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面倒な事と一回戦

トーナメントのルールは簡単なものだった。30秒のカウントダウンがゼロになればスタート。カウントダウン中は魔法の使用と相手への攻撃以外なら何をしてもいい。剣を構えても弓を引いても移動してもいい。俺と同じランクの生徒がいてもおかしく無いが可能性は低いだろう。


一回戦、名前が…なんだっけ?このパッとしない男…え〜と…。


《亀本だ、名前ぐらい覚えろ。失礼だろ》


それもそうだな。誠に申し訳ない。


《心の中で謝っても意味はないだろう》


「それじゃ、カウントダウンスタート!」


俺の武器は左右に付いているポーチに入っている直系2ミリの鉄の球。背中側にはダガーやナイフよりかは長いが片手用の剣よりかは短い。斬れ味と耐久性の高い剣。これを抜く事はないだろう。


俺はポーチから1つだけ球を取り出す。あと20秒…長い。


「そんなんで勝てるの思ってるのか」


「ん?あぁ、これ?まぁ、なんとかなるんじゃないか?」


そう言うと亀本は苛立ちながら顔を歪める。そんなストレスの溜まる性格してたら早死にしそうだな。


《お前が呑気すぎるんだ》


「お前、ランクは?」


「ヒミツ、教えてくれたら教えるかも」


「俺はBだ」


亀本がランクを明かした直後ブザーが鳴った。


「第一回戦、スタート!」


石神の元気な実況とともに一回戦が始まった。ステージは一辺30メートルの四角形。リタイアするかステージから一歩でも出れば負け。簡単だな、面倒な事を考えなくてもいい。


「ほらよ」


魔法を込めた球を亀本に投げる。俺の込めた魔法は突風を起こすもの起動条件は…接触。


「舐めてんのか!」


剣を持っていない手で球を弾こうとするが。手の甲に当たった瞬間、体が吹き飛ぶほどの風が吹き荒れる。


「ぐわぁぁぁぁぁぁあああ!」


飛ばされた亀本が地面に落ちる。そしてそこはステージから5メートルほど離れたところだった。


「黒鉄君!WIN!」


テンション高いなあの先生は。俺は磁力を生み出す魔法で鉄の球をすいよせる。手の中に戻ってきた球はまだ、ピカピカのままだ。良かった、磨くの結構面倒なんだよな。


《なら、磨かなければいいだろう》


そこはほら、戦う時のモチベーションに関わるから。


「おい!ちょっと待て!」


「ん?なんだ?試合は終わったぞ」


「お前、ランクは?」


「負けたお前にはもう必要ないだろ」


そういって歩き出す。もともと話すつもりなんてなかったし。別にいいよな。


「ふざけるな!人を舐めるのもいい加減にしろ!」


亀本は剣を振りかぶってからかかってきた。俺は剣が当たる前に左手で剣を握っている手首のあたりを掴み。右手で亀本の首を掴む。そして少しだけ浮かせる。


「お前にはもう必要ない」


「こ…の…やろ…」


往生際が悪い奴は嫌いだ。どうして面倒ごとを増やすんだ?わけがや沢からない。


《お、おい!それ以上力を入れたら…》


「はい、そこまで。君、力入れすぎ。折れるところだったじゃない」


「はっ⁉︎これは失礼。つい力が」


「ついってレベルじゃなかったけど?」


「俺はこれで」


詮索されるのは面倒だ。さっさと逃げよう。


《そんなに嫌か?人付き合いは?》


分かってるだろ、いちいち聞くな。面倒なんだよ、人付き合いは。そして、面倒なのはみんな敵だ。


《歪みすぎだな》


うるせぇ…。


これが俺の悪いところなのは知っている。だが、抗う事は辛い事だ。辛い事は面倒なんだ。人は簡単には変わらない。


《昔はもっと純真無垢な良い子だったのに》


おい、どうして昔の事を知っているような口ぶりなんだよ。


《口ぶりではなく知っているんだ、契約者なんだから当然だ》


初めて知ったぞそんな事!昔の俺だって本質は今と変わらない。昔からこんなだから友達なんて出来たこともないしな。


《それじゃ私は何なんだ?》


お前は友達以上に大切な存在だ。お前がいないと俺は戦えないからな。


《な、なんだ急に!プ、プロポーズのつもりか!》


は?何言ってんだお前。俺はお前の力が無いともしもの時に戦えないって言ってるんだぞ。


《や、ややこしい事を言うな!この戯け!》


氷の結晶越しに胸の辺りを殴られた気がした。


トーナメント一回戦。呆気なかったがこれが普通なんだろうな。はぁ、もう授業を抜けたい。

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