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ポテトチップス無限塩味

作者: 中丘オクト

会社帰りに、駅前のコンビニでポテトチップスを手に取った。

会社帰りのこの買物はいつもの日課のようなもので、買うのはのりしお味と決めている。

塩味も美味しいのだけれど、私はのりしお味が好きだ。

冷蔵庫からコーラもかごに入れてレジに持っていく。

ビニール袋に詰めてもらい、手で持って帰る。

いつも同じ組み合わせで買うので、そろそろ何かあだ名がつけられているかもしれない。


私はコンビニから出て歩き始めた。

コンビニと家はそこそこ離れている。

運動不足な社会人にはちょうどいいくらいの距離だと思うけれど、ポテトチップスとコーラのカロリーを消費するには遠く及ばない距離だ。

そんな細かいことを気にしていたらポテトチップスとコーラは楽しめないけれど。


ポテトチップスを食べながらコーラを飲むのは至福の時間で、日々の小さな楽しみになっている。

それ自体も楽しみだけど、そこに到達するまでの時間、コンビニから家までの歩く時間も楽しみの一つだ。

一日のストレスから解放され、あとは楽しみだけが待っている時間。

家に着くまでは、色々とどうでもいいことを考えながら歩いていく。


歩いていると、少し雨が降りだした。

そういえば、朝の天気予報で雨が降ると言っていた。

近頃の天気予報は外れることが多いから傘は持ってこなかった。

天気予報というのは、スーパーコンピュータで天気を予想するらしいのだけれど、ある時点での気象状態をプログラムに数値で設定して、シミュレーションするらしい。

設定する数値のわずかな差で大きく結果が異なってしまうため、天気予報を完全に当てることは難しいと聞いたことがある。

例えば、どこかでイナゴの大群がバタバタと羽を羽ばたかせて飛んでいると、他のどこかで嵐が起こるとか。

これをバタフライ効果と言うってどこかで聞いたな。

まあ本降りになる前には家に着くだろう。

シミュレーションといえば、そういえば昨日のテレビで、この世界は本当に現実なのかどうかといった議論をアメリカのIT起業家が真面目に議論していた。

この世界が本当に現実である証明はできない、この世界がシミュレーション空間である可能性を否定できず、空間の外部に管理者が存在しているかもしれないと。

一部のハッカー達はその手がかりを掴み、世界にクラックをしかけている可能性があるとも言っていた。


そんなことはどうだっていい。

私はポテトチップスとコーラを楽しめればそれでいい。

そんなことを真面目腐って考えてどうするんだ。

この世界がシミュレーションで誰かがクラックをかけていたとして、ポテトチップスとコーラのおいしさに比べれば、どうだっていいことだし、何が関係あるんだ。


歩いている間はいつもこんなどうでもいいことを思い浮かべながら家を目指す。


家にようやく着き、部屋着に着替え、テレビをつけた。

いつもどおり袋からコーラとポテトチップスを取り出した。

まずコーラを取り出し、一口飲んで一息つく。

次にメインのポテトチップスを開け、一枚取って口に入れる。

あーおいしい。

次々にポテトチップスを口にいれる。

コーラを飲む。

しみじみおいしい。

この繰り返しが至福の時間だ。


繰り返しているとコーラが先に無くなった。

いつもはポテトチップスが先に無くなる。

テレビを見ながら、残りのポテトチップスも食べ続けた。

ぼーっとテレビを見ながら機械のように食べ続けていたのだけれど、なかなかポテトチップスは無くならなかった。

そろそろ尽きるはずだと、袋の中身を確認してみると、ポテトチップスはわんさか袋に入っていた。

どういうことだと混乱しつつも、また一枚ポテトチップスを手に取り、口に入れた。



ポテトチップスは塩味になっていた。


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