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鷽替え

この話は今日のテーマという企画で『うそ』というテーマで書いたものです。


※ブログ「日々是無計画」に掲載したものを加筆訂正してます。

※GREEにて、ひねもすのたり名義で掲載したものを加筆訂正してます。

 その町には、奇妙な生き物と、一寸変わった人々が住むという。誰とはなしに、そこは妖町(あやかしまち)と呼ばれていた。



 正月も下旬の頃。又三郎は天神さまの鷽替え神事に、傘屋の娘お美雲(みう)を誘った。

 まだ正月気分の抜けきらない人々の華やかな着物が境内を賑わせ、木彫りの鷽を売る出店が軒を連ねる。

 鷽替え神事は、(うそ)という鳥の名と、「嘘」を引っ掛けて前年の厄を「嘘に変え」、吉事を呼び込む年明けの行事の一つである。

 又三郎たちはそれぞれ木彫りの鷽を一つ買い、持って来た去年の物を奉納した。

 一年ぶりに集まる兄弟姉妹たちを前に、木鷽がうそうそと(さえ)ずる。

「お二人さん、願い事は言ったのか?」

 又三郎の足もとで、傘屋の蛙がゲコ、と鳴いた。喋る度にいつか呑み込んだカラクリの虫が腹の中からリリン、と音を立てる。

 お美雲は得意気に胸を張って、「商売繁盛に決まってるだろ」と、言った。

「旦那は何を頼んだんだい?」

 胸を張ってもあまり膨らみの目立たない娘を憐れむように見つめて、又三郎はため息を吐く。

「いやなに、お前さんがもう少し娘らしくなれるようにってな……」

「余計なお世話だよ!」

「いて」

 又三郎が皆まで言う前に、お美雲の拳骨が飛ぶ。

 振り袖を(まく)り、拳を振り上げるお美雲に、又三郎は「くわばら、くわばら」と茶化して逃げ出した。

 願いが叶うのは、大分先のようである。


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