第103話 〃
テショーヤさんと武器の相談や、その後の話が終わった後。俺達は屋敷に帰るべく、車に乗り来んで街中を走っていた。
道路は積雪と路面の凍結もあったりして、否が応にも運転がゆっくりにならざるを得ないため、道路事情は非常にゆったりとしている。特に今走っている辺りは、除雪が完全ではない上に結構な量が積もっているので下手にスピードを出すと大変だ。
しかし同時に、タムとティムを交えて色々な話をするには丁度良い時間でもあった。
俺達と別れてから始まった大移動。他の余所者達との出会いや別れ。増える生体兵器との遭遇戦。皆が感じ始めた、大きな戦いが始まりそうだという予感。俺達の口笛。それからの合流。予感が確信に変わった、舞踏会での話。いずれ起きる生体兵器との戦争に、けし掛けられるであろう人と人との戦争。
余所者達が屋敷に到着してから、シェイプス先生を含めて何度か話していたけれど。改めて話すと、俺はなんとも言い難く感じてしまう。しかし。それは俺からの視点だ。
「生体兵器が何考えてんのか分かんねえけど。人と人で戦うのも分かんねえ。何がしてえんだ?」
タムが後部座席の背もたれに寄りかかり、単純な指摘をめんどくさそうに言った。
ハンドルを握るミルファがそれを聞き。ゆっくりと車を進めつつも小首を傾げる。
「確かに、エミージャの目的は不明ですね。彼……彼女でしょうか? どちらにせよ、エミージャが何かの利権であるとか、そういった人間の社会的な物を目的とはしていないようですが」
「兄ちゃん姉ちゃんの話を聞くに、そのエミーとかいうのは、この島全部が自分のものだって叫んだんだろ? 欲張りで頑張り過ぎだよなあ」
「そういう訳でもないと思うよタム」
ティムがくすくすと笑い、眉を傾けるタムを見た。
「エミージャって人は、自分の思う通りにならないからイライラしてる感じって、ボクは思うな」
「世の中難しいからねえ。自分のやらなきゃいけない事、やっちゃいけない事、やった方が良い事。って感じで。自分のしたい事って中々出来ないし、思う通りにもいかないもの」
双子に挟まれて座るシルベーヌがそれに答え、肩をすくめて明るく笑い。窓の外を眺めつつ再び口を開く。
「まあ実際。目的は謎よね。手がかりになりそうなのは、確か島をスッキリさせたいんだっけ? まるで掃除みたいな言い方だけど、掃除する理由も分かんないもの。それに生体兵器だって――」
そうやって、皆と話している時だった。
俺も良い機会なので頭の中を整理しようと深呼吸をした時。身体の中をピリッとした感覚が駆け抜ける。痛いとかでは無く苦い感じのある、仄かな違和感の電流だ。
(なんだ?)
助手席に座った俺は、窓から外を見た。
街並みには寒そうにする着込んだ人々。白い息。寄せられた雪。濡れた路面。屋根から零れる雪の滴。積雪で心躍る人は多いようだが、いたって普通の光景だ。
「――って事なんじゃないかしら。で、ブラン。実際エミージャと話した人としての意見はどう?」
「ああ、ごめんシルベーヌ。ちょっと考え事してた」
「もう。ちゃんと聞いてよねー。というか、何考えてたの?」
「いや。何か変な感じがピリッと来てさ」
「何かの気配って事?」
「多分」
それを聞いたシルベーヌとミルファがいささか真面目な顔になり、車の外を気にし始めた。
「ちょっとごめんねティム。私窓側行くから席代わって」
「それはいいけど……」
ティムと席を入れ替わったシルベーヌは、窓の外を油断なく見始め。それを見たタムが意外そうな顔をして言う。
「今更だし、ワタシが言えた義理じゃないけどよ。兄ちゃん姉ちゃん達は、気配とか感じとか、割と根拠の無い事でも本気にするよな。ワタシ達を見つけた時もそうだったみたいだし、街の下の遺跡だって、ワタシ達の耳を信じてくれたし」
「人の感覚というのは存外鋭敏なものです。古くからある虫の知らせや予感という言葉は、そういった曖昧な現象の先に実害や実利がある事をよく表しています」
ミルファが静かに答え、ハンドルを握る手に力が籠りつつも答えた時。街のどこからか歓声が上がり、拍手が鳴り響いた。
それに比例して俺の身体に走る違和感の電流も強くなり、感覚のままに俺は言う。
「多分この拍手の原因だ」
「分かりました。私が車を適当な場所に停めておきます。ブラン、シルベーヌ。先に降りて行って下さい。タムとティムは私と一緒に居て下さい。車を停めたら合流しますから」
勢いよく返事をして、俺とシルベーヌは一旦路肩に止まった車から飛び降りた。幸い車の流れがゆったりとしている事も相まって、咎められはしない。
「どっちだろ?」
歩道にでたシルベーヌが言い、俺は耳を澄ます。すぐに音と違和感のある方角が分かり。彼女に声を掛け、早足で歩き出した。
何本か道を通り、角を曲がる。すると建物の裏手に、開けた大きめの公園がある場所に出る。
そして雪の積もる公園の中央には、白と緑で彩られた鎧を纏う巨人が1人立っていた。
「人型機械……!」
俺とシルベーヌは息をのみ、同時に驚きの声を上げた。
引き締まった四肢と細めの腰。良く磨かれてつるりとした、丸めの肩装甲。白地に明るい緑が映える色彩で細めの装甲は曲線を主体としていて、勇ましいというよりも優美な立ち姿である。
しかし。中でも目立つ部分と言えば、前腕全てを覆う大き目の籠手だろう。籠手というよりは腕に沿って伸びる長方形の小盾のようでもあり、少し歪で不気味でもあった。
そんな緑白の巨人が胸を張って背筋を伸ばし、緩く腕を広げつつも顎を引いて。何事かと周囲に集っている人々を見下ろす姿は、自分の姿を周りに良く見えるようにしているのが良く分かった。
舞踏号を巨人の戦士とし、騎士団のパラディンを巨人の騎士とするならば。公園の中央に優美に立つ緑白の人型機械は、まるで巨人の術士でも言ったら良いだろうか。
どこか余裕があり、超然とした立ち姿には、得も言われぬ魅力があるのだ。ローブでも纏えば、本当に怪しげな魔術士にでも見えるだろう。
「シルベーヌ、あれがどこのか分かるか?」
「ううん。初めて見る形状。カラーリングとかを見るに、騎士団のじゃないみたいだけど……」
2人で緑白の人型機械を見つつ近寄ると、優美な形状の頭部で光る左眼が、ついと俺に注がれた。
何かを見定めるような。あるいは何かを探るような機械の瞳が。俺の全身を素早く確かめる。
「なんだ……?」
その視線に、俺は違和感を感じて再び声を漏らす。
俺は、いいや。舞踏号が、この人型機械に一度会った事がある――?
「さあさあお集りの皆さん! この大雪の中、わざわざこちらの巨人を起こしたのは酔狂ではありません! これも私。リベラ・マルフィーリが代表を務める『マルフィーリ商会』の活動を、皆様に知ってもらうため!」
明るく若い男の声が俺の思考を途切れさせ。そしてその言葉に、俺とシルベーヌは顔を見合わせた。
「マルフィーリって確か」
「騎士団の、統合作戦本部長の名前だよな?」
シルベーヌの声に俺が続けると、2人でそのまま声のする方へと視線をやった。
人垣の先。巨人の足元に、紺色の長髪をした優男が堂々と立ち、白い息を吐いて微笑んでいる。細い眉の下、切れ長の目の奥で、ハッキリした翠の瞳が力強い。体躯もスラリとしており、まるで俳優のような男性だ。
「我がマルフィーリ商会は新参者ではありますが、世のため人のため、そして世界の為に、日々静かに邁進しております。子供や老人の保護から、働く皆様への微かな支援。水道や電気等インフラへの投資、そして安全な生活を守る為の防衛力へのお手伝い。荒廃している自然環境の改善など! わが商会の事業は多岐に渡っております」
紺色の長髪をした男性は、大きな身振りを交えてとうとうと説き。男性の少し後ろに居る緑白の巨人は、同じ様に大きな身振りで動いている。
「遠隔操縦……? いや、違うわね。機材とか道具が見えないし……。これ、AI制御の人型機械かも。足元に居る男の人の動きをトレースしてるだけみたい?」
シルベーヌが一瞬だけ意外な顔をしたが、すぐにカラクリを看破して、小さな声で俺に教えてくれた。
「しかし。我が商会は未だ規模が小さく、メイズの皆様にはその存在を知って頂けていない……。ですが、それは良いのです。私の目的は、自己の利益よりも人々を豊かに、幸せにする事。そこに知名度などは必要ありません。大切なのはどうすれば皆さんを幸せに出来るかという部分です」
男性は少しだけ溜めた後、グッと握った自身の拳で己の胸に触れた。
緑白の巨人も同じ様に動き、握られた拳と胸の薄い装甲が当たって小さな音を立てる。
「私は若造ですが、現実を知らない者ではありません。商いで利益を上げねば出来る事は限られ、知名度が無ければどんな意見も聴いて頂けない。そう苦悩している時。メイズ騎士団長自らが、私のような若輩者に協力を申し出て頂けたのです!」
どうだと言わんばかりの顔と、大きく腕を広げる動作。様にはなっているし、本当に嬉しいのだろう。更に男性は高らかに言い放つ。
「そして昨今、騎士団と民間を問わず活躍している人型機械の貸与をして下さいました! それがこの、私の後ろに立っている『慈恵号』です!」
男性が大きな身振りで後ろに立つ人型機械を紹介し、当の慈恵号も心なしか胸を張った。
「皆様の中には、新聞や噂で知っている方々も居るかもしれませんね。騎士団の人型機械を運用する部隊の話や、舞踏会にも参加した人型機械を使う探索者の話題を! 勇ましく、鮮烈な彼らのように。現代に再生された古の巨人は、私の大切な仲間になったのです!」
再び男性が高らかに言い、周りを見回してから慈恵号の方を振り向いた。そして彼が軽く手を挙げると、巨人は静かに頭を垂れて片膝を着く。
それは今言った仲間ではなく。まるで王に跪く家臣か家来のようであった。
「この公園で慈恵号を動かしたのは。他でも無く大雪で困っている皆様を助けたいがためです。この辺りは交通量に対して、まだあまり除雪などが済んでいません。都市全体が久しぶりの大雪で忙しいのですから、私も善良なる一市民として手伝おうという善意です。しかし、私も商い人。これを機に少々宣伝も……という、小賢しい想いもあります」
男性はそう言って微笑むと、再び片手を掲げて何事かを慈恵号に呟き。周りの人々に道を開けてくれるように頼みながら、公園の外へ向けて歩いて行く。
白地に緑で塗装された慈恵号は、ゆっくりと立ち上がると一歩下がり、おずおずと言った様子で男性の背を追っていった。細身の巨体に似合わない動きというか、嫌々ながらもという感じが心なしかする足取りだ。
その背を見送りつつ、シルベーヌが腕を組んで言う。
「凄いわねえ……。騎士団で良いAI組んだのか、発掘品のを調整して積んだのかしら? どう思うブラン?」
「どっちかは分かんないけどさ。あの人型機械とは、1回会った感じがするんだ」
「なにそれ。……って、そうか。ブランと面識があるって事は、慈恵号の元は赤錆色の人型機械って事?」
「かもしれない。ただこればっかりは、本当に良く分かんない感覚でさ。正直信用ならないと思う」
「十分十分。ひょっとしたらまた舞踏号の記録に何かあるかもしれないっていう、引っかかりになったしね」
そう言うとシルベーヌは踵を返し、一旦車道の方へと戻って行く。俺もそれについて行くと、丁度ミルファが双子を連れてこちらに来たところだった。
3人と合流したので何があったのかを話し、それから他の野次馬に紛れ、慈恵号の作業を少し見て帰る事になったのだが――。
「ボク。あの人型機械嫌いだ。なんかグジュグジュな感じがする」
「ワタシも。なんかアイツの音ドロッとしてる。舞踏号みたいに明るくない」
「えらい不評だな!?」
特製らしい人型機械サイズのシャベルを使い、ゆっくりと雪かきをする慈恵号。
それを見てのタムとティムの感想に俺が思わず言うと、双子はちょっとだけ笑ってから同時に帽子の下にある耳を抑えた。
「なんか変なんだよアイツ。無理矢理動かされてるっていうか、抑え付けられてるっていうか」
「ホントは暴れたくてしょうがないけど、逆らえないから渋々っていう感じがするんだ」
タムに続いてティムが言い。訝し気な顔で、優美に道路の雪を除ける慈恵号を見る。
更に、ミルファも眉を歪めて口を開く。
「シルベーヌ。あの人型機械は声を出したりしましたか?」
「ううん。そういうのは全然。ある程度自我みたいなもののある、独立したAIだろうとは思うけど」
「言いたい事も言えず、好きに動くことも出来ず。相当鬱屈している感じがします。あのAIは一定以上の知能があるようですし、同じ機械ベースの存在として、あまり良い心地はしません」
ミルファはどこか憐みと同情の篭った目で慈恵号を見た後。慈恵号に指示を出している紺の長髪の男性を見た。
「あの方がマルフィーリ中将のご子息でしょうか?」
「多分な。リベラさん……だったはず」
俺が答えると、シルベーヌとミルファがじっと男性を見る。
2人が言わずとも分かる。リベラ・マルフィーリあの人こそ、エリーゼさんやアルさんを危険な目に合わせた張本人かもしれない『代表』なのだ。偏見というものかもしれないが、あまり好ましい印象を持ててはいないのだろう。
それは俺も同様だが、俺は考えねばならない。自分に疑いを持ち、きちんと”本当”を探さなければいけないのだ。
深呼吸を一度。頭の中にある小難しい諸々を一旦追いやって、クリアな視界で『代表』を見た後。俺は感想をそのまま言う。
「前情報とかを抜きに見ると、爽やかでやる気のある若い人って感じがするな。善い事をしたいっていうのも、建前だけじゃないと感じる。公園の演説も色んな人が耳を傾けてたし、カリスマみたいなのもあるんじゃないかな。結構男前だし、好きだって人も多そう」
「ボクはブラン兄さんの方が好きだよ」
「……ありがと。ティム」
唐突な好意に俺が頬を掻くと、ティムもまた恥ずかしそうに俺の足に抱き付いた。子供の高めの体温が、服越しにでも微かに分かる。
それを見たシルベーヌが笑い、腰に手を当てて割とある胸を張り、俺達に言う。
「とりあえず、御屋敷に帰りましょうか。寒いし色々調べ物もしないとだし。相手の事をきちんと知らないのに、いきなり喧嘩吹っ掛ける訳にもいかないもの」
どこか明るく、それでいて冷静な言葉に俺は頷いた。いきなり殴りかかる訳にはいかないというのは、彼女の言う通りだろう。
人間社会は様々な人との繋がりで出来ており。それらが折り重なって絡まり合い、更に倫理や価値観などが沁み込んで、単純に見えて複雑な何かを形成しているのだ。
巨人が街で雪かきをして、街の外や下には化け物が蠢く戦後の世界とて、人の営みはそう変わらない。
今すぐ目の前に居る『代表』の襟首を掴んで殴り付け、色々な事を追及するのは簡単だ。しかし当然、そんな事をすれば内容云々以前に危険人物だと考えられ、社会全体から悪者の烙印を押されて爪弾きにされてしまう。
あの舞踏会の時とてそうだ。騎士団長や統合作戦本部長の胸倉を掴んで洗いざらい話せと叫ぶのは簡単だが、そんな事をすればすぐさま射殺でもされるだろう。
仮に俺に無敵の力が備わっていたとしても、絶対の力を持った個人が他人を脅かすなど。その場は穏便に出来たとて、後に様々なやっかみを受けるのは想像に難くない。
「やりたい事と世の中の関係か……」
俺は世の中を動かそうとしている。戦争なんて嫌だから。皆でハッピーエンドを迎えたいからだ。
しかしそれには力が足りない。単純な武力だけでは無く、権力、知力、魅力、財力……諸々の力ほぼ全てが足りない。
目的を達成するための手法さえ、未だに不安定である。
エミージャを殺せば全てが終わる? アイツは明確な一因ではあるだろうけれど、それだけを倒して終わるものか? では生体兵器を全て殺せば良いのか? それは極論だろう? 幸運の旅人とは何だ? 騎士団が旅人を集めてもいたはずだが、それは何故? 仮に戦いを止めれたとして、その影響はどうやって治める? 一番善い方法は何だ? そもそも善いとはなんだ? これはどうする? あれはどうする――?
「ぬぐぐぐ……」
車を停めてある場所に向かって人通りが皆無の道を歩きつつ、俺は腕を組んで唸りを上げた。賢いとは言えない俺の頭では、思考回路がショートしそうだ。
そんな俺を見たタムが、くすくすと笑ってから言う。
「なんか悩んでるなブラン兄ちゃん」
「最近よくあるのよ。まあでも、今はひとまずの目標も無いから、小難しい事を沢山悩んで良い時よ」
「はい。ブランは私達の旗印でもあるのです。悩んで悩んで、悩み抜いて頂きましょう。どこかで自分を納得させて、私達を引っ張って頂かなくてはいけないのです」
シルベーヌとミルファが続いて明るく言うと、2人は俺の左右に動いて無理矢理腕を組み、驚く俺に悪戯っぽく笑った。
「悩みには私も混ぜてよね! 1人で考え込むのも大事だけど、皆で悩めば楽だし良い意見が出るもの!」
「私もですよ。ちゃんと悩みを教えて頂かないと、信頼されていないのかと、私は拗ねてしまいます」
「2人共……ありがとう。そうだよな、皆で悩めばいいんだよな」
俺が何だか気が抜けて言うと、素早くタムとティムが正面に回って俺達の足を止め、鼻息荒く胸を張る。
「ワタシもいるぞ! 子供の意見だってバカにすんなよ? 子供だから、大人とかじゃ出てこねえモンを出せたりするんだ! まあ”かもしれない”だけどな!」
「ボクもいるよ! 『人の口の言葉は深い水のようだ、知恵の泉は、湧いて流れる川である』。古い本の御言葉なんだけどさ。皆で知恵を出せば、川は大きくなって地面だって削れるとボクは思う」
タムとティムはそう言うと、真っすぐな目で俺を見る。
年に似合わぬ確かな自我と精神を持ったケレンの神子達。生命力に溢れた双子の語る力強い言葉から、根源的な前向きさを身体が感じざるを得ない。
そして子供すらも俺に力を貸してくれるという想いに、思わず涙ぐんでしまう。
「タム。ティム。本当にありがとう」
俺はしゃがんでそう言うと、溢れる思いのまま躊躇わずに双子を両手で抱きしめる。
双子は驚きつつも嬉しそうにしてくれ、2人の腕が俺を抱きしめ返してくれた――のだが。
「ふーん。タムとティム相手ならガッといけるのね?」
「子供好きと言えば聞こえはいいですが、ブランには別の疑惑もあります」
「待て待て待て!? そういうんじゃないって!」
シルベーヌの邪悪な笑いに続いてミルファがいじわるに微笑み、俺は双子に抱き付かれたまま抗議の声を上げた。




