† 三の罪――死神と演武(ワルツ)を(漆)
「そこまで」
柄に指がかかろうか、というところで所長の一声によって、賭けの結末が示された。俺の喉元には鎌が突きつけられている。六、七発は受けて、彼女に対する有効打はなし。判定を聞くまでもない、そう溜息をついた直後。
「くっ、う……ッ!」
過大な力に身を任せた反動か、身体の奥底から込み上げるような痺れに膝をついた。頭も混濁している。
(副作用も魔王級ってか……ったく、こんだけ無理して負けんなんてダサ過ぎんだろ。ああ、うっせーよあんたは。ただでさえ耳鳴りがやまねーんだ)
薄れゆく意識の中、三条の叫びが木霊し続けた。
† † † † † † †
「こんな所でまた会うとはな。今も奴が表に出ているんだろう?」
静寂に佇む銀髪の少年に、問いを投げかける茅原知盛。
「……一つ教えよ。貴様、人間ではないな」
「さあ、確かめてみるか?」
鋭い目を見返すが、彼の手はいまだ煙管に添えられたまま、微動だにしない。
「人間の世では目上の者に逆らわぬ方が往生出来るそうであるが」
一瞬、一帯の空気に閃電が奔った。しかし、間を置かずして茅原は、不敵な笑みを浮かべる。
「来るべき時が来たら、どちらが上か決めるのも悪くないだろう?」
「ほう。其れもまた一興」
悠然と去ってゆく武人を見送り、影のない彼は呟いた。
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