グレーの少女の想い
アイナ視点の物語です。
私の名前は、アイナ・エール。
ユード王国の4都市をそれぞれ治める4大貴族の1つエール家の次期当主だ。
突然だが、
私はどうやら恋というやつをしてしまった…
相手は自分の名前すら分からない、記憶すらない正体不明の男だった。
その男と会ったのはエール家に依頼があり、魔獣退治のために行っていた都市外れの山でのことだった。普通は父上が行くのだが力試しという事で私自ら志願した。
しかし、
その魔獣、通称山の神は強く幾度と辛酸を味わされていた。
その日も山の神を倒す為山に向かった。
だが、
何時まで経っても現れないので歩き回るとフードを被った同い年くらいの男に出会った。
私はここら一帯には入らぬよう警告を出していたため、その男に警告をした。
しかし、男は分かっていないような曖昧な態度だった。不審に思いつつ辺りを見渡すとなんと私が探していた魔獣が真っ二つにされ血を流していた。
その男がやったのか問い詰めると、一応肯定はした。私は感心したなんであろうとあの魔獣はかなり強かったからだ。
とりあえず、
その男の素性は分からぬが相手の事を聞く前に自分からと爺さまに教わっているので挨拶をした。
そのフードの男は挨拶を返そうとしたのだろう。
フードを取った。
そこにはこのユード王国では誰もが知っている歴史上最悪の犯罪者と謳われる者しか持っているはずのない【黒髪】をしていた。
私は死神の歴史を教えられていたので、その時はかなり動揺し服まで脱ぐ痴態を晒してしまった…
しかし、
その男は私を止め、あろうことか私に気を遣い説得してくれた。
そこから話していくうちにその男は歴史の死神とは違うとなんとなくだが思った。
私一人では判断できないので爺さまに聞くことにし、家に連れて行った。
その途中の市街地で起きたことだが、
その男は私も最初に思ったがかなりの美形だ。道を通るごとに女性が振り向き黄色い声を上げる。
なぜが私は機嫌が悪くなる…
こんなこと今までなかったが…
とりあえず、
その男を家まで連れて行き爺さまに話を聞くと今までの歴史は間違いだという事が判明した。その理由を聞いて今の政府に腹が立ったがその男は気にしていなかったので私が気にするのは違うと思い気持ちを落ち着けた。
そして色々話していくと結婚の話になった。
私は額にキスされた事を思い出した。
勿論その男が意味を分かってやったわけではないが、何故かここがチャンスだと思ってしまった…
ゴリ押しの結果、
御前試合まで受けてまでくれたその男に私は惹かれているのを自覚した。
さらに、
私が提案した名前まで受け入れてくれもっと惹かれた。
まあ、
かなり私情を入れた提案だったが…
ここまでで私は確実に恋をしてるのだろう…
した事もする気も無かったが、
この男、ドンとならかまわない。
そう思っていた…
そして、
ドンは爺さまと1ヶ月間修行を始めた。
覗いたのは最初の1回だけだが、
いきなりかなり凄い事になっていた…
それからは覗いていないが、ドンは朝から日が暮れるまで爺さまと修行をしていた。
内容は分からないがいつも傷を作って帰って来た。
夕食はいつも皆で食べたが、
ドンは修行を始めた数日間はかなり疲れた様子で食事中に寝たこともあった。
「爺さま、流石にやりすぎでは?」
と、心配して言うと
「アイナよ、元々無理なことをやっているんじゃ。やりすぎはドンも承知の上じゃよ。それでも文句ひとつ言わず儂についてきてるんじゃ。なんでじゃと思う?」
私が分からずにいると、
「どこかの誰かに迷惑かけんようにって言うとったわい。記憶のない自分を助けてくれた相手の願いに応える為だと頑張っているんじゃ。」
「え、わ、私のため…」
「じゃろうな。他におらんしの?」
と、
ニヤニヤしながら教えてくれた。
「いやー、アイナ愛されてるなー」
「本当ねぇ、中々いないわよ、あんな方。」
と、
最初はドンを怖がっていた父上、母上も最近ではドンをいたく気に入っていた
「「これはもう逃すわけにはいかないな(わね)!」」
と、
勝手に話が進んでいる…
(確かにドンはカッコイイし、優しいし、強い意志を持っている男だし…)
と思っていると、
3人がニヤニヤしていた。
「アイナがそんな事言うとはのぉ」
「これはドンに感謝しないとな!」
「あらあら、私の娘がこうも可愛くなるのは意外ねぇ」
「ま、まさか声に出してた⁉︎」
「「「あぁ、確実に」」」
顔から火が出るくらい恥ずかしかった。
「じ、爺さま!
ドンの修行はどんな感じですか⁉︎」
話題をそらすために爺さまに気になっていることを聞いた。
「あぁ、アイナよ。
お前も覚悟した方がいいぞぃ…
ドンはお前が思っているより遥かに強くなるじゃろう。勿論アイナ弱いと言うとるのじゃない。ドンが凄まじい力を秘めているんじゃよ。」
「えぇ、知っています。
だからこそ、
私は彼に、ドンに惚れたのです。」
「ほっほっほ。
そうかそうか…
それをドンに言ってやれぃ。喜ぶじゃろうよ。」
「む、む、無理です!
恥ずかしくて言えません‼︎」
「本当にアイナか?」
「本当可愛らしくなったわねぇ…
ドン君に感謝どころではないわねぇ。」
「父上も母上も大袈裟過ぎです!
私も女、
それなりに恋愛に興味はありました‼︎」
「いやいやいや、
興味なしだと言ってたじゃないか?」
「興味が出てきたのはドン君に会ってからでしょう?」
「うぐ…」
本当のことだけに何も言い返せない…
「まぁ、
何にしてもドンとこれからも一緒に居たいなら御前試合気を入れないとな。不甲斐ない試合じゃと納得いかん輩も出てくるじゃろうからな。」
「えぇ、分かっています。
誰にも文句の言われない試合をするつもりです。ドンもそれを望んでいるはずですから。」
「あぁ、そうしてやってくれぃ。
じゃぁ、儂は明日に備えて寝るが何かドンに伝える事はあるかの?アイナよ。」
「えぇ、では、
闘うのを楽しみにしていると。伝えて下さい。」
「あら、
もっと熱いラブコールにしたらどうかしら?」
「は、母上からかわないで下さい!
いいんです!ドンには今は頑張って力をつけて欲しいですから!」
「これもアイナの愛の形かしらねぇ?」
「ああそうだろうな。
まぁ、
見守ろうじゃないか!」
「まったく…
私の両親は…」
だが、
確かに言う通りだな。
これが、
私の、あ、愛の形なのだろうな…
そんな毎日を過ごしていき、
ついに1ヶ月間の期間が過ぎた。
明日は遂に御前試合当日…




