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† 八の罪――剣戟の果てに(拾弌)

 嘲け嗤うようにして、包帯男は続ける。

「奴を倒せたら、の話だが」

 閃く稲妻が、醜く歪んだ横顔を照らし出した。


「人間みんな平等? 多数派こそ正義? 笑わせる。民主主義で代表者が選ばれた結果がこれか……愛と平和を掲げて異教徒を殺戮する信者と、まるで変わらない。目的と手段が逆転した虚栄の大国には、逆臣による世直しが必要だ。斃すべき相手は敵兵ではなかった。彼らとの戦争に導いた生天目筆頭執政官こそが、倒されるべき悪の根源なんだ。日本が生まれ変わるため、繰り返される愚行を断ち切るため、すべてを失った僕が謀叛人の烙印を一身に受けよう」

 行政省に侵入した国防陸軍きってのエリートは、息もつかせぬ内にガードマンを一蹴。執政官が不在であったため、部隊より持ち出した最新の小型地対地ミサイルで執政官官邸をロックした。生天目鼎蔵が利害のためなら人命も平然と犠牲にし得ると知る人質の職員や政府関係者は、絶望ですっかり青ざめている。しかし、ただ一人、このような状況にも関わらず、むしろ愉しんでいるかのように、苦笑いをこぼす若者がいた。




 毛が無いような箇所に1本だけ生えてる、抜いても抜いても生えてくる太い毛みたいな存在に、私はなりたい――――

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