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天に唾吐き、地を駆ける一陣の星  作者: 柾木刹那
第一部 高天原武闘会
23/79

開花

 武闘会開催まであと ~3日~


「今日は随分と機嫌が良さそうだな」

「あぁ、昨日ちょっと。風の精霊(シルフィード)の有無は任せる」

「それなら、適宜使わせてもらおう」

 顔を合わせるなり、雷牙と星二はそんなやりとりを交わしていた。


 雷牙との距離は2m。この距離だと最初から風の精霊(シルフィード)を使われると、今までは見失う距離だ。

 俺の能力(メナス)は昨日まで、雷牙との殴り合いの最中に知らないうちに発現していたみたいだが、あの感覚が間違っていなければ、今日は昨日までと違うはずだ。

 

「それじゃ、5分間一本勝負、能力フリー……始めっ!」

 

 綾香の声が道場に響き渡り、雷牙を包む気配が変わる。

 案の定、最初からか。それじゃこちらも、試してみよう……――――可変する歯車(シフトチェンジ)! 

 

「えっ? うそ……」

 綾香の驚くような呟きが聞こえる。

 これまでは開始直後に風の精霊(シルフィード)の速度についていけてなく、一方的にやられるだけだったから無理もない。

 しかし、今は違う。雷牙の動きは目で追えている。俺の右側に回り込こんで蹴るつもりらしい。

 とはいえ、目で追えるといっても、雷牙の速度に付いていくのは厳しいな。なんとかガードをあげるだけで精一杯だ。

 

「……最初から防がれるとは。能力を自由に使えるようになったのか?」

「お陰様で何とか。まぁ、雷牙の動きについて行けるくらいには……なっ!」

 雷牙の疑問に答えつつ殴りかかるが、あっさりと避けられ距離が開く。やっぱり雷牙の速度にはまだ付いて行くのは難しいか。

 

「無事に能力を使えるようになったなら、ここいらで武闘会の代表をハッキリさせるのはどうだ?」

 足を止め、そう言ってきた雷牙の表情は、どこか楽しそうだ。

「日にちも無いことだしそれもいいな。能力の発現はクリアしたけど、雷牙より弱ければ俺は降りるって話しだったしな」

 どうやら俺も雷牙との決着をつけることに高揚しているみたいだな。こういう感覚を血沸くって言うんだろうか?


「雷牙。ここからは代表選抜戦だ」

「あぁ、俺も全力で行かせてもらおう」

「ちょっと、二人とも!? 何盛り上がってるの、少し落ち着いて!」

 ……――――試合「「開始(はじめ)っ!」」

「あぁもう。人の話聞かないで始めちゃってるし……」

 制止しようとする声を無視し、吼えた二人を見て、綾香は肩を落としていた。


 いくら星二が能力の発現に成功したとはいえ、風の精霊(シルフィード)の速度上昇を利用し、元々体術を鍛えている雷牙へ攻撃を当てることは難しい。

 星二は十分、雷牙の動きに対応していた。しかし、体術は互角。現在のスピードは雷牙が圧倒的に上だ。

 星二の攻撃は当たらず逆に食らってしまう。開始から2分。このまま続けば雷牙の代表は決定しているようなものだった。

 

「――――2nd(セカンド)!」

 星二の声が響く。


「2nd? ……あっ」 

 綾香は気づいたようだ。雷牙の動きについていくのが精一杯で、先ほどまでは掠るくらいだった攻撃が、声が聞こえた後は当たっていることに。

 

「……くっ。先ほどまでとは違うな」

「これでも結構……必死だぜっ!」

 

 顔を歪ませ、口元を楽しそうにつり上げた雷牙へ放った一撃は空を切る。

 雷牙の姿は約10m程離れた位置で止まっている。

 純粋な移動速度が違うため、更に移動された場合追いつけないが、構わず走り出す。


「これでも向かってこれるか? 吹き荒れろッ! ……――荒れ狂う嵐(レイジングストーム)!」

 雷牙が吼えると、二人の間を中心に台風クラスの暴風が発生し、近づく星二の体を押し戻そうとする。

「きゃっ……」

「綾香!……気絶したか。打ち所が悪くなきゃいいんだが……」

「綾香嬢には後で謝っておかなくてはな……」

 二人の様子を比較的近くで見ていた綾香は、突然の暴風で体を飛ばされ気を失っていた。

 

「それにしてもなんて風だ……」

「何を言う。現在の風速は約20m。普通なら真っ直ぐ立っていられないはずなんだが」

「これが、この前言っていた必殺技ってやつか」

「そうだ。まぁ行動を制限させるのが主な使い方になるだろう」

「解説どうも……」

 

 雷牙とやりとりをしながら考える。

 いくら可変する歯車(シフトチェンジ)で身体能力を上昇させているとはいえ、この風の中では走るどころか、真っ直ぐ歩くだけで精一杯だ。

 まだ様子を見ているとはいえ、この風を操っている雷牙の動きが制限されるとは思えない。

 俺はこのままだと一方的にやられる可能性が高い。


「気づいているとは思うが、この状況でも俺の動きは変わらんぞ」


 やっぱりか……。勝機は一瞬。雷牙が止めを刺に来たときだな。

 賭にはなるが、それはもうしょうがない。やるしかない……ギア(・・)をもう1段階上へ。

 

「そろそろ終わりにしよう!」

 迫ってくる雷牙の姿は見える。どうやら行動は制限されないだけで、移動速度が更に加速するということはないみたいだ。

「だから、どこのラスボスだよ!」

 咄嗟に雷牙の言葉に突っ込みをいれるが、頭は冷静だ。

 

 雷牙の姿はもう目の前だ。

 

 ケリを付けよう。


「……――――3rd(サード)!」


 一瞬の交錯。吹き荒れていたはずの風はいつのまにか止んでいる。


 立っていたのは、荒い呼吸を整えている星二だった。

ついに星二の能力が判明しました!

長かったような、短かったような。

みなさんはどう思いますか?


突然ですが、今後、後書きは短め、または無いときもあるかもしれません。

もし、後書きを含め楽しみにして頂いている方がいらっしゃいましたら、なるべく書きたいと思いますので、お知らせください!

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