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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第4章 駒姫無惨編

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駒姫の輿入れ 女の戦いとは

駒姫の輿入れについて、駒姫自身が受け入れの決意を語ります。

秀綱と光安の二人は、それを援護し、受け入れさせますが、義光は不機嫌の極みに陥ります。

ま、頭では断れないとわかっているのですけどね。


ただ、秀次という人物自体は、義光は嫌いではないようで、そこに救いを皆が感じています。

 秀綱たちは、湯沢城攻略の方告訴するため、山形城を訪れた。総大将の楯岡満茂は、そのまま湯沢城主として留まり、小野寺義道らの行動を監視しつつ、占領し仙北の地の領民の慰撫にあたる。

 忍びを駆使した諜報と内政手腕の優れた満茂こそ、うってつけであった。そのため、残った志村光安ととも最上義光に戦勝報告を行うのである。


 山形城に入った秀綱たちを、駒姫も出迎えた。今回の戦いでの犠牲は少なくなかった。

 しかし、出迎えた駒姫は、笑顔で秀綱たちを迎えた。秀綱たちの武将たちに被害がなかったことが救いであった。それをもって、良しとしてくれているのであろうと秀綱は思った。


 戦勝報告を受けた最上義光は上機嫌であった。そして、小野寺孫作を討った勘兵衛の話を聞いていたようで、頼もしい若武者の成長を期待するという言葉を秀綱にかけた。


 報告も終わって、秀綱と光安が退出しようとした。すると、

「秀綱と光安、この後城内にて待機せよ」

 義光から命ぜられて、小姓の案内で控えの間に入れられた。


「何事であろうかのう」

 秀綱が頭を捻った。光安は、涼し気な表情で庭を眺めていた。

「さて、話を聞いてからでもよかろう。今は、落ち着いて殿のお越しを待つとしよう」

「何か察しはついておるのではないか」

「我ら二人に内々に仰せつけられるのだ。おそらくは」

 ここまで話して、光安は黙った。秀綱も、人が歩む気配を感じた。だが、軽い足音である。義光ではなさそうであった。


「ここにおりましたか。父が無理に残したようで申し訳ありませぬ」

 駒姫であった。かつての美貌に磨きがかかっている。東国一の美女と謳われているが、その評は間違っていないと秀綱は思った。

『大喬様にますます似てこられた』

 最近はなりを潜めていた太史慈の記憶が秀綱に蘇ってくる。ただ、以前のように話しかけてくるようなことはなくなっている。ただ、槍の業などかつて自身にはなかった技量が出るようになっている。その件について、気にはなっていたが、湯沢城攻めなどにかまけて忘れていた。

――このような大喬なるお方がから信を置かれれば、応えたくもなろうな――

 秀綱は、太史慈に心で声を掛けた。反応はない。


――後で光安に尋ねてみるか――

 秀綱は、光安の横顔をみながら考えた。


「おそらく、父がお二人に相談するのは、私の輿入れの件です」

 駒姫は豊臣秀吉の後継者である豊臣秀次に輿入れすることが決まっている。しかし、義光が難色を示し、駒姫がふさわしい大人になるまでという条件で輿入れを引き延ばしているのである。

 しかし、そろそろ結論を出さねばならない時期になっているのだろう。


「姫のお考えがいかがなのでしょうか」

 光安が尋ねた。秀綱も聞きたかった。


「相手は天下人です。否やはありますまい。それに多数の側室をもつのは致し方ありますまい。後継者にこれだけ悩んだ太閤殿下を間近で見た秀次様のこと。それを避けようとされるのは普通の成り行きでしょう」

 駒姫は側室に異論はないと話した。

「それに、秀次様は、朝鮮出兵で名護屋にいる心細くしている父を度々見舞ってくれたようです。父は邪険にしていたようですが」

「その後継、殿の表情、目に浮かぶようですな」

 秀綱がボソッと漏らした言葉を聞いて、駒姫はクスリと笑った。


「でしょう。それにめげずに、秀次様は何度も父の陣中にお邪魔して、いろいろ無聊を慰めてくれたようです。最後の方は、秀次様が起こしにならないのを寂しく感じるようになったとか……。なんだかんだで父の気持ちも変わっていったようです」

 駒姫は、微笑しながら話を続けた。


「駒姫様は、異論はないのでしょうか」

 光安の言葉を前にして、駒姫は考えていた。ややあって、

「異論は……ないと言えば嘘になるかも知れません。しかし、他家に嫁ぐのは大名家の娘の運命(さだめ)。ならば、相手の殿方がどのようなわからぬまま遠くに嫁ぐより、お人柄の知れたお方に嫁ぐ方が良いとも思います」

「京であれば、殿も度々訪れましょうな」

 光安が言葉を継いだ。駒姫も頷く。


「もう1つ理由があります。先の朝鮮での戦いは、非常に厳しい戦いだったと聞いております。異国で亡くなった者たちは、その死骸さえ戻らなかったのでしょう。秀次様は、そうした異国との戦をお嫌いだと聞いております。そのようなお方の傍にいれば、もし間違ってしまいそうな場合、私が諫めることも可能でしょう。さすれば、最上の者たちに異国で骸を晒すような悲劇を食い止めることができましょう。それが、この戦乱の時代に生まれた私にできることだと思っています」

 駒姫の言葉には、強い決意が感じられた。


「姫は、そこまで考えられて」

 秀綱の言葉に駒姫は頷く。


「女子の浅知恵と思われるでしょうが、皆が命を懸けて最上家を守ってくれているのです。私は皆を守るためにできることはこれぐらいしかございません。此度の婚姻は、大名家に生まれて姫としての戦いなのです」

「決心はお堅いようですな」

 秀綱は、もはや止める術はないと感じた。


「さすれば、我らは姫の思いを達成するための援軍とならねばなりませぬな」

 光安もまた、同じように感じたようであった。


「最上家の知恵と武を担う二人の援軍、心強く感じます。では、ここで敵を迎え撃ちましょう」

 駒姫も控えの間に残って、義光を待った。


 四半刻ほどして、義光が控えの間に現れた。

 駒姫、秀綱、光安の三人が顔を上げて義光を見上げた。


 この瞬間、義光は悟った。最早覆す術はないということに。



 義光は、秀次に駒姫の輿入れを承諾し、吉日を待って山形を出発させると手紙で伝えさせた。

 また、先に準備のため、鮭延秀綱、志村光安を伴って、義光が上洛する旨も併せて伝えた。


「てか、殿は駒姫様と一緒に来なくてよいのか」

「いや、姫から断ったらしい。途中で、父が攫ってしまう恐れがあるから、と」

 秀綱と光安は顔を合わせて笑いあった。


「光安、何か言ったか?」

 義光は、馬上から先行する二人に十分すぎるほど、よく聞こえる声で叫んだ。

 秀綱と、光安の馬が驚いて跳ねるほどの声であった。


「いえ、良き天気だなと言っていただけです」

 光安がお茶を濁した。義光は終始不機嫌の極みであった。

 ことあるごとに、「お前らがお駒に賛同するから」とか、「お駒に簡単にほだされおって」と愚痴られる羽目になってしまった。秀綱と光安にとっては、苦痛の旅路であった。


「ま、京につくまでの辛抱よ」

 秀綱と光安は、こうして互いに支え合った。京に着けば、婚礼準備と称して、家康の邸宅などに避難できる。秀綱は、密かに家康邸に手紙を送った。家康からは労いの言葉と、良ければ当家で義光殿を持て成すという言葉までもらった。


「このまま、婚礼終わるまで家康殿に押し付けたいなあ」

 光安のため息と愚痴に、秀綱も共感し、同意した。


 義光、秀綱、光安、それに気を遣う供の者たちの苦痛に満ちた上洛の旅路は、まだしばらく続いていくのであった。

 

受け入れ側の秀次は大喜び。


挨拶に来た秀綱と光安を歓待します。

しかし、そこで秀次が話した一言が、大きな騒動を起こすことに繋がってしまうのです。

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