表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第3章 湯沢城攻略編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/86

孫作と秀綱の激突

湯沢城の戦いは、緒戦が開戦しました。

誘い込まれた最上軍先鋒が、大打撃を受けた後、孫作も出撃


勘兵衛のところに向かってきます。


そして、秀綱と孫作の激突も勝負がつかず、この日は引き分けます。

 秀綱は、ゆっくりと向かってくる孫作を認めた。勘兵衛は、槍の穂先を孫作に向けている。しかし、穂先は震えが見られる。勘兵衛自身にも、体に要らぬ力が入っているのがわかった。


――いかんな、このままでは、孫作には全く歯が立つまい――

 秀綱は、槍を手にして勘兵衛と孫作の許に走った。


◇◇◇


 勘兵衛は、荒い息をしていた。孫作の真紅の甲冑が、大きく迫ってきた。

「せええい!」

 勘兵衛は、急ぎ槍を繰り出した。孫作は、勘兵衛の突きを難なくいなした。その衝撃が激しく、勘兵衛の槍は弾かれ、勘兵衛は地に倒れ伏した。


「やられる!」

 勘兵衛は、孫作からの攻撃を覚悟した。だが、孫作は立ったままで、動かなかった。


「そんなに力んでいては、簡単に討たれてしまうぞ。若武者殿よ」

 勘兵衛を見下ろす孫作の声は、思いのほか優しかった。


「勘兵衛、無事か」

 秀綱が駆けつけてきた。勘兵衛は頷いた。


「秀綱殿か、よい家臣をお持ちだ」

 孫作は、秀綱にも同様の、優しく親しみの籠った声で話しかけた。戦場には似つかわしくない声であった、


「当り前よ、これは、わが自慢の家臣だ」

 秀綱は、力強く言った。


「だろうな。まっすぐな良い若武者だ」

 孫作は、変わらぬ声で応えた。


「だが、腕はまだまだのようだな」

「仕方あるまい、経験が少ないのだからな」


 孫作と秀綱は、槍を向けあい、間合いを取りながら会話を続けている。


「ならば、我らが手本を見せてやろう」

「将を討ち取る作法まで含めてな」

「ぬかせ!」

 孫作の鋭い突きを、秀綱は左に身を翻して躱した。

 秀綱は、体制を立て直して、すぐに右片手で槍の絵を掴んで、孫作の顔めがけて突きを出す。

 孫作は、秀綱の槍を下からはじき上げた。秀綱の槍が弾んだ。

 孫作は、石突で秀綱の胴を狙う。秀綱は、身を翻して一撃を躱した。

 ここまでして、互いに間合いを離して、にらみあいになった、


 激しい攻防が瞬時のうちに行われた。それなのに、秀綱も孫作も息が乱れていない。

 勘兵衛は、猛将ともいえる二人の攻防に目を奪われた。


「勘兵衛、後ろだ」

 秀綱は叫んだ。勘兵衛が振り返ると、槍を持って突進してきた敵兵がいた。勘兵衛は、咄嗟に左に躱した。敵兵は、急な動きに合わせられず、倒れ伏した。

 勘兵衛は、止めを刺そうとしたが、その一撃を走ってきた孫作に脇から槍を入れられ止められた。


 「すまぬな。無粋な真似だが、こやつも私の大事な兵なのでな。討たせるわけにはいかんのだよ」

 孫作は、すまなそうに言った。憤怒の面頬越しの目は、微笑んでいた。


「さて、秀綱殿よ。かつての若き折の訓練の日々を思い出せた。懐かしい。楽しい日々であったな」

 孫作は、兵に引き上げるよう目で促し、秀綱に語り掛ける。その目は、遠い目をしていた。


「全くだ。叶うならば、この日々をまた送れるようになれれば文句はないのだが……。それは無理なのであろう」

 秀綱の問いかけに孫作は頷いた。


「あの、」

 勘兵衛は、孫作に声をかけた。孫作は振り向いた。その目は、決してこちらに憎しみや殺意を向ける敵将のそれではなかった。何事か、との問いの目を勘兵衛に向けていた。


「この轟音の策があるならば、なにゆえ、我らをここに誘い込まなかったでしょうか。先陣に入るなと、某に伝えてくれたことで、我らは先陣に入らなかったわけですが」

 勘兵衛の質問を、秀綱は目で制した。それは、最上軍の作戦上の機密にも通じるものであった。だが、孫作は笑っていた。


「好ましいまでに真っすぐよな。よし、お主に免じて話してやろう。お主に先陣忌避を進めた理由は、秀綱たちをこんな策で討ちたくはなかったことと、裏切り者に鉄槌を下してやりたいという思いが強かったこと。この2点だな」

 孫作は、指で2の字を示した。


「それで、念願は果たしたのですか」

 勘兵衛は、孫作に話しかけた。孫作の敵将らしからぬ雰囲気に、緊張が解けているのに勘兵衛は気づいた。


「さて、な。この策は、わが兄の孫七郎の策であるゆえな。私は、正直、この策は取りたくはなかったのだが、八柏の恩を受けながら、それを踏みにじった裏切り者を許せぬ気持ちはわかるから、止めはせなんだわ」

「しかし、この策はド派手だな。城の火薬をすべて使ってしまったのではないか」

 秀綱は孫作に問いかけた。孫作は、苦笑して頷いた。


「その通りよ。だが、我らにはこれだけの火薬は無用であるからな。どうで、数日の命である我らには、な」

 孫作は、ここまで話して城兵に引き上げの合図をした。城兵は急ぎ城に引き返した。


「我らは、三の丸を放棄する。中には、裏切り者たちの死骸が溢れておるゆえ、埋葬など頼む、できれば、我らの兵の死骸も併せて弔いを願いたい」

「心配無用だ。我らに任せよ」

 秀綱は、請け負った。孫作は、感謝して引き上げていった。退却の間際、孫作は振り返った。


「今日の戦は、裏切り者を滅するが目的の戦いであった。されど、明日からは違う。今後は、最上軍と我らに死闘になろう。心せよ。今日の我らの戦いを覚えておけよ。若武者殿」

――遊びは終わりだということか――

 勘兵衛は、最後に自分たちに向けられた殺意が、本格的な戦いの幕開けになるのだと理解した。


「孫作は、今日の火計に納得していなかったのだろう。明日からは、孫作の戦いになるぞ」

 秀綱の言葉を勘兵衛は頷いて聞いた。

 

◇◇◇

 孫作は、本丸に引き上げてきた。孫七郎は、布団から身を起こして、孫作を迎えた。


「寝ていろ、兄者」

 孫作は、孫七郎を気遣った。

「そうはいかん。お主をわが策に不承不承従わせたのだ。寝て迎えるなどできん」

 孫七郎は、蒼い顔に精いっぱいの笑みを浮かべて、迎えた。


「兄者の策は、見事にはまったぞ」

 孫作は、元気づけるように強い口調で言った。孫七郎は、首を横に振った。


「本当は、最上家の重臣を屠るつもりであったのだがな。要らぬ世話を焼いた奴がいたらしいな」

 孫七郎は、恨めしい顔で孫作を見た。


「なんだ、兄者はやっぱりお見通しか。わっはははは」

 孫作は、高らかに笑った、孫七郎は、ため息をついて、布団に横になった。


 湯沢城本丸は、二人だけしかいなかった。

 孫七郎は、肺病にかかっている。

 二人は、静かな時を過ごしていた。

次回は、湯沢城の兄弟の最期の時を描いていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ