脅しと増える面倒な事
この学校は全寮制となっている。理由は至極単純、面積が余りまくっているからだ。まだまだ、場所はあるそうで出店希望のお店を探しているそうだ。まぁ、こんな所に店を出す物好きが簡単に見つかるとも思えないが。
食事は学食が無料で食べられるようになっている。お金はというと、いずれ潜ることになるダンジョンの魔物が落とす爪や皮なんかをお金にしてその者の成績という名の強さに応じて支払わなくてはならない。
魔物は絶命と同時に黒い霧となり、各部位がたまにドロップする。正直確率はかなり低いがそんな魔物が確実に落とすものがある。それは魔物の心臓だ。心臓と言ってもドクドクと動くわけではなく水晶のように透き通った石の事だ。
魔物の心臓にあたるもので石のようだから魔石。安直だが分かりやすい。分かりやすい事はいい事だ、考えなくて済む。この魔石は魔力を貯めることができるため、汎用性も高い。
魔物から魔力を吸い取る装置を作り、ダンジョン第一階層に設置してその魔力で街灯を付けているそうな。全く魔物からしたらとんでもない装置だな。
《そうだな、私としてはあれには近づくのも嫌になる》
お前でもそうなのか、なら出来るだけあそこは早く過ぎることにするよ。
そんな時だった。俺のお腹が人知れず食べ物を欲したのは。はぁ、朝ご飯はやっぱり食べるべきなのか?でもなぁ、明後日しんどいしなぁ。
《スープぐらい飲んでから学校に行けばいいものを》
そして、ちょうどいいタイミングでチャイムがなる。俺は鞄を掴み屋上へ向かう。
屋上へ着くと弁当を出し、雪乃を呼び出す。そしていつものように食事をしようとするが誰か来たみたいだ。
「珍しいな、お前以外にこじらせた奴がいるとは」
「お前が昼にも魔力を供給してほしいというからこんな所にまで来たんだろうが」
ドアが開くと3人の少年が出てきた。別に知り合いでもなんでもないしどうでもいいんだけど。
《お前それ本気で言っているのか?》
何か変なこと言ったか?それよりも外に出てる時ぐらい普通に喋ったらどうだ?
「おーおー、お熱いなぁお二人さん」
「まて、田中。あんな奴いたか?」
「そうだぞ、あんな生徒と一緒にいたならもっと早く気づいてる」
田中と呼ばれた金髪のいかにもなヤンキーの男とその取り巻き?のような二人。
「ひっ」
「ん?どした?」
「最後に喋った奴、なんだかイヤラシイ感じがした」
最後の奴っていうと穴前髪の少し長いのか。女にしか分からない物があるのかもな。コイツらが俺たちに何か出来るとは思わないな…慢心しているわけでは無いが負ける気がしない。それに、授業以外での魔法の使用は禁止されているしな。
《お前という奴は本当に何も考えていないのだな》
なんだよ説教か?ならやめてくれせっかくのご飯なのに。
《ここにはカメラが無いんだぞ》
あっ…そっかぁ…。
「はぁ…」
その特大溜め息はちょっと心にくるな。
「何コソコソ話してんだよ」
「なんか用か?えっと…田中?だっけ」
「おいおいひでぇなクラスメイトじゃねぇか」
「そうだったのか…すまんな興味ないし面倒だから覚えてないんだ。なんなら、そっちの二人の名前も聞いていいか?」
そういうと二人は黙ってしまった。なんだよなんか言えよ。それになんだか怯えているような。
田中は少し小走りになってから俺の弁当を思いっきり蹴飛ばした。
「あっ弁当が…」
そして、俺の胸ぐらを掴み上げた。
「お前のそういう態度が気にいらねぇんだよ。この前のトーナメントも」
「それがどうした、だいたいお前らにはなんの迷惑もかけてないだろ」
少し黙った後冷静を保つためかゆっくりとした口調で喋る。
「今日の放課後この前のトーナメントのステージまで来い。ボコボコにしてやるから」
「断るそんな面倒なことしたくないしする必要もない」
そう言うと田中はニヤッと笑い後ろの二人に目配せをする。すると2人は雪乃を押さえつけ地面に跪かせた。
「これでどうだ?断れねぇだろ」
「はぁ、お前らってほんとバカだな。雪乃、力は使うなよ」
「あぁ、分かったがこの状況が長引くのであれば…」
「分かったからそれ以上言うな。面倒だからさっさと始めよう。グラウンドだな」
「それじゃあ行くか」
楽しそうだな、俺はお前達の命が心配だよ。雪乃を怒らせるのはマズイと俺の全細胞がそう叫んでいるんだ。