† 三の罪――死神と演武(ワルツ)を(伍)
鎌鼬が起こるように、何かが真横を駆け抜けていった。そう知覚したときには、俺の襟は裂け、正対していた少女は消えている。
(なんだ今の!? 速さも尋常じゃねーが、地面を蹴るそぶりが全くなかった…………)
背後に向き直ると、今まで通り、無機質な表情のみつきがいた。着衣の一つに至るまで乱れがないことから確信する。やはり、彼女は俺の側を通過しただけだ。魔力で得物を補強して、スピード任せに当てるだけ。それだけのシンプルな戦い方ながら、ここまで速いと常に相手を守勢へ回らせられるわけか。風圧だけでダメージとなり得る俊足は驚異的だが、逆にあの勢いで接触すれば、自身もただでは済まないはず――――
(つまり、当てれば勝てる……!)
しかし一撃離脱戦法のみつきだけに、彼女が近づくのは瞬時のみ。
(……ならば――――)
突っ込むと見せかけ、剣を投げつけた刹那に、銃を構えつつ横滑りして回り込む。魔力の出し惜しみはしない。こちらが全力である以上、彼女ほどの達人が見逃すことはないはずだ。
「く……ッ!」
銃を払い飛ばされる。それでいい。どうせ見切れないのなら、的を絞らせるまで――速度は凄まじいが、単発の攻撃を逆手にとってやろう。通り抜けてゆく後頭部に、裏拳でも入れ――――
「な……!?」
“蹲踞”の姿勢で歌うと、腹式呼吸しやすいと気づいた。
以降カラオケでは毎回やっているけど、信雄ニキと違って、剣道は全然できません。
小手の痛さで心が折れた授業中。




