† 二の罪――我が背負うは、罪に染まりし十字架(伍)
「……不味い――酒が不味い日はろくなことが起きん」
ミリタリーカラーのテーラードジャケットを羽織り、カウンターに身を預けて呟く男が一人。小柄で少年のように見える容貌ながら、落ち着いた組み合わせを着こなしている。
「隣に宜しいか」
是非に先んじて腰かけた相手もまだ十代のようだが、バーにいても違和感のないほどに大人びていた。正確には、浮世離れしている、と表したほうが適切だろう。
「……お前、ずいぶんと殺しているな」
向き直りもせず、煙管に手を添えると、男は問い返した。
「それも百や千なんて半端な数じゃない。わかるさ。職業柄、人殺しの匂いは見逃さない。だが、お前は殺し屋なんてものじゃないようだ……たとえば――人間とは異なる理に存在する者」
そう言って彼は、横に座った少年の影ができるはずであろう位置に目を落とす。
「そういえば今日、とある男により魔王とやらが召喚されたんだとよ」
煙管男は続けながら、揚げスパゲティの一本を手に取ると、くるくると回して差し出した。
「……悪魔は嫌いか?」
「ああ。いや、好きか嫌いかで言えば――戦ってみたい」
無口な後客からの質問に、今までの気だるげな声へ僅かに色を乗せて返答する。
「ほう。なれば貴様が出会えば――」
「この俺様とどちらが強いか、試してみたいもんだね」
言い残して歩き出すと、いつの間にか煙管と持ち替えたらしいダーツを軽く投げ、彼は消えた。
「……いい腕だ」
見事なまでにブルへと刺さった矢。残された若者は、銀色に輝く前髪の切れ間よりそれを一瞥して嗤うと、スパゲティの先端を噛み折った。
† † † † † † †
「深夜に外出なんて珍しいね。思春期こじらせた?」
認証を完了してゲートをくぐるや否や、エントランスに佇む後ろ姿が呼びかけてくる。振り向きもしない三条だが、その声色はどことなく曇っていた。
「雨でも、見てたのか?」
「……空が泣いてるみたいだね」
(なんだ、このロマンチストは)
溜息を漏らしつつ、追い越しざまに缶コーヒーを握らせる。
「泣いてたのは空じゃなくて、あんたのほうじゃねーのか」
「……なにそれ。急にポエマーみたいになっちゃって。早速ペース握られちゃってるみたいだけど、きみが言っても似合ってないから」
「いやいや、日米同盟並に固い結束だし」
「どう考えてもあっちがアメリカだね」
背中合わせで悪態をついてくるのは、いつもと変わらぬ彼女だ。
「すっかり元気になったみたいじゃねーか。単純で何より」
「だーかーら、最初から泣いてないもん! あと単純でもないし」
「……太った、とか?」
「うるさい。出生時から50キロ近く増えたけどなにか?」
これは逃げじゃない。仮に逃げだとしても、戦略的撤退だ。そう言い聞かせ、俺は再び歩き出す。
久々にプラモ作りたい。
やっぱBf.109のF型が大正義、あの見た目はレシプロ戦闘機で最もカッコいいと思うんですよ




