89/219
† 九の罪――殺し屋殺し(弌)
「別に俺は変わる気なんてねーし、人に押しつけだのなんの、おこがましいことしようとも思いませんよ」
いつの日にか、多聞さんに生き方について説かれた俺は、こう反発したことを覚えている。
「さも正論かのように偉そうに語るけどさ、どっちも歩み寄らないってことは君の居場所なんて生まれないよ」
「そうすか、社会じゃ通用しないすか。なんで多数派の機嫌とるためなんかに俺が自分を捨てなきゃなんねーんだよ。社会様がんな偉いっつーなら、人類なんかロボットにでもしちまえ」
この発言を聞いた彼は、哀しげに遠い空を仰いだ。
「うちらの仲間も、そういうことを突き詰めて都合いい駒を生み出したよ。利用されたのは幼い女の子……実験は成功した。罪悪感をおぼえないんだ。心がないから。躊躇しないんだ。殺すことしか考えないから。たしかに、戦士としては完成されてるかもしれない――――」
多聞さんは一口、煙草をくわえると、静かに吐き出す。
「けど、そうなった彼女は人間と呼べるのかな」
風に流れる紫煙が、悲しげに消えていった。
どや顔で恋人についてのろけられても、真の非リアたる者、イライラしてはいけません。
「つまりヤったんでしょ?」の一言ぐらいで済ませましょう。




