第115話 不安な時こそ
「左腕の事前チェックは良し。後は胴側との接続ね。仮接続してから一旦動作チェック。問題なかったらそのままきっちり固定まで行くわよ。全部終わるまで、ブランは舞踏号に乗ってて頂戴」
太陽が真上に至る頃の昼。
機械油と鉄粉の香りがする工場の中で、俺は作業着のシルベーヌから手順の説明を受けていた。
周りでは工場員の手によって、床に置かれた舞踏号の左腕をクレーンで吊り下げる準備がなされている。
そのすぐ隣には、殆どの装甲が外されて黒い皮膚だけになった姿の舞踏号が、両膝を付いて座っていた。
舞踏号に付けられている装甲は、額の1本角を含む頭部装甲の類と、手足に設けられている爪を固定する部分。そして膝の所だけである。
口元のスリットが開閉する機構は、一足先に完成したので既に組み込み済みだ。
「シルベーヌが外部から神経系の調整もやるけど、俺のやる事はいつも通りだな。エラーの報告と、違和感の報告。実際の稼働のチェック」
「ええ。いつも通りで大丈夫だから。リラックスしてね!」
そう言って俺に笑いかけるシルベーヌだが、一瞬だけ俺の左腕に注がれた視線に気付かない訳も無い。それに、彼女の目元には薄っすらとクマがある。金色のぼさぼさ髪も、いつも以上にぼさぼさになっていた。
単純な疲れもあるだろうが、それ以上に俺の腕の事を気にして、心身共にかなり疲れているのだろう。
「シルベーヌこそリラックスしてくれよ?」
「ふふん。私はいつも通りよ? それに。今回はこの工場の人とか、民間の色んな人のお陰で舞踏号が修理できてるんだもの。皆さん流石の腕前だし、バッチリに決まってるわ!」
彼女は明るく大きな声でそう言うと、にっこり笑って周りにいる人を見た。
シルベーヌの屈託の無い賞賛と信頼の声が聞こえた人々は、各々ガッツポーズをしたり頷いたり、ちょっと声を上げて返事をしてくれる。
彼女は天性の気質と明るさで、すっかり工場全体の人々の心を掴んだのだろう。
雑談の時に工場の方達から聞いたが。やはり機械と油と汗に塗れるこういった職場には、女性が少ないらしい。必然的に色々な年代の男だらけの環境になり、汗臭くて男臭い。
これはこれで楽しいけれど、時折潤いが欲しくなるのも性なのだと言う。
そこにシルベーヌという珍しい存在がやって来た。しかも知識はあるし仕事は出来る。更に、明るく人当たりが良くて、こと機械系の事に関しては熱心に話も聞いてくれるという女の子だ。そして見た目は可愛らしく、割と低い背に割とある胸も相まって、つい視線を集めて目が合ったりもする。
その時に明るく笑って、積極的にちょっと下らない話もしてくれるのが、機械周りの人々の心を掴んでいると聞いた。なんでも若い工員の中には、出会って数日でメロメロな方も居るらしい。
シルベーヌが人気で嬉しい。嬉しいのだけれど、同時に何だか胸の奥にある吹き溜まりに、ドロッとしたものが立ち込める。
いや。そんな事を考えてる余裕は無いはずなのに、俺は馬鹿か。
「クレーンの準備よーし! 嬢ちゃん指示頼むぞ!」
「はーい! それじゃあブラン! 仮接続終わったらすぐ乗ってね! きっと大丈夫だから!」
威勢の良い声が響き、それに明るく返したシルベーヌが左腕の傍に駆け寄った。
彼女は工員から安全メットを受け取ると、微笑んで礼を言ってからメットを被って顎紐を留め。この工場で定められている手順通りの安全確認をし、ゆっくりとクレーンで腕を吊り下げるように指示を出した。
機械の駆動音が響き、装甲の付けられていない巨人の左腕が、ゆっくりと宙吊りになっていく。
(大丈夫。か。シルベーヌは心配してるし、かなり不安そうだな)
それなりに長い時間一緒に居るのだ。明るい声と笑顔から垣間見える部分に、気付けない訳がない。
そうして心なしか気を引き締めて作業を眺める俺の傍に、しとやかな足音が近づいた。
「流石。シルベーヌはすっかりこちらの方々に慣れていますね」
「ミルファ。装甲の方はもう良いのか?」
「はい。皆さんが後はやるからと、私はこちらを手伝うように言って頂けました。というより、私がこちらを気にしすぎて、皆さんに気を遣わせてしまいましたね」
少しだけ恥ずかしそうにミルファが微笑み。シルベーヌの方に視線を戻す。そしてそのまま、俺の方を向かずに聞いて来る。
「ブラン。舞踏号の腕の修理に連動して、自分の腕が治ると思った根拠は何でしょう?」
「何か、論理的なものがある訳じゃないよ。ホントに感覚的で、ひょっとしたらっていう思い付きさ。正直、頼りにならないって思う」
「なるほど。ですが、そう言った思い付きや勘というものは、決して根拠が無いわけではありません」
俺はミルファの方をちらりと見たが、彼女はずっとシルベーヌの方を見たままだ。
「いわゆる勘や先読みと呼ばれるものは、脳が今までの経験に基づいて生み出した、可能性と論理思考の集積結果であるという説があります。その過程が不明瞭なだけで、勘自体はしっかりとした演算結果なのだそうですよ。勘だけに頼るのが問題であって、勘自体は解答の一つとして、十分あり得るものなのです」
「……そんなもんなのかな。もっと論理的な物が頼りになるとは思うけど」
「確かに、科学的な解明による因果関係の理解は、非常に頼りになります。未知の事象を理知的な観測でもって紐解き、大多数の人間が理解できる科学という言葉で翻訳する行為は、人間が他の動物より優れた部分の1つと言えますしね」
一度言葉を切ったミルファがこちらを向き、たおやかに微笑む。
「ですが。人間は理知的な思考を獲得した存在であると同時に、生の感情や衝動を持った動物でもあります。動物的な、身体での理解も非常に重要ですよ?」
ミルファにそう言われ、俺は作業員に囲まれて膝を着く舞踏号を見て、次に自分の動かない左腕を見た。
自分と舞踏号が、ただのパイロットと機械の関係では無く。もっと別の、非常に近しい関係なのは感じている。それを魂と肉体と言うべきか、心身の同調と言うべきかは分からないけれど。舞踏号から聞こえる幻聴は、確実に自我と意識を持っている。
その論拠の全てが、第三者から観測された事象では無い。俺の主観によるものだ。科学的には胡散臭い事この上ない。
(頭は冷静に考えればあり得ないって言ってる。でも、身体は確かに存在すると感じている)
曖昧な何か。自分と舞踏号の繋がりを。
「よし! 仮接続おしまい! ブラン、チェックお願いね!」
ふと気付けば。もうシルベーヌが舞踏号の左腕を接続しなおしていた。腕の周りに置かれていた脚立などが回収され、作業員が安全のために一旦離れる中。シルベーヌが舞踏号の膝元に留まって俺を見た。
彼女の目には、不安と期待が半分ずつ。すこし不安が大きいくらいだろう。
そして機械の巨人である舞踏号はいつも通りむっつり押し黙ったままだ。でも、どこか澄ましているような、何かを待っているような雰囲気を感じられた。
そんな2人にミルファと歩み寄ると、シルベーヌはニッと笑って舞踏号の襟元に登り、俺に向かって右手を差し出す。
「大丈夫よ。ブラン。きっと大丈夫」
俺よりも自分に念じるようにシルベーヌは言い、再び笑顔を見せた。その右手を取ろうと舞踏号の身体を少し登る俺を、ミルファが後ろから、何も言わずにそっと支えてくれる。
本当に俺は、色んな人に世話になりっぱなしだ。ありがたいのと同時に、申し訳なくもなる位に。
開けたコクピットに滑り込んだ後は、動かない左腕を右手でいつもの定位置に押し込み。舞踏号の襟元に座ってこちらを見るシルベーヌに言う。
「ちょっと今日は、起動に時間が掛かるかもしれない」
「何か不調がありそう?」
若干不安げになったシルベーヌに、俺は優しく微笑んだ。
「いや。万全だよ。バッチリだからこそ、ちょっと舞踏号と話をするんだ」
「……うん。分かったわ」
正直、全く意味が分からない言葉であろう。
それでもシルベーヌは微笑み返してくれ、彼女がひらりと舞踏号の襟元から飛び降りたのを感じた後。コクピットを閉じる。
真っ暗になって身じろぎ一つ出来なくなったか――と言うところで、俺の意識はぶっつりと途絶えた。
やあ。
おう。
話って、何を話すんだい?
話したい事はいっぱいあるな。けど、まずは言いたい事がある。
何をだい。
いつもありがとうな。一番辛い目に合ってるのは、お前で間違いないんだ。あんまり感謝とかを出来て無くて悪かった。
変な事を言うね。
そうでもないさ。お前はただの機械じゃない。最近は特にそう感じるし、お前の想いも良く伝わる。
勝手にそう感じているだけだよ。
かもしれない。それでも俺は、お前に感謝してるんだ。ありがとう舞踏号。
感謝をする事と、腕が治るのに関係は無いよ。
だろうな。そっちについても色々聞きた――。
問いかけようとしたところで、俺は意識を取り戻した。
舞踏号そのものとなった視界が戻る。装甲の付いた自分の膝と、その前に立つシルベーヌとミルファの姿がよく見える。
「あっ、目が覚めたわね! 大体10分よブラン! 調子はどう? どこか変だったりしない?」
『えっ? ああ? うん。大丈夫だ』
15分という時間の経過に対して、話せた時間が短い気がする。まるで無理矢理シャッターでも降ろされたかのような唐突さに、少し戸惑ってしまう。
けれどともかく。両膝を着いて座ったままの状態で深呼吸。
全身のダクトから温い空気が吹き出し、新しく設けられた『口』が開いて息を吐き、閉じた。
次いで、全身各所のエラー報告が頭に一斉に流れ込んで来る。元々割り切ってある部分のエラーは除け、必要箇所のシステムログを辿る。
『……特別異常は無し! 左腕の接続も十分!』
「了解! じゃあ次動作チェック! はい、座ったまま! 両腕を肩の高さまで上げてー!」
正面に立ったシルベーヌが、そう言いながら自分も腕を上げる。
その通りにゆっくり腕を動かすと、両腕は特に異常も無く滑らかに動作した。
周りから安堵の声と拍手が上がるが、シルベーヌは油断せずに続ける。
「捩じる運動と、肘を肩よりも上にする動作もね! 特に肘の曲げ伸ばしはゆっくり、ゆっくりで良いわ!」
『了解っ』
言われた通り、目の前でシルベーヌがやる通りに上半身を動かし続け。エラーが流れてこないかに意識を集中する。
そして特に問題は無く。諸々のチェックは終わった。
その後はもう一度シルベーヌが舞踏号の襟元に上がってきて、諸々の機材を少しだけ繋ぎ。小さな音でキーを叩く音が響く。
「……うん。数値的なものも問題なし。それじゃあこのまま左腕をきっちり固定するわよ! ブランはそのまま動かないでね」
『おう!』
返事をするや否や。周りに居た作業員達がわらわらと近寄ってきて、クレーンが再び左腕を支え。あっという間に左腕を脚立などで囲まれて、本作業に入った。
くすぐったいような感覚が腕の付け根をピリピリさせる時間が続き。程なくして、左腕はいつも通りの状態へと戻る。
四肢がキチンとくっ付いている――なんて感覚も変だが。やはり五体満足なのは素晴らしい。
再び周りから人が離れたのを確認してから、両腕をグルグル回してみた。
『うん! 問題なし! 絶好調だ!』
「皆さんのお陰ね! 後は装甲が仕上がり次第順次固定していくだけだから、とりあえず山場は超えた感じかしら」
「はい。その装甲の仕上げも、この工場の十八番ですから好調ですし、舞踏号はより強固な鎧を手に入れる事になるでしょう」
膝元に立ったシルベーヌとミルファが微笑んで返してくれ。俺はそのまま周りの人々に視線をやる。
皆作業着は機械油やタンパク燃料で汚れているし、多少なりとも疲れが見える顔をしているが。それでもどこか満足げだ。
『皆さん、本当にありがとうございます! まだやる事はありますけど、大変助かりました!』
舞踏号で正座をしたまま、ぐっと頭を下げる。
周りから「まだ礼を言うには早い」なんて笑われたりもしたが、皆さんとても良い人だ。
それでも一通り礼を述べた後。改めて俺は膝元のシルベーヌとミルファに向き直る。
『じゃあ、一旦コクピットから出るよ』
「うん」
にこやなお礼から一転。緊張で少しだけ声が固くなり。返事をしてくれたシルベーヌも同様だ。
コクピットを開く操作をすると、一瞬だけ意識が途切れる。
慌てちゃ駄目だよ
舞踏号の声が微かに聞こえたかどうか。そんな瞬間に、意識が再び戻って来た。
コクピットの中で強張っていた生身の肉体の感覚が、脳髄を一気に駆け巡る。
「ブラン。どう?」
ミルファと共に舞踏号の背中にあるコクピットの横まで登ってきたシルベーヌが、俺におずおずと聞いた。
少しだけ深呼吸をして、恐る恐る身体を動かす。
足良し。腰良し。胴も良し。右腕も首も動く。コクピットを覗き込む2人を見上げ、左腕が――動いた。
骨髄を駆けるピリッとした感覚。神経が滞りなく信号を伝えて、腕の筋肉が弛まずに連動した。左腕は俺の望むまま、コクピットを覗き込む2人に延ばされ、指を2本立ててピースサインを形作る。
「……よかったぁぁあぁぁ……!」
魂まで抜け出るんじゃないかと言う、ため息にも似た安堵の声をシルベーヌが漏らし。力なくその場にへたり込んだ。
「ブラン。腕に異常はありませんか?」
「うん。久しぶりに動かすからか、何かちょっと痒い? ピリピリする感じがある位だ。他に異常はない……の、かな?」
舞踏号と違って、自分の身体はエラーを明確な文字や情報として流し込んでは来ないから、なんだか戸惑ってしまう。
そんなギャップを感じつつ。コクピットの中で腕を動かしていると、くぐもった声を耳が拾った。
何事かかと顔を上げると、シルベーヌが目を赤くして泣いている。
「お、おい。大丈夫か?」
「う”ん。何か、安心しちゃって」
慌てて聞いたが。シルベーヌは涙声で答え、震える声で続ける。
「このままだったらどうしようって。ブランが、ずっとそのままだったら。私が、ちゃんと。してなかったせいなのかもって。舞踏号がいくら昔の、良く分かんない部分があっても。腕が、あんなになるなんて知らなかったなんて言い訳、出来ないし」
彼女は嗚咽を堪えつつ、小さな声で語った。
隣に居るミルファが、そっとシルベーヌの背を撫でる。
俺はシルベーヌも不安だと考えていた。けれど実際は、不安なんて言葉じゃ言い表せない程に重苦しい想いに苛まれていたのだろう。
色々な技術が失われたり後退した戦後の世界。歪な世界の科学では解明できない部分の多い、人型機械なんて代物と。それを整備して直す事が出来るシルベーヌ。
彼女には、俺よりも正確な機械知識がある分、不可解な現象への恐怖が大きかったのだ。俺は感覚的に舞踏号と繋がってもいたが、シルベーヌはそうでは無いのも、不安を助長したのだろう。
そしてパイロットの腕が動かなくなるという明確な弊害が出た以上。仮にも技術者として『知らなかった』『想定外だ』では済まされない。彼女はそう自分を戒め、この数日必死だったのだ。
「シルベーヌはずっと頑張ってくれてただろ。ありがとう」
コクピットから身を乗り出し。動くようになった左腕で、涙をぼろぼろ流すシルベーヌの頬に触れた。
未だピリッとした感覚の残る指先が、涙で濡れた頬の柔らかさと暖かさを、脳髄へと送って来る。
「そんなになるほど思ってくれてたのに、気付かずにごめん。でも、もう大丈夫」
「ううん……私こそごめん。ブランは平気だったのに、私が急に泣いて、変よね」
「いいや。変じゃない。そんな風に思うのが、多分普通だよ。俺が馬鹿過ぎて、事の重大さを正確に把握しきれてなかっただけなんだ。それに忙しくて、ちゃんと感覚の事とかを話すのも忘れてた。俺にも責任はある」
「そんな事――」
「ある。竜を追い返してから、俺達の周りがぐっと動いたせいで忙しくて。何か色々疎かになってたんじゃないかって思う。色々言われて、俺達は持ち上げられるみたいだけど。結局はさ――」
涙を目に溜めたままのシルベーヌの頬を微かに撫でて、俺は笑う。
「なんて言うか。これからもっと忙しくなるけど、だからこそ色々話さないとダメなんだって思った。修理が始まってからここ数日。2人とは真面目な話ばっかりで、下らない話とかしてなかった気がするしさ。不安な事とか、良く分かんない事とか。ちゃんと話すのが疎かだったんだよ」
「……そういう問題なのかな」
「おう! 根拠は無いけどそう思う!」
満面の笑みですっぱりシルベーヌに言い切ると、彼女はふと柔らかく微笑み返してくれた。
隣ではミルファも微笑み。シルベーヌの背をそっと支えてくれている。
そしてシルベーヌが、頬を触ったままの俺の手にそっと触れた。
「……ぽややんとした顔で笑われると、そうなのかもって思っちゃうな。笑顔に騙されてるのかもしれないけど」
「だとしても。騙されといてくれよ」
再び笑い合い。俺はミルファの方にも手を伸ばす。
「2人共、今日は一段落だろ。3人で何か飲みながら、眠気が来るまでゆっくりしよう。初めて煙草吸ってダメだった話とか、笑える話はいっぱいあるんだ」
「はい。私もここ数日の避難所生活で、ちょっとした小話はたくさんあります」
ミルファが微笑み返してくれて、俺の手を取った。そしてシルベーヌと目で合図をしあうと、2人は俺をグッとコクピットから引っ張り上げてくれて。俺は舞踏号の背中に立った。
周りでは、作業員の皆さんが何事かと見守っている様子で。俺はそんな皆さんに向けて、胸を張って言う。
「とりあえず、舞踏号の修理は一段落です! なので皆さん休みましょう! ここ数日、俺達の無理にお付き合い頂いてお疲れでしょうしね! 何より、俺が結構疲れてます!」
自信満々に疲れてると宣言すると、周りの人々が小さく笑う。
でも、そうだ。いつぞやも思ったが。忙しいからこそしっかり休まないとダメなのだ。
「また明日の朝から、作業の続きを! とりあえず今日はここまで! 缶コーヒーくらいは奢ります!」
そう言ってちらりとシルベーヌとミルファを見ると、2人はいじわるに笑う。
「私、コーラが良いな」
「では私は紅茶を」
「任せろ! 1リットルくらい買って来るぞ!」
冗談めかして言うと、俺は舞踏号の背中から飛び降りた。
そして今度は俺が2人に両手を伸ばし、降りて来るのを受け止めるようにする。
2人が俺を引っ張り上げてくれたのだ。今度は俺が、2人を受け止める番で間違いない。




