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† 八の罪――剣戟の果てに(拾)

 血塗れた老人の屍をつまみ上げて、栗毛の美青年が大げさに嘆息をつく。

「フッ、やはり人間とは儚いものよ。初代の一位にして日本支部の所長ともあろうお方とて、こうも呆気なく命を落とすとは」

 薄暗い空間に浮かび上がる、包帯の隙間から覗く双眸は、言葉とは裏腹に悲しんでいる様子がない。

「春は、雨で見られぬ日こそ桜のことを考えてしまう。年に一度の僅かな間だけ脚光を浴びるが、散る時は誰も気に留めない……英雄の最期も、花に似た虚しさか。しかし、嘆いてばかりもいられぬゆえな。やむを得ん、ここは悲しき事故で急逝された彼に代わって、この象山紀章が日本支部を預かる他ないか」

 変わり果てた沢城是清を見下ろし、朗々と象山は語った。

「所長亡き今、十位の三条桜花が出奔し、九位の喜多村多聞も加担。今や幹部は筆頭顧問たる御身のみ。本部からの代理を待つ猶予もない以上、自ずと答えは出ております」

 道化師もまた、恭しく同調する。窓の外が荒れ始めていた。

「いずれにせよ、信雄かれは必ず戻って来る。そういう者よ。もっとも――――」




 歪んだ愛なら燃えるって人は多いけど、嫌いな相手との交わりという嗜好はなかなか共感されない。

(大河ドラマなんかで夫の仇に抱かれるシーンでテンソン上がっちゃ)いかんのか?

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