† 五の罪――運命(さだめ)との対峙(肆)
「しゃーない。余ってる食材まとめてカレーだ。ただし、カレーと言っても俺が作んのは日本人らしくカレーライス! ナンとかいうシャレたもんはねーけど、大人しく食うんだぞー?」
「はよ」
こいつに至っては稽古したわけでもないのに、腹が減っては戦はできぬ、と言いたげな面持ちである。
「……まだか?」
いやいや、まだ食材を切り終ってもいないのだが。
「文句ばかりだね。ほんとーにルシファーに次ぐ実力あるの? だいたい、ベルゼブブって言ったら普通男だよね。あー、イケメンの悪魔がよかったなあ……」
「なんと無礼な……わ、吾輩の力をうたがうのか! まあそちのために使うことなど有りえぬがな」
まったく、先が思いやられるコンビだ。
「魔王の右腕にこのような物を出すとは、おそれ知らずめ……!」
「……フッ。真なる王者とは、何時如何なる場とて存分に愉しむものよ。人間共の文化を試す良き機会ではないか、と魔王さんが申してます」
我ながら雑な出任せだったが、ベルゼブブは恐る恐るカレーを口に運んだ。
「あッ! あぅううう……うぬぬ」
辛さと温度に驚いたのか、彼女は大きな瞳に涙を滲ませて身悶えする。
「大丈夫か!?」
「だれも熱いなぞ言っておらんわー! 吾輩にかかれば、こここ……こんなもの……!」
いや、俺も熱さに関して口に出してはいないのだが。しかめっ面でかっ込み始めた地獄元帥様は、むきになりやすいお年頃のようだ。
「……ふむ、わるくないのう。人間どもの文化とやら、光栄に思うがよい」
「うん。似合ってるぜ、そのウサちゃんスリッパ」
大学生の頃、ピザを噛んだら勢い余って顎が外れました。
外科医いわく「いかにも耐久性が低そうな顔の輪郭」だそうです。




