開催決定 3
食堂に着き、星二はAランチ、綾香はミートソースを注文し受け取ってから席を確保した。
「それで、何で俺なんだ?」
星二にしてみれば当然の疑問である。
「えっと……」
綾香が声を控えめにして答える。
「星二の能力がわからないから。かな?」
「……?」
能力がわからないから指名したって……何故そうなるのか理解出来ない星二。
「武闘会は去年も開催されてるから、強力な能力はみんな知ってるの。能力が知られてると言うことは対策されるのはわかるよね?」
そう言われて星二は気づいた。
「つまり、俺は転入生でなおかつ、現在進行形で能力が何なのかわかっていないから対策されにくいってことか」
「そういう事だよ」
綾香が肯定する。
「理屈はわかった……しかし、俺は能力を使えないんだぞ、素手でやるのは自殺行為じゃ?」
星二の疑問はごもっともである。
通常、能力を使う相手には、同じように能力が使えないと抵抗することも危ぶまれるくらい力の差が出る。
「そこは武闘会まで2週間あるし……ね?」
「2週間っても……それまでに能力を使えるようになれって事か……」
「……そうなるね……ほ、ほら私も手伝うから! ……ね?」
綾香が上目使いで説得してくる。
そんな綾香にドキッとしつつ、平静を装って答える。
「……そうだな、俺も能力は発現させて使えるようになりたいし、あくまで暫定で選ばれてるから、能力が使えない、もしくは弱いようなら雷牙にでも変わってもらうか」
「そいや、綾香の能力って何だ?」
「えーっと、私の能力は……そうだ! 今日の放課後って予定ある?」
いつになく積極的な綾香。テンションあがってるのかな?
「まぁ、特に予定はないな」
「それなら、私の能力を見せてあげるのと、星二の特訓しましょ!」
心なしか目を輝かせているように見える綾香がまくし立てる。
「あ、はい」
綾香が結構な勢いだったため、それ以外の回答ができなかった。
◇◇◇
時は星二と綾香が教室を出て行った頃に遡る。
二人が教室を出て行く様子を見ていたクラスメイト達は騒いでいた。
「おい、あの二人付き合ってんのか!?」
「いやいや、初めて一緒にご飯行くとこ見たし、違うんじゃ無い?」
「……くっそ。俺も綾香さんと二人で昼飯くいてぇ……」
「武闘会のパートナーになる可能性あるから作戦会議とかじゃ?」
「それにしては、少し綾香嬉しそうじゃなかった?」
まだまだ色々飛び交っているが2-Bのクラスメイト達の言い分にしては比較的まともだった。
「今度、綾香さんを昼飯に誘ってみるかなぁ……」
「断られるだけだろ」
「……デスヨネー……」
男子生徒のささやかな夢は、いつの間にか起きていた雷牙の一言で一蹴されていた。
◇◇◇
なんだかんだで昼休みが終わり、午後の授業も終わっていた。
「星二、帰ろうぜ」
「悪い、ちょっと寄ってくところあるんだ」
「そうか、それなら俺は先に帰るぜ、頑張れよ代表」
そう言って雷牙は教室から出て行く。
「……おい、雷牙! あの時寝てただろ!?」
代表と言われ慌てて声をかけるが既に雷牙の姿は教室になかった。
泣いた。心の中で大いに泣いた。
教室には星二だけしか居なかった。
クラスメイト達は授業が終わるとさっさと居なくなっていたし、雷牙もついさっき帰ったばかりだ。
綾香はちょっと職員室行ってくるから待ってて! と言っていなくなり、まだ帰ってきていない。
星二は窓を開け、そこから見える景色を眺めて考えていた。
能力を早く発現させれるようにならなければ……
……あの男を……「……―――殺すために……」
星二は無意識のうちに右手を窓の外に突き出すように持ち上げ拳を握りしめた。
「……えっ? 殺すためってどういう事?……」
「あ、綾香?」
「「…………」」
綾香の声に現実に引き戻される星二。
自分で気づいていないようだが、はっきりと星二は言ったのを綾香には聞こえていた。
そしてそのとき星二が殺気を纏っていたことに綾香は気づいていた。
そのため、綾香は何を話せばいいのかわからなくなっていた。
星二も戸惑う綾香をただ見ていることしかできなかった。
どのくらいそうしていただろうか?
二人だけしかいない放課後の教室を包む静寂。
実際の時間にしてみれば数分だったのだが、二人の体感時間はもっと長かった。
「あらあら、放課後の教室で男女が見つめ合うなんて……青春してますね」
くすっと笑いながらそんな台詞で静寂を打ち破ったのは学園長だった。
何故、星二が指名されたかの解答が出てきました。
本人は言われるまで気づいていなかったのに、前回でクラスメイト達はすぐに気づいていたようですね。
何この2-Bのクラスメイトちょっと怖い。
だってほら、無駄に訓練された感じあるじゃないですか?
それにしても、本当に星二の過去に何があったんでしょうか?
殺してやるなんて物騒な。
さて、次話でやっと能力の使用シーンが!……出てくるような出てこないような。
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