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第27話    〃     作戦番号208877

「準備完了です! 周囲良し! 安全確認良し! 人型戦車ネフィリム! 起動スタンドアップ!」


 整備員達が3台のトレーラーの周りで固唾を飲み、3人の巨人が荷台から立ち上がるのを見守った。


 メイズ島北部の山岳地帯。その東に位置する起伏の多い荒野。大きく波打つ海がそのまま土塊と化したような起伏のある地面は、砂塵を含んだ風を生む。この草木もまばらな荒地は、あまり作物も育たない地域との事で、そうそう人が来る場所では無いと言う。

 普通の人が来ないという事は、野生の生物や生体兵器モンスターにとっては格好のねぐらだ。そしてそれは一般社会に加われない事情のある者や、人目を逃れたい者にとっても隠れ場所として丁度いいと言う事。

 発展している都市とは違った、独特の環境が形成される土壌としては十分だった。


『1番機。ラミータ。異常無し』

『2番機。ベイク。異常無し』


 騎士団員2人が乗りこんだ人型戦車ネフィリムが、トレーラーから立ち上がって整備員達や指揮車両に事務的に告げた。大声では無く、直接頭に響くようなノイズ混じりの声である。


 ノイズが混じるのは、頭の中に仕込まれた、意識選択式の短距離通信装置を介しているからだ。自分の手でオンオフを切り替える事は出来ず、常時受信状態にある半端な機器。

 『無線で話そう』と思えば、人型戦車ネフィリム(外部スピーカー)がオフになり、口を動かして喋る言葉が発信される。『普通に話そう』と思えば、発信はされずに(外部スピーカー)から声が出る仕組みだった。

 俺も無線にエラーを報告する。


『舞踏号。ブラン。異常無し!』

「この辺はジャマーが薄いわね。連絡が付くから安心!」


 耳元にシルベーヌの声が響く。しかし周りを見ても彼女のぼさぼさの金髪は見えず、ふと思い出して堅牢な指揮車両を見た。

 正式名称は何だか長い名前があったが、縮めて指揮車とも呼ばれる、6輪の装甲車を改造した車両だ。車の屋根にはいかにもなアンテナと、自衛用に機銃や煙幕弾を撃つ機械が備え付けてある。

 内部は運転手含めて6人乗り。机や椅子、情報処理用の端末、ジャマーに負けない強力な無線が搭載されている、言わば『動く作戦室』だ。

 今回の乗員はカール少佐。フレイク大尉。運転手と銃座要員の騎士団員。そしてシルベーヌとウメノさん。


 バックアップの大切さというよりも、機材の充実具合はさすが騎士団である。


『この前みたいに、連絡付かなくて焦る事はないな』

「そうね! あんまり触った事無い機材だから早く慣れないと。でもこの車狭くて……ウメノじーさん! 膝乗ろうとしないで! 邪魔!」

「椅子が堅いんじゃ。しかも冷たくてのう」

探索者シーカー協会の副会長に、オレの膝に乗って貰う訳にもいかないしねェ。それに、副会長さんは男の膝なんて嫌でしょ?」

「もちろんじゃぞ少佐! いやはや。貴方とは話が合う気がしますな!」

「オレもですよ、今度懇親会でも開きましょうかねェ。経費で落とせば、綺麗な子の居るお店も――」

「すいません運転手さん。この射出式の観測凧(ドローン)って自律駆動ですか? え、知らない? 説明書は――」


 無線から聞こえてくるガヤガヤした声。それは真面目な雰囲気を醸し出す騎士団のパイロット達とフレイク大尉とは、天と地ほどの差があった。


 フレイク大尉が眼鏡を取って眉間を揉む姿が目に入り、胃が痛そうな感じがひしひしとする。

 307(サンマルナナ)は愚連隊で宣伝部隊。その親玉だけれど中間管理職。色々と指揮系統を跨いだ任務と急な予定変更。今まで聞いた言葉達が繋がっていき、大尉の心境を何となく察せた様な気がした。

 眼鏡をかけ直したフレイク大尉が耳元の無線に淡々と言う。


「少佐。副会長。作戦が始まったら静かになさってくださいね。そもそも今回の、任務に佐官や重役が付いて来るという事自体。本来おかしいのですから」

「ごめんねェ、フレイク大尉」

「いやはや、ご迷惑を」

「謝罪は結構です。人型戦車ネフィリムは武装をどうぞ」


 3人の巨人がトラックの荷台に向かった。

 今回は人型戦車ネフィリム版のアサルトライフル。20mm口径で単砲身の機関砲を全員持つ。替えの弾倉は既に腰周りに付けられているし、ラミータ隊長とベイクは左腰に高剛性スチールの長剣を下げている。

 機関砲の確かな重みを右手に感じ、俺は両手で抱えるように持ちなおした。


 そして足元に、1つに結われた銀色の髪が揺れた。プロテクタの付いた戦闘服バトルドレスを着たミルファだ。華奢にも見えるその背には、12.7mmの無骨な重機関銃が背負われている。銃は307(サンマルナナ)の備品だ。


「舞踏号も機関砲を持つと、やはり様になりますね」


 ミルファが(舞踏号)を見上げ、嬉しそうに言った。

 返事の代わりに少し腰を落とすと、ミルファは軽い足取りで俺の右肩に上ってくる。いつもの定位置だ。


 全員の準備が出来たのを確認し、フレイク大尉が指揮車に向かいつつ言う。


「それでは、作戦地域まで移動しましょう。ラミータ中尉。以降の指揮をお願いします。私は指揮車両で、シルベーヌさんと情報担当を」

『はい! 了解です。フレイク大尉』


 ラミータ隊長(パラディン)が機関砲で敬礼(捧げ銃)をした後、(舞踏号)ベイク少尉(パラディン)を見る。


『移動開始だ。僕が先頭。右翼にベイク、左翼にブラン君。指揮車両を守る形で進んで行くよ』

『はい! 了解です!』

『了解です!』


 ベイク少尉(パラディン)の熱が篭った声が響き、一瞬遅れて俺もハッキリと返事をした。

 3人の巨人と1台の車が、整備員達やここまでの護衛に来ていた騎士団員達に見送られつつ、荒野へと進んで行く。



 荒野とは言え、機体を撫でる風は心地よい。足元では軽く土埃が立つが、視界を塞ぐような状態にはならないのも良い。肩に乗るミルファも随分とリラックスした状態で、上下する俺の肩に優雅に座っていた。

 そして地面の起伏自体はそう大きな物でも無い。大き目のデコボコが多い道を歩いているような感覚だ。無論、これは人型戦車ネフィリムにとっての感想で、車は違う。


 流石に随分静かになったものの、無線から聞こえてくる指揮車両内の音は結構大きい。ガタガタした音と、たまに聞こえる誰かのうめき声。傾斜のきつい所を通ったのか、時折響く大きな音。辛そうなのが耳だけでも分かる。ちらりと横を見れば、まるで水面を跳ねる魚のように車が上下していた。

 いたたまれなくなって、(舞踏号)は無線で声を掛ける。


『あの、無駄口になるかもしれませんけど、指揮車両の中は大丈夫ですか?』

「平気ですよ、ブラン君。ぐったりしているのは少佐と副会長だけです」

「うんうん! みんな静かなのは、真面目に警戒とかしてるからだから!」


 フレイク大尉の満足げな返事に続いて、シルベーヌの明るい声が返って来た。


「それに、大尉さん凄いんだよ! 私が機材の説明書無いですか。って聞いたら、パッと取り出して大事なとこはここですよって教えてくれるの! 細かい仕様の違いで変わってる場所とかも、しっかり把握しててさ!」

「事務に就いて長いですから、多分に慣れているだけですよ。違いが分かるのも、経費の計算等で数字のズレなどを見つけるのに慣れているだけです」

「その慣れが凄いんですよ! あ、それとここの説明なんですけど……って。すいません。無線は必要な時以外切りますね」


 なんだかんだで、シルベーヌはフレイク大尉とも仲良くなれているのが伝わってくる。

 指揮車両の中は大変かも、なんてのは杞憂で安心だ。一言も発しなかったカール少佐とウメノさんには、辛い旅路であろうけども。


 それから少しの間進んで行くと、ラミータ隊長(パラディン)が真面目な声で言う。


『ブラン君。ベイク。そろそろ予定の地点だ。このまま足を止めずに行くから再確認するよ。基本的にはこのまま進んで行く形で、2人は僕の後ろに。前情報だと居るのはゴブリンとミノタウロスぐらいだ。接近戦なんかしなくていい。落ち着いて銃を撃てば相手は死ぬ』

『はい。了解です。ラミータ隊長』


 ベイク少尉(パラディン)が答え、歩きながらも気を引き締めたのが見える。


『指揮車両は少し離れた場所で待機。無線は常時繋がってるし、パラディンの(カメラ)の映像は逐一、指揮車に送られてるからね。何かあればそれらを元に指揮車から連絡が入る。余計な事は考えない事。良いね』

『はい!』


 (舞踏号)は元気よく答えて機関砲を構え直した。


『ラミータ中尉。予定地です』

『はい。了解です。フレイク大尉』


 ラミータ隊長(パラディン)が足を止めずに軽く身を屈め、グッと加速して小走りになる。


『作戦開始だ』


 隊長の淡々とした言葉が緊張を煽った。

 左右に居た(舞踏号)ベイク少尉(パラディン)も、同じ様に走り出す。

 走り出してものの5分もしないうちに、ざわりとした感触が胸を駆け、センサがハッキリとその感触を情報として補足する。


『停止。構え』


 先頭を行くラミータ隊長(パラディン)が静かに言い、底の見えない窪地に向け、腰だめに機関砲を構えた。

 (舞踏号)ベイク少尉(パラディン)も同様に機関砲を構え、俺の肩に乗るミルファも機関銃を構える。


 一瞬の静寂。

 窪地の奥からこちらに向けて、緑色の波が現れた。


『撃てェ!!』


 3門の機関砲が同時に唸りを上げ、無数の弾丸がまき散らされる。

 人型戦車ネフィリムの腰の位置。斜め上から地面に叩き付けるように降り注ぐ鉄の雨が、ゴブリンの群れを引き裂き、何もさせずに血風と土煙に変えていく。

 銃火器という道具の威力を改めて認識し、かつてはコレを人間に向けて撃っていた時代があると言う事実に、少し寒気がした。


 立ち向かえないと感じ、ゴブリンの群れが纏まりを無くして四散していくが、人型戦車ネフィリム達の機関砲は、逃げるゴブリン達の背を撃ち続ける。

 しかし。一部のゴブリンには、真っすぐ巨人達目がけて走って来るものも居る。そこでミルファの出番だ。


「行きます」


 ミルファは短く言い切り、俺の肩先から飛び降りる。彼女はゴブリンの群れに向かって駆けつつ、機関銃の引き金を引いた。走りながらでも細やかで正確な射撃と、本来は銃座に据え置くような機関銃の威力が存分に発揮され、ゴブリン達が肉塊へと変えられていく。


『いい感じだね!』


 機関砲を撃つ手を止めず、ラミータ隊長(パラディン)が言う。


探索者シーカー2人を訓練した甲斐があるってものだよ! 足元に寄って来る生体兵器モンスターは気にしなくて良いし、舞踏号は砲台代わりの3番機何て比べ物にならないね!』

『ありがとうございます!』


 (舞踏号)も手を止めず、逃げ散っていくゴブリン達をまさしく掃射しながら返した。



 粗方ゴブリン達を蹴散らし終わると、また移動して群れを見つけ、同じ様に蹴散らしていく。3人の巨人にとって、小人を殺す事など造作も無かった。


 その後。ラミータ隊長の先導の下、俺達は半ば朽ちている村落に入る。

 切り立った崖を背にした小さな村だ。古いコンクリートの頑丈な建物が1つあり、その周りに荒廃した木造家屋がいくらかあるだけ。どこか物悲しい雰囲気があり、地面だって舗装されておらず、土が剥き出しになっている。

 盾になる建物があるので、コクピットから降りる事は無いが小休止だ。


 俺は肩にミルファを乗せたまま、荒れ果てて屋根すら腐り落ちた家を眺めた。倒れた食卓に、4つの椅子が寄り添うように倒れている。うち2つは小さな子供用の椅子だ。


『30年前の戦争の時。都市から疎開した人々の一時的な居住地だったのだろう。珍しい物じゃない』


 ベイク少尉(パラディン)(舞踏号)の隣に歩み寄り、同じく足元の家を眺めて言った。

 俺はふと気になって聞き返す。


『ベイク少尉は、何かその戦争と関係が?』

『俺は戦後の生まれだ。盗賊などとは何度も戦った事はあるが、戦争は経験した事がない。したいとも思わん』

『そうですか……』

『40才以上の人間なら、当時の事を覚えている人間も多いはずだ。興味があるなら聞いてみろ。思い出したくも無い記憶かもしれないがな』


 そう言うとベイク少尉(パラディン)は足先で地面を擦った。僅かに土塊や砂利が飛んで家に土埃がかかると、ベイク少尉(パラディン)はハッとした。

 家の近くにしゃがみ込むと、そっと自分がかけてしまった土埃を払い、倒れていた机と椅子を引き起こして、丁寧に並べ直した。

 荒れ果てて死んだような家の中に、ほんの少しだけ生気が戻ったように見える。


『……あまり見るな。ただの気まぐれだ。それ以上の意味は無い』


 ベイク少尉(パラディン)がそう言い、足早に俺から離れて行った。

 角を曲がるその背を見送りつつ、ミルファが(舞踏号)の耳元で優し気に喋る。


「少尉はロマンチストなのかもしれませんね」

『ロマン?』

「はい。以前、私達を盗賊と断じたのも、自分が信じる何かがあったからこそです。それにさっきの行い。廃墟に哀愁のようなものを感じていたからこそでしょう」

『言われてみれば、そういう感じもする……かな?』

『……聞こえているぞ。無駄口を叩くな』

『あっ!』

「……失礼しました。ベイク少尉」


 しまった。無線が繋がっているのだった。

 ミルファと顔を見合わせると、彼女はばつを悪そうにしながらもくすくすと笑った。 


『そ、そういえば。30年前の戦争ってのは――』


 話題を変えようと俺が言いかけた瞬間。ビリっとした感覚と共にセンサが一瞬唸った。思わず機関砲を構え、舞踏号の爛々と光る左目と、暗い眼窩に潜む右目をギョロギョロと動く。


『今のは?』

『分かるように言え。曖昧な言葉はいらない』

『ちょっとぼやけ過ぎだね』


 俺の言葉に、ベイクとラミータ隊長の声が怪訝な反応をした。


『いや。変な感じが……』

「ブラン。続けてください」

『足の裏に振動があって、どこかで動いてる感覚が……見てる? 見られている――? 崖だミルファ!!』


 大気が痺れるような咆哮が響く。同時に、崖上から1体の影が飛び出して、(舞踏号)から遠い位置に着地した。

 丸太のように逞しい手足。筋肉の詰まった胴と太い首。そして頭には荒々しく大きな二本角。顔は猛る獣そのものの生体兵器モンスター


『ミノタウロスか!』

「オオオオオオオオオッ!!」


 牛頭の魔物が叫び、素手のまま俺の方へと走り出す。一歩毎にぐんぐん加速し、歩幅が広がって速度が乗っていく。自身の身体全てを鈍器と化した突進が始まった。


「ブラン! 3カウント!」

『……おう!!』


 肩に乗ったミルファの叫びに呼応し、彼女が機関銃を構えるのと同時に、(舞踏号)は機関砲を腰だめに構える。


「3」


 全身の動作不良は無い。しっかりした感覚が指先まで巡っている。


「2」


 ミノタウロスが凄まじい勢いで迫って来ていた。あの地下と違って開けた場所だからだろう。

 そう。前回とは状況も装備も。ミルファも俺も、舞踏号も違う!


『「1!」』


 砲と銃が同時に火を噴いた。

 高速で射出される弾丸が、俺とミルファの意思そのものとなってミノタウロスを穿ち、ライフルとは訳が違う威力にミノタウロスの巨体が怯む。無数の弾丸が叩き付けられる毎に減速し、歩幅が小さく短くなっていく。

 そして先ほどまでの加速と威圧感が嘘のように無くなり、頭から地面に倒れこんだ。立ち上がる様子は無い。呆気ない程だ。

 蜂の巣にされてなお死体が四散せずにいるのは、流石は生体兵器と言ったところだろう。


 もう起き上がる様子が無いのを確信すると、(舞踏号)は深呼吸をする。全身のダクトから暖かい空気が漏れ、白煙を上げるミルファの機関銃の銃身を少しだけ冷ました。


『……火力は正義だなぁ』

「はい。単純な力はやはり、単純に強いのです」


 俺の呟きにミルファは答え、冷静に弾倉を交換し始めた。(舞踏号)の襟元に弾薬を乗せているので、まず弾切れの心配はない。

 俺も機関砲の弾倉を交換する。新しく装填した物を含めればあと2つだ。

 そして再び足音が響いて俺に近寄って来る。が、この感覚は敵意のある物では無い。すぐに青と白の装甲の巨人が現れて叫ぶ。


『ブラン! 大丈夫か!』

『ベイク少尉! 大丈夫ですよ。ミルファも居ますしね』

『ならいい』


 ベイク少尉(パラディン)の肩から力が抜け、いささか緊張した雰囲気が解除された。よく見れば、ベイクの握った機関砲からは、未だ白煙が上がっていた。


『俺の方にもミノタウロスが来た。苦戦はしなかったが、お前はどうかと思ってな』

『1回見た事ありましたし、平気です! ご心配ありがとうざいます』

『礼は良い。保護も任務だ』

『ははは! 素直じゃないね! ベイクは!』


 ノイズ混じりのラミータ隊長の声が、ベイクの言葉に続いた。

 ふと遠くを見れば、ラミータ隊長(パラディン)が村落から離れた場所で、こちらに大きく手を振っている。開けた場所だが僅かに窪んでいるようだ。

 その足元にはミノタウロスの死体が3つある。隊長は俺やベイクが1体倒す間に、3体を倒していたのだ。


『今、指揮車が周りに残った生体兵器モンスターが居ないか確認中だよ! まあ大丈夫だろうけどね!』

『って事は、任務はここまでですか?』

『ああ! そうなるね! 戦果は十分だよ。お疲れ様!』


 肩に乗ったミルファが微笑み、正面に立つベイク(パラディン)も、どこかリラックスした様子になった――瞬間だった。


 ラミータ隊長(パラディン)の片足が千切れ飛んだ。僅かに遅れて轟くような砲声が響き、耳元にラミータ隊長のノイズ混じりのうめきが聞こえた。

 ベイクが叫ぶ。


『隊長!!』

『……ッ! 動くな! 伏せろ!』


 ラミータ隊長の怒声が飛び、(舞踏号)ベイク(パラディン)は地面に腹ばいになった。肩からミルファも飛び、俺の近くに身を隠す。

 ラミータ隊長(パラディン)が不格好に仰向けに倒れ込む。


『中尉!! お怪我は!?』

『叫ばなくていいよベイク。左足がもげただけさ。油断してた』

『一体何が……』


 俺が不安げに言うと、ラミータ隊長の苦々し気な声が返ってくる。


『撃って来たのは戦車さ。間違いなく。盗賊のね』

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