† 六の罪――第三の悪魔(陸)
「結界……奥義が来るぞ!」
この場で唯一、かの技を知るベルゼブブの呼びかけが、その威力に対する警鐘。しかし、誰が契約したのかはさておき、ソロモンの指環なしでは使役できたところで、全力を引き出すには程遠いだろう。奥義まで使うのであれば、守りは手薄になるのが必定。
「くっ、化け物め。やられる前にやるぞ……!」
戦車隊の中央で、指揮官が逞しい右腕を掲げる。
「撃ち方始め(てぇッ)!」
響き渡る轟音。国防陸軍の誇る二一式戦車の主砲が火を噴いた。耳朶を打つ砲声は、一撃必殺のシグナル。世界最強の五十二口径百三十ミリ滑空砲で、足場ごと彼を吹き飛ばそうというようだ。が、
「フン、愚かな」
着弾を待つことなく、致死の砲弾は崩れ去った。高熱を帯びる前提につくられた存在が、瞬く間に跡形もない。溶けたと言うより、亜空間に呑まれた、とでも表すべきだろう。ベリアルは悪徳の堕天使。敵意を伴った攻撃に対して、最高の迎撃力を発揮する。
「ふっふっふ……もっと足掻きなさい。その醜態、実に人間らしい」
言葉を失った兵士たちの代わりに、両手を広げて天を仰ぐ彼の哄笑が木霊した。
「ちょっと、なんとかして! きみの愉快な仲間たち的なアレでしょ。ほら、実はいい人そうだし」
ベルゼブブのいるであろう空間に、問い詰める桜花。
「桜花くん、無理を言っちゃ迷惑でしょう。それに、ああいう笑い方をするのは例外なく悪役っていうじゃん」
そうこうしている間にも、空気中に在る負の波動がベリアルの元へと集ってゆく。
「――――其は民惑わす偽りの楽園
狂い咲くは穢れの薔薇
泡沫の戯れに終幕を
今こそ裁きの烈火を受けよ」
無力な有象無象を嘲るようにして、ベリアルが紡いでゆく破滅の呪言。決して声を張っているわけではないが、その詠唱は一帯を包んでゆく。
「むうう、今の吾輩ではあれに抗しえぬか……かくなる上は――」
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