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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第4章 駒姫無惨編

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秀次事件勃発

最上義光は、駒姫を嫁に出す覚悟が決まりました。そして、秀綱に駒姫の迎えを任せました。

一方で、秀次には暗雲が立ち込める展開になってしまったのです。

 秀綱は、義光に呼び出された。また、苛立ちと皮肉でも浴びせられるのかと覚悟して、秀綱は御前に出た。

「秀綱、儂は覚悟を決めたぞ」

 義光は、清水の舞台から飛び降りる決心をしたような顔つきで言った。


「最早、致し方ない。それよりも、今後お駒が関白殿下の許に行っても、困らないように手を回さねばなるまいのう」

 義光は、同一人物なのかと疑いたくなるようなほど、昨日までの態度と打って変わっていた。

 狐につままれた顔をしていたのであろう。そんな秀綱の様子を見た義光は苦笑いを浮かべた。


「於竹の方の名代を名乗る子供が、今朝門番にこの文を渡したらしい。於竹の方は、捨て子であったようだな。そのような身分の者がいる家に嫁ぐのは嫌であろうが、我らは喜んでお駒を迎えると書いてあった。本来であれば、見向きもせぬような者も大事にされる関白殿下だ。同じく家中の士や領民と交流するお駒が惹かれないはずがない。そう思った時に、儂の覚悟が決まった」

 義光は、目に迷いはなかった。

――殿のお心の準備が間に合った――

 秀綱は胸を撫でおろした。


「お主も、儂の不機嫌で振り回してしまって迷惑をかけたのう。済まぬ。内府殿や関白殿下への挨拶など諸々、よく勤めてくれた」

「何を仰いますか。臣下であれば、当然のこと」

 秀綱は、この一言で報われたように思えた。


「それでお駒の輿は、一両日にも近江に着く予定じゃ。お主が迎えに行ってくれぬか。お駒に、於竹の方の言葉を伝えてやってくれ。安堵するであろうからな」

「ははっ」

 秀綱は、早速身支度を整えて、近江に向かっていった。


◇◇◇

「関白殿下は、太閤殿下の治世を変えることを考えているらしい」

 聚楽第では、そのような噂が徐々に広がっていった。

 秀吉は、最初は気にも留めなかった。しかし、二度、三度と耳にするに及んで、徐々に心内に不安と疑いの芽が芽吹いてきたのであった。


「三成を呼べ」

 秀吉は、この日、ついに不安を払拭できなくなり、三成を読んで調査をさせることとした。


 数字後、三成は再び秀吉に呼ばれて、調査結果を述べるよう求められた。


「関白殿下は、太閤殿下の朝鮮出兵を批判しておられます」

 三成は、調査の過程で聞いた話を秀吉に報告した。小者の話ではありますが、という前置きをしてではあったが。

 

 しかし、秀吉にはその前の言葉な入っていなかった。秀次が、朝鮮の陣を批判したというところだけが耳朶に残った。

「おのれい! 太平の世を作るがための策であるのに、何も知らぬ愚か者めが!」

 秀吉の突然の激怒に三成も驚いた。詳しく調査を続けよと言われるものだとばかりに思ったいたのだ。


「されど、未だ定かならぬ者の述べた風聞であるやも知れず……」

 ここまで言って、三成は言葉を飲んだ。白濁した目に、爛々とした怒りの炎が揺れていた。こうなっては、止める手段はない。三成は、ここに秀吉の老いを感じた。


「秀次の治世を、そして、お(ひろい)|の世を作るために、儂がどんなに苦労をしておるのか。あ奴にはわからぬのか!許せぬ」

 秀吉の怒りは収まらなかった。だが、三成は知っていた。秀次が、朝鮮の陣で多大な苦労を強いられた大名を訪ねて、なだめているのを。庶民の間に入って、その言葉に耳を傾けているのを。しかし、弁護を言い出せない程に秀吉の怒りは激しかった。


「三成、関白を捉えよ!。儂の政策の意図もつかめず、むやみに批判するのは、儂への謀反に等しい!!。即刻、聚楽第を追放し、高野山に身柄を送れ!」

「ははっ!」

 三成は、その言葉に抗する術を知らなかった。


 三成は早速、五奉行の大谷義継や浅野長政らと協議した。しかし、良い案など浮かぶはずもなかった。

「これは太閤殿下の一時の感情に過ぎぬであろう。ほどなく勘気を御解きなさるであろうから、それまでの間の静養と思うて身を引いてもらうしかあるまい」 

 長政の言葉に、三成も頷くしかなかった。


◇◇◇

「太閤殿下の御意思により、関白殿下には高野山に入っていただきまする」

「なぜだ!なんの咎で私は、高野山に向かわねばならんのだ」

 三成の通告に対して、秀次は抵抗した。


「関白殿下には、謀反の疑いがございまする」

「謀反?なぜ私が謀反など。天下人になることが決まっておるのに謀反を行う理由などあるまいに」

 秀次の指摘に、三成も心では認めている。


「それは、おいおい詮議を致しまする」

「嫌だと言ったら?」

 なおも抵抗する秀次に、三成は努めて冷たく言った。

「されば、奥方様たちはお子様たちにお尋ねすることになりましょう」


 秀次は唇をかんだ。妻子を拷問にかけるのと同義語であったからだ。秀次は、怒りに満ちた目を三成に向けた。

 しばらくはその険しい視線を無言で三成に向けていた。やがて、その視線を三成から外して、聚楽第の柱の陰で、こちらを伺う妻たちの姿が見えた。


「私が大人しく従えば、妻子には手を出さないでくれるのか」

「それは、お約束いたします」

 憤懣やる方ない表情ではありながら、秀次は無言になり、三成の後を従った。


 この時、誰もが大きな事件に発展するとは思っていなかった、しかし、この日、豊臣家の天下を揺るがす秀次事件の幕が上がってしまたのである。

 

次回は、輿入れのために京に入った駒姫も事件に巻き込まれてしまいます。

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