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異世界建築無双《BLUE COLORS》〜BIMとCADが使える俺、美少女領主に雇われ、伝説の職人たちを率いて理想の街を爆速で竣工させる〜  作者: beens
第1章:辺境領地の再建

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第4話 内覧会と、魔導建築ギルドの影

屋敷のジャッキアップから数日。

 現場は今、仕上げの「内装工事ないそうこうじ」と「自主検査じしゅけんさ」の真っ最中だった。

「……よし、ここの建具たてぐの『建て入れ』もバッチリだな」

 俺は水平器を使わずとも、【スキル:神の目】で瞬時に狂いを見抜く。かつて不同沈下で歪んでいたドア枠は、ジャッキアップと精密な調整によって、指一本で滑らかに開閉するようになっていた。

「すごい……。あんなにギィギィ鳴って開かなかった扉が、嘘みたいです」

 後ろをついてくるリアナが、目を輝かせて何度もドアを開け閉めしている。その仕草が小動物のようで、つい口元が緩む。

「お嬢さん、建物ってのは水平垂直が命なんだ。外見だけ綺麗にしても、中身が歪んでりゃ住む人間がストレスで参っちまうからな」

 俺たちは屋敷の中を歩き回り、『内覧会ないらんかい』――つまり、施主であるリアナへの最終確認を行っていた。壁のひび割れはエルフの職人が練った魔法の漆喰で美しく塗り直され、魔法銀を用いた配線によって、室内には現代のLEDにも負けない明るい光が灯っている。

「聖様……。私、夢を見ているみたいです。この家も、私の心も、もう二度と元には戻らないと思っていました」

 リアナが立ち止まり、俺の目を見つめてくる。その瞳には深い感謝と、それ以上の熱い温度が混じっていた。

「……戻すだけじゃない。これから、もっと良くしていくんだ。ここはまだ、俺たちの『理想の街』のモデルハウス第一号に過ぎないんだからな」

「はいっ!」

 リアナが花が咲いたような笑顔を見せた、その時だった。

「――ほう。無許可で勝手な真似をしている不届き者がいると思えば、これほどの『まがい物』を作っていたとは」

 冷ややかで、傲慢な声。

 屋敷の玄関ホールに、場違いなほど着飾った一団が踏み込んできた。

先頭に立つのは、派手な刺繍が入ったローブを纏った中年男だ。その胸元には、天秤と杖を組み合わせた紋章――『王立魔導建築ギルド』のバッジが光っている。

「王都ギルドの……バロス監理官様!? どうしてこちらに……」

 リアナの顔から血の気が引く。彼女は慌てて俺の前に出た。

「どうしてだと? この地は『沈む呪い』により建築禁止区域に指定されているはずだ。それを、出所不明の男を雇って勝手に建物をいじるとは。これは重大なギルド規約違反……いや、王法違反だ」

 バロスと呼ばれた男は、鼻を鳴らしながら壁を指差した。

「見たまえ、この薄汚い漆喰を。魔導建築の基本である『重力固定魔法』の術式が一切感じられない。こんなもの、次の嵐で崩れ去るに決まっている。即刻、この屋敷を解体し、更地に戻せ」

「そ、そんな!? 聖様は、ジャッキアップという凄い技術で……!」

 リアナの必死の抗弁を、バロスは鼻で笑った。

「ジャッキアップ? 聞いたこともない下卑た言葉だ。魔法を使わずに建物を持ち上げるなど、ペテンに決まっている。この男、おそらくは禁じられた邪法を使っているのだろう」

 バロスの視線が、値踏みするように俺を射抜く。

 俺は一歩前に出ると、作業着のポケットから一本の「現場用赤鉛筆」を取り出した。

「……あんたが『監理官』か。ずいぶん高い服を着てる割に、その目は節穴ふしあならしいな」

「なんだと……!?」

「あんたの言う『重力固定魔法』とやらが効かなかったから、この屋敷は沈んでたんだ。俺がやったのは、魔法に頼らない物理的な『地盤改良』と『構造補強』だ。……証拠を見せてやるよ。あんた、BIMビムって知ってるか?」

「ビ……? 何を訳の分からぬことを――」

俺は【スキル:脳内BIM・プロジェクション】を起動した。

 何もない空間に、突如として青い光の立体図面が出現する。

 屋敷の断面、地中の石柱杭の配置、応力の分散グラフ、そして未来の風圧シミュレーション。

「これがこの屋敷の『真実』だ。岩盤まで届いた二十本の杭が荷重を支え、補強された梁が震動を逃がす。あんたの魔法より、よっぽど確実な証拠だ」

「な……な、な……っ!?」

 バロスは腰を抜かさんばかりに驚き、空中に浮かぶ精密な図面を凝視した。異世界の建築士にとって、建物の内部構造をここまで可視化する技術は、神の御業に等しい。

「……これは……どういう魔道具だ……。いや、認めん! こんな出所不明の技術、認められるわけがない!」

 バロスは顔を真っ赤にして叫んだ。

「一週間後だ! 一週間後、ギルドの本部から正式な『竣工検査官』を同行させる。もしその検査で一箇所でも不備があれば……この街の全住民を強制退去させ、お前を監獄へ叩き込んでやる!」

 捨て台詞を残し、バロスたちは逃げるように去っていった。

静まり返ったホールで、リアナが震える声を出した。

「ごめんなさい……私のせいで、聖様まで……」

「謝る必要はないさ、リアナ」

 俺は彼女の肩に手を置いた。

「むしろ好都合だ。ギルドの偉いさんが来るなら、俺たちの技術を認めさせる絶好の機会になる」

俺は脳内の工程表を書き換えた。

新タスク:『ギルド竣工検査の完全突破』。

「ガッツ! フィラ! 聞こえるか!」

 俺が叫ぶと、現場の外から職人たちが集まってくる。

「おう、ボス! あの成金野郎、ぶっ飛ばしてやりましょうか!」

「やらせてよ! 空からフンでも落としてやるから!」

「いや、もっといい方法がある。……野郎ども、これからの七日間、死ぬ気でついてこい。この街の『道路』と『外構』を全部仕上げる。検査官が腰を抜かして、ひれ伏すような最高の街を見せてやろうじゃねえか!」

「「「おおおおおっ!!!」」」

 職人たちの咆哮が、辺境の空に響き渡る。

 理不尽な権力、古い慣習。そんなものは、全て粉砕してやる。

ブラック企業の所長をなめるなよ。……俺の現場は、いつだってここからが本番なんだ。


今回の建築用語解説

内装工事ないそうこうじ: 建物の内部の仕上げ工事。床、壁、天井、建具などの設置。

自主検査じしゅけんさ: 監理者(第三者)の検査の前に、施工者自らが行うチェック。

• 建て入れ(たていれ): 柱や門扉、サッシなどの垂直具合のこと。

内覧会ないらんかい: 完成した建物を、引き渡し前に施主に確認してもらうイベント。

外構がいこう: 建物の外側の構造物。門、塀、舗装、植栽など。

節穴ふしあな: 見る目がないことの喩え。現場では「図面の見落とし」などを厳しく叱責する際に使われることもある。

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