面倒な奴と決勝戦
トーナメントは俺が考えていたものよりもずっとつまらくて、面倒なものだった。36人も人がいるのに俺と同等の力を持つものはいなく、最初に投げる球をよける奴はいたけれど少し速く投げるだけで避けられる奴はいなくなった。
面倒なのは嫌いだが面白い事は結構好きなんだけどなぁ。決勝にあっけなく進出したが決勝でもやる事は変わらない。鉄の球を1つ取り出す。
「それでは決勝戦!黒鉄海斗君VS櫻井隼人君!カウントダウンスタート!」
カウントダウンが始まる。櫻井の方は準備をしているが俺の準備は球を待つだけ。ただ投げるだけでは避けられるはずだ。だからこそ球の速度を速めなければならない。
今回は球に3つの魔法を付与する。1つは進行方向に重力を発生させる魔法、これは単純に速さを出すためのもの。2つ目は触れたものを無重力にする魔法。重力操作魔法は難しいとされているが、俺は昔からこの魔法が得意だったな。
《んん、なんだ?もう決勝か?》
おう、悪いな寝ていたのに。
《気にするな、周りがうるさいからな。実はさっきから起きていたりする》
起きてたなら声をかけろよ、そしたら退屈しなくて済んだのに。
「3!2!1!スタート!」
カウントダウンがゼロになり、決勝戦が始まった。する事は変わらないが辛いところか。
「君の本当のランクを教えてくれるかな?」
「その必要は無い」
こう言う爽やかイケメンは苦手だ、変に正義感が強いし正直者だしでとにかく苦手だ。
《ふむ、それについては同感だな》
俺は腕を軽く振り上げる。そして少しの動作で球を投げる。重力操作魔法を使用している球はあり得ないスピードで進んでいく。そして、櫻井は反応しきれずにたまに接触。したように見えたが、もしかしてこいつ…。
《あぁ、わざとだな。あえて当たったとも言えるのか?》
ま、興味ないけどな。櫻井の体がフワフワと浮き上がる。
「はは…やっぱりスゴイな君は」
「わざと当たったやつに言われても嬉しくはない」
「仕方がないじゃないか、3つも魔法を付与されたら避けようがないよ」
バレてたか。3つ目の魔法、それは進行方向とは逆へ重力を発生させる魔法。もし、かわされてもこれで確実に当たるためのもの。まぁ、バレてたんなら仕方ないか。
「なんでも良いがこれで終わりだな」
「そうだね」
櫻井の体をステージの外まで押して、魔法を解除する。イテッと言いながら尻餅をつく櫻井を見てこいつは要注意人物だなと思う。
「優勝は黒鉄海斗君!」
石神の実況とともにチャイムがなる。俺は面倒なことになる前に着替えることにした。