† 九の罪――殺し屋殺し(拾)
「え、みつき――きられた、の……?」
一人に返った処刑人が、緩やかに仰向けで倒れ込む。
「ああ、お空……きれい。そういえば、お空もろくに見上げることない人生だったな……こんなにきれいなのに見納めだなんて――なんだかくやしいなあ」
カルタグラの斬り口に沿って、その身はすでに透け始めていたが、横たわる彼女は取り乱しもしない。
「ふしぎ……負け、すなわち死って聞かされてたのに、殺すばかりだったから死ぬなんて考えたことなかった」
相も変わらず、抑揚のない喋りで独白する。
「こんなに、くやしいんだね。くやしい――おかしいな。こころなんて……なくしていた、はずなのに――――」
くやしい――それは、彼女が怪魔に屈した被害者として妖屠になった日、得物に込めた想いだった。
「あげる。あなたがみつきにかんじょうをよみがえらせた、あかし…………」
もともと白い肌が露と散りゆく間際、彼女は消え入りそうな声で、警棒大に還ってゆく鎌を差し出す。
「そのかわり、まけたら……ゆるさない……から――――」
信雄が見つめ返した無に還る直前の死神は、僅かにはにかんでいるようにも見えた。
今年10月にConquistadoR名義で、サンシャインクリエイションで完全新作を発表する予定です!
内容は異世界ファンタジーのギャルゲーになります。




