† 七の罪――劫火、日輪をも灼き尽くし(肆)
熾烈極まりない未知の斬り合いに、多聞ですら息を呑んでいた。
「なんて応酬なんだ! しかも二人とも、あれで余力を残している――って、桜花くん……!?」
信雄だけでなく、もう一人の部下までもが身を屈めて呻いている。
「ぅうっ、あの子が……暴れている……みたいです」
「ゼブブっち、たのむよ――――」
止まない緋雨の彼方を、静かに多聞は見つめた。
「十数年で此の高みに到ったとは、稀有な強者であるな。然れど無謀。余に火を点けた以上、帰趨は決した」
突風の如く放出された魔力の渦が、双剣の片方を放り飛ばす。それでも、
「無茶もできないような男で終わる気なら、最初からこんな化け物に挑まんさ」
動じもせずに空いた手で裏拳を繰り出し、回りながら懐へと肉迫する茅原。
「実力で負けてれば百二十パーの実力で挑む!」
手数を増やして攻め続けるも、華麗に虚空を滑る堕天使は直撃を許さない。
「なおも届かん相手なら、百五十パー引き出すまで……!」
大きく弧を描き、後ろ宙返りでルシファーが離れた。だが、茅原は一転して、距離を縮めようとしない。
「そういう訳だ。こちらも奥の手もご覧に入れよう」
“くらぐら”を一言で表せば「人間っていいな」です。




