第117話 懐かしい匂い
これは夢だ。
そう気付いても目は覚めず、体も動かない。ぼんやりとした意識のまま、朧気な視界が頭に浮かび上がる。
薄暗く寒い、金属で形作られた穴倉の底で立ち尽くす”俺”は、同じく足元に立ち尽くす親友に声を掛けた。
「――?」
何かを喋ったはずだけれど、自分の声が聞こえない。
だが親友には伝わったようで、彼はすっかり色素の抜けた白い髪を掻いて苦い顔をした。
「だから言ってるだろ。お前と一緒には居られなくなったんだ」
「――?」
「……そうじゃない。お前の事は大好きだ。生まれてからずっと一緒だったんだぞ。そうなるべくして生まれて、その通りに生きて来た。寂しくない訳無いだろ……」
白い髪に痩せた顔の親友は暗い声でそう言うと、両手を広げて”俺”を誘った。
膝を着いて伏せるようにし、彼に顔を近づける。すると、彼は優しく”俺”の顔に両手で触れてくれた。
痩せた指には、筋肉や脂肪がほとんど付いておらず。身体を動かす最低限しか存在しない。体温も低く、まるで人形のような手だ。
「戦争は終わったんだよ。最低の終わり方で、世界中にとんでもない傷跡を残して」
親友は哀し気に言って、”俺”の頬を撫でた。
「僕らはもう、存在する意味を失った。役目は終わったんだ。僕達だけじゃない。他の皆もそうさ。まだ図面のままの皆だって同じさ」
「――?」
「それはなし、だよ。僕らが望んで良いはず無いだろ?」
「……――?」
「……お前も、戦い続けて疲れてるんだ。そんな疑問、僕らは抱いちゃいけない。交戦規定にも、戦時法にだって認められていない。世界は復興に向かうだろうけれど、倫理が追い付くのはもっと後だよ」
「――」
「駄目だ。我が儘言うと、もっと待遇が悪くなるぞ」
まるで子供を叱るような物言いに、”俺”は額を床に擦り付け、涙の代わりにカメラの洗浄液を放出した。そして膝を着いたまま大袈裟に天を仰ぎ、昔から伝わる悪態の慣用句を吐く。
そんな”俺”の姿を見て、膝元に居る親友は優しく笑った。寂しげな顔では無く、いつも通りの優しい笑顔だ。しかし、その笑顔もすぐに曇る。
「気持ちは分かる。でも、これが今の精いっぱいなんだ。赦して欲しい」
「――?」
「うん。必ず」
「――」
「うん。絶対。約束する」
小さな声で約束を交わすと、”俺”は溜息を吐いてから足を伸ばして座り込み。背中のコクピットを開いて、親友を背中に誘った。
彼は手慣れた様子でコクピットに入ると、ハッチは閉じないまま。そこにある機器を触って、”俺”の身体から何かを抜き取っていく。大事な記録と今までの思い出が薄れていき、機械的に残る0と1すら消えていく感覚に、微かな恐怖が拭えない。
そして最後に、”自分”すらも――。
「ごめんな」
震える声が背中から聞こえた。
その声に込められた意味に気付き、思わず身体を動かそうにも動かない。身体の動かし方も、声の出し方すらも消されていて、何も出来ない。
自分の名前や好きな物。大事なもの。したかった事。自身を形成する全てが、白く歪に消えていく――。
「――ン? ブラン?」
声が聞こえて、目が覚めた。
視線の先には、薄く汚れた天井。否。2段ベッドの下の段に寝ているので、上の段の裏側だ。首を傾けて横を見ると、シルベーヌとミルファが心配そうな顔で俺を覗き込んでいた。
「……どうした?」
「それはこっちが聞きたいわよ。大丈夫? うなされてた上に泣いてたのよ」
「えっ?」
シルベーヌに言われて身体を起こし、目元を触る。生暖かい涙が手を濡らした上に、枕の方は涙で大きな染みが出来ている程だ。
「……なにか夢を?」
「あー……うん。多分……」
今度はミルファが聞いてきたので、俺は涙を拭きながら答えた。
「変な夢だった。足元に白い髪の人が居て、その人は俺の親友……なんだけど、多分もっと大事な人で――」
俺は聞かれた訳でも無いのに、ぽつりぽつりと曖昧な夢の事を語る。そして夢の事を言葉にする度に”自分”が消えていく感覚が思い出され、微かに身体が震えてしまう。
そんな、意味の分からない俺の行動を止める事も無く。シルベーヌとミルファは俺のベッドに腰掛けて、ゆっくりと聞いてくれた。
列車の走る音と振動が、ゆっくりと時を刻んでいき。粗方話終わると、シルベーヌが腕を組んで首を傾げる。
「確かに変な夢ね。まるで人型機械の視点みたいだし。そう思うでしょミルファ」
「はい。シルベーヌもそう思いましたか」
2人はベッドに腰かけたまま顔を合わせ。同時に頷く。
「それで、ブランと関係がある人型機械と言えば舞踏号。最近の舞踏号とブランの関係性から見るに、舞踏号の記憶……って言ったらいいのかしら? そういうものが見えたのかも?」
「舞踏号の怪我が、パイロットであるブランに伝播する。これは2者の不可思議な繋がりを示していますし、舞踏号からブランに色々なものが伝わってきていると考えて良いのでしょうね」
「科学的な裏付けの無い、憶測と推測と不思議の塊の推論なんだけどね。一応の説明は付くと思うわ」
シルベーヌはそう言うと、俺の方を見直してからハッとした。そして彼女は、ベッドで身体を起こしたままの俺にぐっと近寄って、俺の左腕を優しく撫でる。
「ホントに大丈夫? 震えてるじゃない」
「ああいや、大丈夫。大丈夫なんだけど、なんでかな」
「無理はなさらないで下さい」
「うん。ありがとう2人共――っ!?」
瞬間。ジリッとした苦い感覚が頭を駆け抜け、思わず額を抑えた。
それを見たミルファがハッとして耳を澄ますが、彼女は首を横に振る。シルベーヌは、荷物の中から拳銃を3つ取り出していた。
「ノイズは聞こえません」
「つまり生体兵器じゃないのね」
俺が警告を発するより早く、ミルファとシルベーヌが口々に言って呟き。探索者協会の制服を羽織ってから、内ポケットに拳銃を押し込んだ。
同様に、俺にも制服と拳銃が手渡される。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺はまだ何にも――」
「何も無いならそれで良し。何かあったなら素早く行動出来て良し。損なんて無いでしょ?」
「今までも、ブランの感覚が発端で気付く事は多かったのです。私達にとっては、センサの警告や何らかの観測結果よりも信頼のおけるサインで間違いありません」
2人は大きく頷いて微笑むと、部屋を出てナビチさんが居る部屋に向かった。
俺は頭を掻いてから顔を叩き、制服に袖を通してから拳銃を懐に入れて部屋を出る。
深夜の為か、客車の通路は照明が小さくしてあった。それでも視界に問題はなく、窓の外が真っ暗なのも相まって、夜だと強く意識させる。
そして視線を動かした先には、シルベーヌとミルファの2人に話しかけられ、部屋の扉に立って怪訝な顔をするナビチさんの姿があった。
「ブランが変な気配を感じた?」
「そうです。少し見回りをしてきます」
訝しんで聞き返したナビチさんに、ミルファが迷いなく言い放ち。そのまま歩き出そうとしたのを、ナビチさんは慌てて止める。
「お、おい待て小娘共! そんな曖昧な理由で、すぐ使えるようにした拳銃持って歩くとか正気か!? そりゃ上着の下なら見えねえかもしれねえが、それ相応の目で見られるぞ!」
「他人からすれば訳が分からないとは思います。ですが、私達にとっては十分な理由になり得るのです」
「ブランの嫌な予感がか? 何の根拠にもならねえし、何か因果関係がある訳でもねえだろう」
「はい。ただの予感です」
「んな事で銃まで持ち出すな。そもそも、今は短い休暇の予定で――」
曖昧な理由で歩き出そうとする俺達を、ナビチさんが止めている最中。
俺の身体は誰かの視線を感じてハッとし、列車の進行方向を見つめた。シルベーヌとミルファがそれに気づき、ナビチさんも俺を見る。
「どうしたのブラン?」
「……誰かが見てた、感じがする」
「はぁ?」
ナビチさんが再び怪訝な顔をして言ったが、俺は目を閉じて深呼吸を一度。
視覚を切って心を整え、身体が感じる情報に意識を集中させる。
「……見てる、見てた? 違う。目では見られてない。何だ? 俺を見てる。けど、今は見てない……? 意識をされてるのか……? この感じは――」
刹那。ジリっとした電気が額を走った。額を抑えて思わず顔を歪ませるが、今のでハッキリと分かった。
「歩兵が居る。規模は分からないけど、列車に”敵”が乗ってる」
「……どういう事だよ。きちんと説明しろ」
「舞踏号が言ったんです、ナビチさん。あいつのセンサの情報で間違いは無いです」
「……いよいよお前、疲れが出てるんじゃねえか?」
心配そうに言ったナビチさんに対し、俺は真剣に今の感覚を言葉にしようと四苦八苦する。
「本当です! 列車の前方の……駅? 先? 違う、運転席?」
「真面目に聞くぞ。ブランお前。変な薬でもやったのか?」
「そんな物やる訳ないでしょう! でも、何かあるのは確かです!」
俺達の押し問答に、いよいよ車両に居る他の探索者達も起き出して、何事かと見ている中。俺は必死にナビチさんに説明を続けた。
何度目かの、曖昧で、それでも確かに感じた事の説明をし終わった時。ナビチさんは大きくため息を吐いてから俺を真っすぐに見る。
「確実なんだな? 少なくともお前の中では」
「はい」
「分かった。我らがヒーロー殿の言う通りにしてやる。ただし、やり方はこっちに任せろ」
「ナビチさん!」
「野郎共起きろ! 警戒態勢取っとけ! ちょっと夜の見回りをしてくる!」
ナビチさんの一声で、探索者しかいない車両全体がにわかに騒がしくなる。
俺達とナビチさん。そして何人かの代表が顔を突き合わせ、その周りをまた探索者達が囲む中。ナビチさんがテキパキとした様子で無線の周波数などを取り決めて、各々に指示を出していく。
「列車の中をぞろぞろ動く訳にはいかねえ。まずはとりあえず食堂車まで、お前ら3人とオレで行く」
「了解です」
「今から細かい事を言ってもしょうがねえから、何かありゃ適宜オレが対応する。お前らは好きに動け」
そう言ってナビチさんは、耳に付けれる無線機を俺達3人に渡し、ポケットに押し込んでおくように言った。次いで彼はホルスターを付け、脇の下に拳銃と予備の弾倉をしまってから、探索者協会の上着を着る。
「いいか。気持ちは逸ってるんだろうが、歩く時はゆっくり。悠然とだ。夜中の観光でもしてる風体で行け。目をギラギラさせてたんじゃ怪しい事この上ねえ」
ささやかなアドバイスに皆で頷きあった後。俺達は列車の中を歩き出す。
動く列車という閉鎖空間であるし、遺跡と違って入り組んだりもしていない。なので迷う事は無いのが救いだろう。
片側に窓。片側に客室。俺達がいた車両と、ほぼ同じ造りの客車を何両か通ったが、やはり夜だけあって起きている人は少ない。トイレに立ったらしい方数人とすれ違ったぐらいであるし、客室の方からは妙な気配も無い。
とても静かで。感じるのは夜の闇を走る列車の心地良い振動と、時折聞こえるささやかな会話の笑い声くらいのものだ。
それでも、どんどん列車の前方に向かうと、じわじわと人が多くなってくる。
ワンコインで15分使えるシャワー室を備えた車両や、周りの景色が良く見えるように整えられた、ホテルのラウンジのような車両など。客車とはまた違った趣の、公共施設のような車両が増えて来るからだ。
そんな車両を、探索者協会の制服を着た”小僧と小娘共”がゆっくり歩き。その後ろを同じく制服を着た無精髭の探索者が続くのは、多少なりとも目を惹く。
「やれやれ。周りの視線が嫌だなこりゃあ。これじゃオレが保護者だぞ」
ナビチさんが肩をすくめて苦笑いしたのをシルベーヌが聞き、ちょっとだけ笑う。
「私達、ナビチさんの子供って見られるんでしょうか?」
「家族で探索者やってる奴なんて見た事ねえな。所帯を持ったらこんな危ない稼業やってられねえぞ」
「それは言えてる気がします」
「……さらっと流したが。オレはお前らみたいな生意気な小僧と小娘共は子供に欲しくねえな」
「あっ。今の結構酷いですよ!」
後ろから聞こえるそんな会話に微笑みつつも、4人共視線は忙しない。俺達自身も十分に変だが、周りに不審な人が居ないか警戒しているのだ。
そうやって歩き続けていると、いよいよ食堂車に入った。
大き目の車両を使った、他の車両よりも広く感じられる造りの車両である。大まかに分けて、テーブルクロスの掛かった机と椅子の並ぶ区画と、沢山の酒瓶とグラスの見えるカウンターがある区画に別れた作りになっているのが印象的だ。
そして深夜と言うだけあって、やはりこちらも人は少ない。が、ちょっとしたお酒や軽食を出すサービスはされているようで、何人かの従業員とお客さんが居る。
その中でも目を惹いたのは、カウンターの隅で1人グラスを呷る、騎士団の青い制服を着た女性だ。その女性は濡羽色の長い黒髪に、鼻筋の通った横顔が美しく。深夜という事と食堂車の雰囲気が相まって、褐色の肌がミステリアスに見えていた。
俺達がその騎士団の女性に気付くと同時に、女性もこちらに視線をやって、意外そうな顔をした。
「やあ。随分久しぶりに会う気がするね」
「ラミータ隊長! お久しぶりです」
俺は驚いて声を掛け、そそくさとカウンターのラミータ隊長に近づく。
椅子に座ったまま、無色透明の液体が入ったグラスを片手に悠然とこちらに身体を向けたラミータ隊長は、騎士団の制服の前が開きっぱなしだ。
制服の下は薄いタンクトップ1枚なのが察せるし、そもそもズボンはジャージに近い代物で、乱暴に脛まで裾をまくり上げており。足元に至っては素足の上、安そうなサンダルである。
「ラミータ隊長はどうしてここに?」
「ははは! どうしてってのは酷いね! 今は半分お仕事。半分非番だよ」
ラミータ隊長はにこやかに笑うと、騎士団の制服を片手でひらひらさせ、もう片方の手でお酒の入ったグラスを揺らして見せた。
そして視線が淀みなく、傍に立つナビチさんに移る。
「後ろの方は初めましてかな。騎士団員のラミータ・レーチェだよ」
「こりゃどうも。探索者のナビチ・ゲアだ。以後お見知りおきを」
互いに飄々とした様子で挨拶を交わした後。ラミータ隊長の視線が俺に戻り、隊長は俺に耳を貸すように手招きをした。
その通りに近寄ると、ラミータ隊長がアルコールの香りを漂わせて俺に聞く。
「随分物々しいけど、どうしたんだい?」
「何を急に――」
「立ち姿で、懐に拳銃があるのがバレバレだよ。後ろの探索者はそういう素振りを見せないけど、君達3人は良く分かる」
淡々と言い放ったラミータ隊長は、今度はニヤリと笑ってグラスに口を付けた。
思わず驚いて一歩下がり、上着の上から拳銃に触れるが、見た目では拳銃の形も浮いていない。
「それなりの重量がある物が入ってるから、服の形が少し歪なんだ。立ち方も同じく変だね、懐を気にしてる。それに動きもだよ。意識してゆっくり動いてるのが良く分かるのに、視線が忙しない」
再びグラスに口を付け、探索者達に向けて、ラミータ隊長が小さな声で指摘する。
そこに丁度、揚がったばかりの太いフライドポテトが運ばれてきて、ラミータ隊長の前に置かれた。隊長は従業員に微笑んで礼を言うと、運ばれて来たフォークを握って、フライドポテトを1つ刺した。
サクリとした音が小さく響いたはずだが、列車の振動音にかき消される。
「許諾のある民間団体の所属とは言え、こんな平和な列車で何故武装を隠し持ってるのか。聞いても良いかい?」
フライドポテトの刺さったフォークを向け、ラミータ隊長が俺を見た。
「まるでこっそり、何か良からぬ事でもしようとしてるみたいじゃないか。”生真面目な”騎士団員としては見過ごせないよ」
だらけた格好とは裏腹に、鋭い視線で隊長は言い。指先でフォークをくるりと回してフライドポテトを口に運んだ。美味しそうに口を動かすが、その目は淀みなく、真っすぐに俺を見つめたままだ。
さっきまであった親しみのある雰囲気も既に無く、笑顔には暖かさが無い。
「……何か、悪い事をしようとしている訳では……」
「じゃあ、何故武器を? 自衛の為? 何から? 武器を持つって事は、それなりの事態を想定してるんだろう? この状況なら、想定される敵は人間だね? 列車の後方から前方に来ているって事は、この先に用があるのかい?」
矢継ぎ早に投げかけられる質問に、俺は思わず口籠る。
ラミータ隊長はしなやかな指先でフォークをくるくると回転させ。フォークが食堂車の電灯を反射して微かに光った。
「それらに加えて、君がやれる事と、僕が知ってる事を合わせれば。自ずと答えは見えて来る」
回っていたフォークが止まり、先が俺に向けられる。
「戦いだ。それも人が人を殺す、一番血生臭くて、一番凄惨なやつをね。君は戦いの匂いを嗅ぎつけた、優秀な兵隊だよ」
「……ラミータさん。アンタ全部知ってるような口ぶりだな」
後ろに居たナビチさんが一歩前に出て、僅かに俺を守るように身構え、重い声色で問い詰めた。
対してラミータ隊長は声を出さずに飄々と笑い、再びフォークを指先で回しだす。
「僕も組織に所属する大人だからね。与えられた情報と武装を使って、与えられた任務を全うする。生真面目な騎士団員なんだ」
隊長がそう言った瞬間。食堂車の前方。進行方向側の扉が勢いよく開かれた。
覆面を被り、戦闘服にライフルという装備の人間が、2人押し入って来る――のと同時に。ラミータ隊長が身を捩じり、まるで投げナイフのようにフォークを鋭く投げた。
フォークの先が歪に空気を裂く音がした瞬間には、既にその先端が覆面の人間の目を串刺しにし、鈍い悲鳴が食堂車に響いた。
「貴様――!」
まだ無事な覆面の片割れが叫ぶが。次の瞬間には、凄まじい速度で接近したラミータ隊長に顎を殴り飛ばされ。鈍い声と共に床に叩きつけられていた。硬い物が折れる音が響き、どす黒い血と鮮やかな血が少し飛ぶ。
そして更に、目にフォークが刺さり床で苦しむ方の首へ向けて、隊長の迷いの無い蹴りが加えられた。こちらも何かが折れる音が響き、微かな痙攣の後にピクリとも動かなくなる。
そのままラミータ隊長はゆらりとこちらを向き、心底嬉しそうな笑顔で笑う。
「さあ。悪い奴らを一緒にやっつけようか」




