高天原学園2
星二はホームルーム中、偶然? 隣席となった鈴崎さんに謝ろうと何度も様子を伺っていた。
しかし、そんな星二の思いもむなしく、鈴崎さんと何度か目は合うものの、その度に鈴崎さんは怒ってるようだったり、慌ててうつむいたりを繰り返すだけで、謝ることができずにホームルームが終わった。
結局ホームルームで尼崎先生が何を言っていたのかを、星二はまったく聞いていなかった。
このあとの授業がどうこうと言っていた気がするのだが……
「はーい、それじゃ約束通り、1時間目の授業は北条くんへの質問や、北条くんからの質問コーナーの時間にしますよー」
尼崎先生が1時間目の授業のチャイムと共に言う。
突然の出来事に、え? 何それ俺聞いてない……と思う星二であったがクラスメイト達は騒ぎ出す。
「さすが、あまちゃん、話がわかるぅー」
「まず何から聞くー?」
「よっ! このちびっこ先生!」
「今日はこのまま授業なしにしようぜー」
もう質問したいのか、先生を罵倒したいのかが不明であるうえに、ただの願望垂れ流しの声も聞こえる。
「あまちゃんって呼ばれるのはもう慣れましたけど、ちびっこって言ったの誰ですかー!」
おいおい、あまちゃんって呼ばれることは許容しているのか。
「それじゃ北条くんは椅子を持って前に来てくださいね」
先生に促され、星二は素直に言うことを聞き、クラスメイト達の前に椅子を置き座る。
「司会進行は私がやりますね。まずは、みんなから北条くんへの質問タイムから始めます」
先生が司会になることは誰も反論しないようだ。それなりに信頼はされているのであろう。
「はーい、私から質問いいですかー?」
一人の女子生徒が手をあげる。
「西川さんどうぞ」
それを見て先生が質問を促す。
「……――――ごくり」
えっ? ごくり?
一瞬の静寂の中で生唾を飲み込む音が教室に響いた。
「ほ、北条くんは、今朝校庭で綾香ちゃんの胸を鷲づかみにしたというのは事実ですか!?」
「「「……――――ッ!」」」
今朝の一幕に対する質問にクラスメイト達は息を飲んだ。
「えー、えっと……」
星二はどう答えたものかと考えつつ、鈴崎さんの様子を見てみると、被害者であろう鈴崎さん本人はわずかに震えてうつむいていた。
そんな様子を見つつ、ホームルーム中に謝れなかった事もあり、この場で謝ることにした。
「鈴崎さん、今朝のことは俺の不注意でした、ごめんなさい!」
勢いよく頭を下げる星二、その様子を見ていたクラスメイト達は騒ぎ出す。
「綾香さんの胸を……許すまじ」
「不注意ってどうすれそんなハプニング起こるのよー」
「はいはい、みんな静かにー!」
止めないといつまでも騒いでると思ったか、尼崎先生がみんなを静める。
それでちゃんと静まるあたり、慕われているんだろうと実感できる。
「わ……私はもう気にしてませんから……」
顔を真っ赤にしつつ、そう言う鈴崎さん。
えっ? 何その反応、さっきまでの怒気はどこ行ったの?
きゃーきゃーと騒ぐ女子たちと、怒りなのか羨望なのかわからない目を向ける男子たちに見守られつつも、鈴崎さんの急激な態度の変化に驚きを隠せない星二であった。
「なんかよくわからないけど、特に問題ないってなら次俺いいっすか?」
空気を読んでないのだか、あえてそうしたのかわからないが、一人の男子が質問に名乗りを上げた。
「単刀直入に聞かせてもらうけど、能力はどんな力なんだ?」
「「「……――――ッ!」」」
クラスメイト達が再び息を飲む。
どれだけ調教されてるんだこのクラス。
「あー、むしろ皆はどうやって自分の能力を把握したのか聞きたいんだけど……」
星二は自分の能力を把握していなかったのである。
それどころかまともに能力が発現したという記憶もあまり覚えてないのであった。
「どうやってと言われてもねぇ……?」
「俺の場合は見た目ですぐわかったからなぁ……」
「私は何となく頭にイメージが沸いたし……」
どうやらクラスメイト達の反応を見る限り、普通は能力が発現した際にわかるものらしい。
この高天原学園は能力の発現者が集められている学園である。
能力が発現した者が集められている学園で、自分の能力を把握していないのは全校生徒の中でも、星二だけということになる。
仕事中ですが、上司の目を避けつつ、朝からこつこつ書いていたため、ちょっとだけ短くなっております。
本編開始といってから2話目の投稿となりますが、やっと動き始めそうな感じになってきました。