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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第3章 湯沢城攻略編

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孫作からの引き出物

湯沢城の戦い、終盤。

湯沢城の城主となった孫作からは、八柏道為の記した軍略書を渡されます。


そして、湯沢城兵は、純粋に孫作のために戦いに身を投じていきます。


決死の湯沢城兵は、秀綱の軍を圧倒します。押された秀綱は、自身が孫作と戦おうとしたとき、勘兵衛が孫作との戦いを決意し、槍を交えます。

 日が昇ってきた。周囲には明るさが満ちた。

 湯沢城本丸は、櫓のほかに延焼はなかったようだ。

 

 秀綱は、静かな湯沢城本丸に警戒をしていた。三の丸の虎口は、秀綱の管理下にある。周囲の櫓も抑えている。ただ、、三の丸は、二の丸からの攻撃には、当然防御力は有していない。占領されたら、二の丸から三の丸を攻撃することを想定して作っているからだ。


 二の丸の木戸門が、静かに開けられたのは、巳の刻(午前10時)であった。

 中からは、足軽200名ほどと、甲冑を着けた武者が10名 すべて徒歩で出て、三重の列を作った。


 秀綱は、弓鉄砲を構えるように命じた。だが、それだけで、湯沢城兵に動きはなかった。

「連中、何を考えてるんでしょう」

 白石綱元が訝しむ声を出した。秀綱も、その意図が分からず、首を捻るだけであった。


「最上軍副将 鮭延典膳殿に申し上げる!」

 昨日と同じ真紅の甲冑を纏った孫作が、木戸門の中から出てきた。手には、違い鎌十文字槍を携えている。


「此度、湯沢城城主に就任した小野寺孫作である。就任の挨拶に参上した次第だ」

 孫作は、大声で秀綱たちに伝えてきた。


「確か、城主の孫七郎は大病だと噂があったな」

「まさか、死んだのか」

「昨日の出火も何か関係が」

 秀綱軍の将兵が、噂をしあった。


「静まれ! 新城主殿の口上を聞こうではないか」

 秀綱の一括で、皆黙った。



「はっはっは。秀綱殿、感謝する。左様、今日未明、先の城主 小野寺孫七郎は亡くなった。そして、私が城主になった」

 

 秀綱は、はっとした。ということは、早朝の火は、荼毘に付した火だと理解した。


「左様でござったか。では、新城主就任に何を送ればようござろうか」

 秀綱の言葉を孫作は笑って受けた。


「おう、お心遣い感謝いたす。されど、ここまで来てくれただけで十分にござる。むしろ、我らから引き出物をお渡し致そう。誰ぞ我がもとに取りに参るがよい」

 孫作の申し出に、秀綱軍は困惑した。多勢で向かうわけにもいかず。かといって、相手の意図がわからぬと言えど、城主の身分に対して軽輩を送るわけにもいかない。秀綱も孫作の意図が図れず、指名できないでいた。


「殿、某が孫作殿の許に参りましょうぞ」

 勘兵衛が名乗り出た。


「危険ぞ」

「いえ、あの方は騙し討ちなどは致しますまい。もし、そうされれば、我らが見誤っただけのこと」

 勘兵衛は、孫作と言う人物を信頼しているようだ。秀綱も同感であった。


「よし、孫作への伝言を伝える。新城主就任を寿(ことほ)ぐ。先の者たちは、横手に無事についた、とな」

「はっ!」


 勘兵衛は、槍と刀をおいて、孫作の許に向かった。孫作は微動だにしない。勘兵衛はの甲冑がこすれ合うガチャガチャというビビり音だけが、両軍の間に響いた。

 勘兵衛は、孫作の許に着くと、片膝を突いて一礼をした。


「我が主 秀綱よりの言葉でござる。孫作様の新城主就任を寿ぎ申す。なお、横手に向かった者たちは無事に着いたとの由にございます」

 勘兵衛の言葉を聞いた湯沢城兵たちは、皆歓声を上げた。孫作も満足そうに頷いた。


「挨拶痛み入る。されば、我らから引き出物を渡したい。受け取ってくだされ」

 孫作は、風呂敷包みの一式を勘兵衛に渡した。勘兵衛は、丁重に受け取った。


「我が兄、孫七郎も加筆している八柏道為の記した軍略書7巻だ。城に置いておいても灰になるだけ。ならば、誰かに役立ててもらいたいゆえ、貴殿に託す」

 孫作は、勘兵衛に語り掛けた。勘兵衛も、しっかと書物を抱いた。


「我らが軍師 志村光安殿に届けたいと存じます」

「それがよかろう。あの者なれば、役立ててくれよう。感謝する」

「では、これにて」

 引き返そうとする勘兵衛を孫作は止めた。


「お主は、500名が落ちた際に、北の陣にいて、監視しておったな」

「左様でございますが」

「あの中には、我が娘がおってな。もし、横手を追われてしまったならば、お主が助けてやってくれまいか。もちろんできればでよいのだが」

「それは、いかなる意味でございますか」

「あれは、親の私が言うのも何だが、できた娘でな。500の兵を死なせないために、娘の護衛をしてくれと命じて退去させたのだ。だが、私がいなくなれば、誰かに害されるやも知れぬ。助けてやってほしい」

 勘兵衛は考えていた。長考していた。孫作も、真剣に勘兵衛を見つめていた。


「孫作様の娘御ともなれば、素晴らしきお方だと思いまする。乱世ゆえ約束はできませぬが、叶うならばお助けいたしましょう」

 孫作は、晴れやかな顔をした。


「左様か。されば、お主にも引き出物を渡さねばなるまい。こんな城ゆえ、さしたるものはないが、この槍をお主にお渡ししよう」

「真でございますか」

 勘兵衛は眼を見開いて驚いた。孫作は頷いて、肯定した。


「されど、この使い方をお主は知るまい。この後の戦いで、学ぶがよい」

 孫作の言葉に、勘兵衛は今度は俯いた。


「やはり、戦わねばならないのでございますな」

「左様。新しき時代を迎えるにあたっては、最上に鞍替えするも一つの手であることはわかっておる、されど、どうにも座り心地が悪そうでな」

 孫作はここまで言って、勘兵衛に背を向けて、引き返した。


 勘兵衛も、その背に一礼して、秀綱の許に戻った。


 勘兵衛の話を聞いた秀綱は喜んだ。

「勘兵衛、嫁取りが決まったな」

「殿、そのようなことでは……」

「いや、奴らしい。嘉蔵に命じて、その娘のことを守らせよう。彼の名将の血筋を絶やしてはならん」

 秀綱は、真剣であった。


「孫作は、真摯なお主を婿に欲しがったのじゃ。名誉じゃぞ。儂も、似合いだと思うておる。儂が、是が非でも領内に連れてきてやるわ」

 秀綱が熱く語っている横から式部が入ってきた。

「その前に、敵兵との戦いがあることをお忘れなく」

「わかっておるわ、式部。孫作の思いを受けるべく、こちらも全力で相手を致そう」

 秀綱は、書物を兵に託して、光安の陣に届けさせた。そして、使いの兵が大手門を通ったのを見て、太鼓を一つ打たせた。合戦準備完了の合図であった。


 

 湯沢城側も、太鼓をドーンと長く打った。そして、互いの開戦への意思を交わしあった。しばしの静寂が、両軍の中に訪れた。緊張感が高まってきた。


 先の静寂を破ったのは、湯沢城側であった。列に並んだ将兵が、一歩一歩近づいてきた。

 太鼓の音は短い連打であった。やがて、その打撃音が強くなり、湯沢城兵が駆けてきた。秀綱側も、兵を繰り出して応戦した。前線では互いに斬り結び、槍でせめぎ合う白兵戦にいきなり突入した。


 秀綱の軍から何名かが、湯沢城側の列を突破した。列から距離を取る孫作に攻めかかった。

 だが、皆が知ることになった。孫作が兵から距離を取ったのは、思う存分槍を振るうためであることを。


 最初に孫作に斬りかかった兵は、瞬時に喉を突かれた。次にかかった兵は、足元を柄で掬われ、転ばされた。その隙に三番手の兵の喉を掻き切り、倒れた兵の顔面を石突きで破壊した。

 複数に囲まれると、槍を振り回して間合いを遠ざけた。一足一刀のあるいは一槍の間合いを超えた相手を、近い方から順に相手にした。槍で突き、槍で斬り、槍で潰す。


 真紅の甲冑は、血塗れになることを前提としてものであった。そして、憤怒の面頬(めんぼう)は、修羅の地に立つ不動明王に見えた。少数の列を突破した兵たちは、その先に立つ孫作に恐れをなして斬りかかれずにいた。足を止めた兵は、背後からの城兵の攻撃を受ける。城兵と戦っている秀綱の兵たちは、今度は孫作の餌食となった。


「何でこんな猛将が、名前を知られていなかったんだ!?」

 秀綱たちの将兵が当惑の声を上げた。

「当たり前だ。孫作様は、他人や部下に手柄を上げさせて、自身の功績には興味がなかった。だから、他国ではいや、自国でも知られていないんだよ」

「孫作様の本気の戦いを見られるなんて、眼福じゃあ!」

 こう叫ぶ敵兵を秀綱や勘兵衛たちは、突き崩した。


「尾坂刑部 先に参ります!」

「和田幸兵衛 おさらばです!」


 討たれた兵たちは、前日のように名前を叫んで倒れて行った。その度に、孫作の戦意は高まって、秀綱勢を討つい、いや刈っていく。


――あいつは、化け物か――

 秀綱率いる最上兵の犠牲は増えていくばかりであった。

 秀綱は自身が孫作を止めねばならぬかと突出しようとした。しかし、それよりも前に孫作の前に立った者がいた。勘兵衛であった。



「鳥海勘兵衛、参ります」

「来たか、勘兵衛殿。さて、我が首、我が槍を取れるかな」

 勘兵衛も、孫作も槍を構えた。


 秀綱は、列を突破した兵に命じて、二人の周りに邪魔が入らないように散り囲ませた。

次回も湯沢城の戦いが続きます。


お楽しみください!

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