痛みを伝えつつも笑う俺に、ミルファはどこかホッとした様子で答えてくれた。
ふくらはぎや足の裏が攣りそうでパンパンなままだが、ぐったりしていては格好悪いのでよろよろと立ち上がる。その身体を、ミルファが右側からそっと支えてくれた。
「戦闘服の補助があるとはいえ、短距離走並みの速度で軽い長距離走をしたような状態です。特に心肺はそのままなのですから、生身のブランにはきつかったでしょう」
ミルファはたおやかに微笑んでそう言ってくれたが、彼女の頬や鼻の頭にも、どこで付けたのか煤や灰色の汚れが付いていた。現場で踏ん張ったのは俺だけでなく、彼女もなのだ。
俺は笑い返して言う。
「ミルファもお疲れ様。やっぱり、一緒に居ると助かるよ」
そう言ってミルファの頬についた汚れを指で拭うと、彼女は耳先を赤くした。長いまつ毛に彩られた瞳が凄まじい勢いで動き回り、彼女の動揺が察せた。
まずい事したかと思い、俺は慌てて口を開く。
「嫌だったか! ごめん! つい!」
「いえ! その! 大丈夫です! 驚いただけなのです! 嫌ではありません! 問題ありません! 歓迎いたします!」
慌てる俺以上に慌てるミルファを見て、俺は逆に冷静になってしまった。ここまでの焦り具合は流石に初めて見る。いつも攻められているので、こういった事は手慣れたものだと思っていた。
そんな俺とミルファを見て、シルベーヌが荷台から飛び降りて大笑いする。
「何やってるのよ! そういうのは後々! ほらまずは撤収準備! ライフルと機関銃片づけて、公園まで戻るわよ! 余所者の皆さんも撤収の準備してくれてるんだから、私達も働かないと失礼でしょ!」
「はい! 了解ですシルベーヌ」
「おう! ああ、投げ捨てたライフルとかヘルメット仕舞わないと……」
ミルファはそう言うと片付けに奔走し、シルベーヌも舞踏号の固定などに戻る。
俺も片づけをしようと試みるものの。全身がビリビリして、一歩毎に電流が走るような状態なのだ。奇怪な声を上げつつも、せめて自分の物はと片付けを始める俺を見て、周りにいる皆が心配しつつも微笑んでくれた。
片付けを続けつつも、色々な人と話をした。
シルベーヌや余所者の皆さんは、ここまでの移動はシルベーヌのトレーラーの荷台に飛び乗って来たのだという。
なんでも暴れ馬の方がまだましだと思えるほどの運転で、路面の悪い旧市街をかっ飛ばしたシルベーヌには、余所者全員が戦々恐々としたと笑い話をしてくれた。
無論。余所者達の撤収の指揮を執るシェイプス先生に、雑談をする俺達が睨まれたのは言うまでもない。それでも、先ほどの大蛇。ワームを倒したのは素晴らしかったと皆が褒めてくれた。
弱そうな顔をしているのに意外とガッツがあるとも言われ、嬉しいやら困惑するやらだ。
ようやくトレーラーに荷物を仕舞い終えると、先に自分の片付けを済ませたミルファが、濡れタオルを俺に渡してくれた。ただ水で濡らしただけのタオルだが、火照った顔にはひんやりして心地良い。
「ありがとうミルファ」
「良いんですよ。まだお辛いでしょうから、どうぞ私を頼って下さい」
そう言って再び俺の右肩を支えようとしてくれるが、俺はやんわりと断って皆から離れようとした。
ミルファはそんな俺を見て、ちょっとだけ悲しそうな顔をし、うつむき加減に俺に聞く。
「その、先ほどの事が、お嫌でしたか?」
「へ?」
「頬を撫でてくれた時の、私の反応です」
彼女はそう言うと、所在なさげに両手を胸の前に置き、指の先を合わせる。
これは勘違いさせている。しっかり否定しなければ!
「いやいやまさか! 新鮮な反応で驚いただけだよ! ほら、ミルファは色々と、慣れてる感じするから!」
「……本当ですか?」
「本当だよ。ミルファは前々から、俺をからかったりしてくれてるだろ。何かそれに影響されちゃったんだと思う! それに、今から俺は――」
ミルファが真剣な眼差しで俺を見る。
その真っすぐな目に若干口籠り、俺はぼそぼそと言う
「ちょっと、あれに行こうとしただけで……」
「どちらにです? 身体が辛そうですし、私が出来る事でしたらお手伝いしますよ」
「……小さい方が漏れそうで……そんなん手伝ってもらう訳には……」
「小さい……? あっ」
若干内股気味な俺を見て、ミルファは俺の尿意を察したらしい。彼女は頬を染め、耳の先を真っ赤にすると、差し出がましい事をしましたと言って顔をそむけた。




