表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界建築無双《BLUE COLORS》〜BIMとCADが使える俺、美少女領主に雇われ、伝説の職人たちを率いて理想の街を爆速で竣工させる〜  作者: beens
第2章:天空へ届く道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/10

第1話:辺境の摩天楼計画

「聖様、大変です! 領都の入り口に、移住を希望する人たちの長蛇の列ができています!」

 新年の静寂が明けた早朝。執務室に飛び込んできたリアナの叫び声で、俺の新年の仕事は幕を開けた。

 屋敷の修繕と道路舗装が完了したことで、この辺境の地は「呪われた土地」から「世界で最も安全で快適な街」へと評価が180度転換したらしい。噂を聞きつけた商人や職人、そして家を失った難民たちが押し寄せているのだ。

「嬉しい悲鳴だが……今のままじゃ収容能力キャパシティオーバーだな」

 俺は【スキル:脳内BIM】を起動し、領地の俯瞰図を空間に投影した。

 現状、平地の面積は限られている。横に広げれば農地を潰すことになるし、森を切り開くには時間がかかる。

「お嬢さん。これからは『横』じゃなく『縦』の時代だ」

「たて……? 上に向かって家を作るということですか?」

「ああ。『高層集合住宅アパートメント』を建てる。それも、王都のどんな塔よりも高くて、住み心地の良いやつをな」

俺が指し示したのは、BIMモデル上に突如現れた十階建ての塔――現代建築で言うところの、中高層マンションだった。

「……正気ですの? 一ノ瀬様」

 現場に現れた首席検査官のエレナが、眼鏡を指で押し上げながら呆れたように言った。

「石造りの建物を高くすれば、自重で下の階が押し潰されますわ。王宮の監視塔だって、魔法で補強しても五階が限界。それを十階……しかも、多くの人が住む集合住宅にするなんて。構造計算こうぞうけいさんが破綻していますわ」

「魔法で支えようとするから無理が出るんだ、エレナ。今回は『鉄骨(魔導鋼)』と、しなやかに揺れを逃がす『ラーメン構造』を採用する」

 俺がCAD図面を見せると、エレナは食い入るように図面を覗き込んできた。相変わらず距離が近い。彼女の甘い香りが鼻をくすぐるが、俺はプロとして解説を続ける。

「重い石を積み上げるんじゃない。強固な骨組みを作り、壁は軽い素材で仕上げる。これで荷重を大幅に軽減できる。だが……」

 俺は図面の中心、空洞になっている「シャフト」部分を指差した。

「高層化するにあたって、避けて通れない問題がある。……『縦の動線』だ」

「たての……どうせん?」

 リアナが首をかしげる。

「十階まで毎日階段で昇り降りさせるわけにはいかない。住人の満足度が下がるからな。そこで、これを作る。……『魔導エレベーター』だ」

 その言葉が出た瞬間、周囲にいたドワーフやエルフの職人たちがざわついた。

「おいおいボス! エレベーターって、あの王族しか使えない『空間転移魔法』のことか? あれは一回の起動に魔石を山ほど使う、金食い虫だぜ!」

 ガッツが驚いて声を上げる。

「いや、空間転移じゃない。物理的に箱を上下させる。それも、スライムの圧力と滑車かっしゃの原理を組み合わせた、超低燃費・高効率の最新型だ」

 俺は【スキル:原価管理コストマネジメント】で弾き出した予算案を提示した。空間転移魔法の百分の一のコストで運用可能な、市民のための垂直輸送システム。

「そんなものが実現すれば……建築の概念そのものが、ひっくり返りますわ……」

 エレナの瞳に、知的な興奮と情熱が宿る。

「さあ、着工チャッコウだ! 今回の現場は『高所作業』がメインになる。親綱おやづなの点検を怠るなよ!」

 俺の号令とともに、巨大な魔獣たちが動き出す。

 今回、新たに「協力業者」として加わったのは、巨大なハサミを持つ『メタル・クラブ(金属蟹)』の群れだ。彼らは強靭なハサミで鋼材を掴み、ドラゴンの吐息ブレスで加熱した接合部を一気に「カシメる」鉄骨鳶兼、鍛冶工の役割を果たす。

「フィラ! ハーピー隊は上空からの監視と、ボルトの供給だ! 落下物を出したら即刻、作業中止だぞ!」

「オッケー、ボス! 完璧にホールドしてあげる!」

 空にはハーピー、地上にはドワーフ、そして鉄骨の上には金属蟹。

 見たこともない異様な、だが極めて機能的な現場が動き始めた。

 俺は現場の隅に置かれた「仮設事務所」で、一人図面と格闘していた。

 エレベーターの心臓部、スライム圧制御ユニットの設計……。

「……聖様、遅くまでお疲れ様です」

 入り口からリアナが、湯気の立つスープを持って現れた。

「ああ、悪いな、リアナ。もうこんな時間か」

「いえ。聖様がこの街のために、こんなに難しいことに挑戦してくださっているんですもの。私にできることなんて、これくらいしか……」

 リアナが俺の隣に座り、スープを机に置く。少しだけ、彼女の肩が俺の腕に触れた。

ふと見ると、彼女の指先には泥がついていた。

「お嬢さん、その手……。もしかして、現場の片付けを手伝ってたのか?」

「あ……。はい。聖様がいつもおっしゃる『4S』……少しでも、お役に立ちたくて」

 領主である彼女が、自ら現場の掃除を。

その健気さに、俺の胸に温かいものが広がる。ブラック現場では、施主はいつも高い場所から文句を言うだけだった。

「……助かるよ。お前が綺麗にしてくれる現場なら、最高の建物が建つはずだ」

 俺が彼女の頭を軽く撫でると、リアナは顔を真っ赤にして俯いた。

「……竣工しゅんこうしたら、一番最初に、聖様と一緒にあのエレベーターに乗って、一番高い場所からこの街を見たいです」

「ああ。約束だ」

 静かな夜の事務所。図面の上に落ちる二つの月影。

だが、その平穏を破るように、俺の【スキル:危機予知リスクアセスメント】が、激しい警告音を鳴らした。

「……なんだ? 地下から異様な振動が……」

 俺は即座に【スキル:神の目】を地中に向ける。

そこには、エレベーターピットを掘削中のガッツたちが、意図せず「何か」に触れてしまった光景が映し出されていた。

「ボス! 大変だ! 穴の底から、とんでもねえ古代の魔力が噴き出してきたぞ!」

どうやら、高層建築の基礎工事は、この地の「眠れる歴史」を叩き起こしてしまったらしい。


今回の建築用語解説

容積率ようせきりつ: 敷地面積に対する延べ床面積の割合。高く建てるにはこれの管理が重要。

動線どうせん: 人が建物内を移動する経路。高層建築では「垂直動線(エレベーター・階段)」の設計が鍵。

• ラーメン構造: 柱と梁を強力に接合(剛接合)した構造。近代建築の主流。

• ピット: エレベーターの最下部にある地下空間。メンテナンスや衝撃吸収のために必要。

揚重ようじゅう: 重い資材を上に持ち上げること。

・ドラゴンの吐息:小型ドラゴンによる炎のブレス。本作では、火気作業実施者の肩に乗り、相番工事を担ってくれている。

更新通知を受け取りたい方は、ぜひブックマークをお願いします!

「続きが気になる」「面白い」と思っていただけたら、下の☆☆☆☆☆から評価をいただけると、執筆の大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過去作品:https://mypage.syosetu.com/mypage/novellist/userid/3017364/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ