表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天に唾吐き、地を駆ける一陣の星  作者: 柾木刹那
第一部 高天原武闘会
16/79

特訓 5

 武闘会開催まであと ~9日~


 俺は北条星二(ほうじょうせいじ)高天原学園(たかまがはらがくえん)2年生だ。

 今俺はこの学園に来てから味わったことの無い、言い知れぬ緊張と戦っていた。


「くっそ……」

 体は震え、持ち上げた拳も震えたまま動かせなかった。

 

「……星二、何やってるの? ノックしないの?」

 綾香がそんな様子のおかしい星二を見ていた。


「簡単に言ってくれる。昨日、流歌が不吉な事を言って帰ったのが悪いんだ……」

「うーん……雷牙くんなら練習相手に良いと私は思うんだけどなぁ」

 ここは男子寮306号前、つまり雷牙の部屋の前だ。

 

 昨日、星二の練習相手に雷牙を誘うという話になり、部屋の前まで来ていたのであった。

「綾香信じていいんだな?」

 真っ直ぐに綾香を見つめる。

「……うん。私を信じて……?」

 綾香が頬を染める。

 

「……二人とも、人の部屋の前で何をイチャついているんだ?」

「「い、イチャついてなんか……えっ?」」

 星二と綾香は慌てて答え、振り返るとそこには雷牙がいた。

 

「特訓の相手をして欲しくて部屋まで来たということだな」

「「……はい」」

 雷牙の部屋にあがり事情を説明するのは、何故か正座している二人。

「それはわかったが、人の部屋の前でイチャついて理由はなんだ?」

「「イチャついてたわけでは……」」

 声を揃えて反論する。

「見つめ合っていただろう?」

 雷牙は追求する。

「「……ごめんなさい」」

 素直に謝ることを選んだ星二と綾香だった。


◇◇◇


 対峙するのは星二と雷牙、綾香は離れて二人の様子を見守る。

「そう言えば聞いたことなかったが、雷牙の能力(メナス)って一体なんだ?」

 星二は準備運動をしながら聞く。

「なんだ、綾香嬢や霜月から聞いてるわけじゃないのか?」

 てっきり能力を確認した上で特訓相手に指名してきたと思っていた雷牙。

「いや、まったく……それどころか、流歌には怪我したら看病してやるって言われたくらいだ」

「ふむ……それなら能力は説明しないでおいたほうが楽しめそうだ」

「おい……大丈夫だろな?」

 雷牙の言葉に一瞬怯む。

「死にはしないだろう」

「……俺、無事に帰れるんだろうか……」

 いやな予感しかしない星二だった。


「さて、準備運動はこのくらいでいいとして、雷牙は素手なのか?」

「俺は素手でいい。それよりお前も素手でいいのか? 武器を持ってもいいんだぞ」

 きっぱりと素手宣言された上に、武器の使用を勧める雷牙。

「……安直だが、まさか雷牙の能力って雷を操るとかじゃないだろうな?」

「……どうだろうな」

 星二の不安をあざ笑うかのようにニヤリとする雷牙。

「……まぁ、本当に雷操作だったら武器が有っても無くても同じだろうし、素手でいい」

 どうやら星二は観念したらしい。


 準備運動中、ずっと二人の会話を見守っていた綾香が宣言する。

「それじゃ、始めっ!」

 

 星二と雷牙の距離は2m。

「先手必勝!」

 星二が先に仕掛ける。

「ふん。いきなり右ストレートか」

 雷牙はスウェイで避ける。

 右腕を振り抜いた星二はその勢いを使い、体を捻り左拳を雷牙の顔面へと進ませる。

「……ほう。実戦を意識した戦い方をするんだな」

 星二の拳を左手で掴み、バックブローを防御する。

「あっさり受け止めやがって……見た目なんてどうでもいい、笑いたいやつは笑えばいい……最後に立っていればいいからな」

 左手を掴まれたまま答える。

「利には適っているように思うが。少し危ういな……仕切り直しだ」

 雷牙は掴んでいた手を離し、少し距離を取りながら宣言した。


「今のところ私を相手してるいつもの感じかな? ……それにしても、星二は何を抱えているんだろ……」

 二人のやりとりを見ていた綾香の呟きは誰にも聞こえていなかった。

 

 二人の距離は3m。

 

「雷牙、一つだけいいか?」

「なんだ?」

「能力はまだ使ってないのか?」

「あぁ」

「……ったく、能力無しでこれか。こんなんで本当に武闘会出て良いのか俺」

「筋は悪くないんだがな、我流だろ? それに実戦経験が少ないように感じるな」

「……あっさりと見抜かれるものなんだな。あぁ自己流だし、実戦なんて綾香との特訓を除いたら1回しかないよ」

「それより、能力の発現は確認出来てるのか?」

「……痛いところ突くな。まだ特に実感はない」

「霜月の見立てでは実戦で発現するということだったな。試してみるか……」

「……あぁ死なない程度に頼む」

 

 雷牙を包む気配が変わる……どうやら腹を括らないといけないようだな。


「ふっ……! ―――うるぁッ!」

 雷牙の姿が消えたと思った瞬間、星二の体はくの字に曲がり後ろへ吹っ飛ばされていた。

「ぐはっ……ごほっ……何が……!」

 なんとか立ち上がろうとする星二が顔をあげるとそこには腕を振りかぶる雷牙がいる。

「……―――ちっ……!」

 舌打ちをしながら横に転がるように避ける。

「ほう……その状態で避けたか。最初の一撃は結構まともに入ったはずだが?」

「あぁ……今の食らってたら終わってたと思うくらい、正直しんどいぞ」

 関心する雷牙に答えながら立ち上がる。

 

「意気込みは認めるが……次で終わらせよう」

「はっ……どこのラスボスだよお前」

 雷牙のKO宣言に軽く答える。


「星二……」

 星二の様子を祈るように綾香見守る。

 本当に危険そうであれば止めに入ろう……そう思い竹刀を握り、いつでも走り出せる準備だけしておく。


 距離は2mと近い。

 雷牙の初撃はまったくわからなかった。

 KO宣言までされた以上、避けなければ間違いなく意識を刈り取られるだろう。

 

 骨が軋む。

 

 足が震える。


 視界の片隅に見える綾香が心配そうに見ている。

 

 ……大丈夫……能力さえ……いや、言い訳はよそう。俺は弱い。それだけだ。しかしそんなことで……

 

「いくぞぉぉぉ!」

 雷牙が吼える。


「諦めるわけにはいかねぇんだよぉぉぉ!」

 星二も吼える。


 鈍い衝撃音、一瞬の静寂、そして。


 …………ちくしょうめ……言葉にならない声を出して星二は倒れた。 

みなさんこんにちわ。

相変わらず戦闘シーンが苦手な柾木刹那です。

書いてみると戦闘シーンって難しいものですね。

これから話が進むと戦闘シーン多くなるはずなのに大丈夫なんでしょうか私?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ