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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第3章 湯沢城攻略編

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虎口の罠

湯沢城の戦いが始まりました。


開戦と同時に、先鋒は湯沢城の虎口で壊滅し、二陣の秀綱と孫作の戦いになります。


そして、勘兵衛も孫作と槍を交える……前まで! です。今回は。

 早暁、一番太鼓が鳴った。食事の開始の合図である。

 日が上がり始め、周囲の闇を光が侵食し始める。二番太鼓が鳴った。甲冑を着始めて、武具も手にした。

 周囲の者の顔が認識し始める。三番太鼓が鳴った。先鋒の西馬音内衆が、湯沢城大手門正面に集まった。


 静寂が湯沢城周辺を支配した。しかし、その静寂は、すぐに破られる刹那の静寂だった。


 秀綱は、先鋒の後ろの二陣に控えていた。数を恃む先鋒は、功を立てようと躍起になっている。前のめりの姿勢で、攻撃返しの合図を待っている。


――危ういな――

 秀綱は、いざの時に備えて、周囲の手勢に知らせた。


「いいか、開戦しても突っ込むな。先鋒が崩れた際に、すぐさま打って出られるようにその時を待て」

 秀綱の支持に、勘兵衛、綱元、式部は頷いた。


 辰の刻(午前7時)、太鼓が乱打された。総攻撃開始の合図である。西馬音内衆ら、最上に降伏した将兵を編成した先鋒700名が、湯沢城大手門に向けて吶喊した。城壁から、弓と鉄砲が乱れ撃たれた。十数名が倒れたが、その被害をものともしない多勢が、怯まずに門に殺到した。


 先鋒を束ねるのは、西馬音内衆の野々垣玄蕃(ののがきげんば)であった。漆黒に青糸縅(あおいとおどし)の甲冑、兜は鯰尾(なまずお)の兜、身の丈六尺(約180センチ)の長身で十文字槍を指揮に使って、兵士を突進させるべく大声を上げていた。

 

 城壁からのまばらな銃撃、射撃を受けながらも、先鋒は難なく城門にたどり着き、破城槌を振るって門を破壊にかかった。城側からの出撃はなく、駆け付けた兵士たちへのまばらな遠隔攻撃のみで、攻城側の末尾の兵に、わずかな損害を与えるばかりであった。


「わっはははは! わずかな守備兵では満足にも戦えぬと見える。かかれ、我らが一番乗りの武功ぞ!」

 玄蕃は、叫びながら味方を鼓舞していた。


 ドガッ!という鈍く大きな音が響いた。城門の閂をへし折ったようであった。

 ギギギギギーッという不快な音を上がった。先鋒衆が、大手門をこじ開けた。


「かかれ!城を占拠せよ。小野寺の連中を皆殺しに致せ!」

 玄蕃の声に、先鋒の兵たちは士気高く、城門に内に入っていった。200から300の兵が城内に侵入した、その直後であった。


 ドオオオオオン!という轟音があたりを揺るがした。巨大な火柱と黒煙が上がった。

 

 秀綱は、焦げ臭さに眉をしかめた。肉や髪の焼ける臭いであった。城の図面であれば、大手門の先は三の丸の虎口である。その虎口の中で、惨劇が起きたのは疑いようもなかった。


「火薬を爆発させたのでしょうな。中に敵を誘導して」

 式部が呟いた。秀綱も黙って頷いた。


「絶対に先鋒に加わるなというのは、この策があったからか」

 勘兵衛も呟いた。顔には、驚愕の色が出ていた。


「お主が孫作から聞いてくれたおかげで、我らはあの惨事を免れることができた、だが、安堵致すな。これから、本当の戦が始まるぞ」


 城門内に入った兵の生き残りであろう。髪や服が燃えている兵が、門外に出てきては火を消そうとして地面にもんどりうっている。味方の兵も叩いて消そうとするが、なかなか消えなかった。同様の兵士も中に多数いるだろう。悲鳴とうめき声が、離れている秀綱たちにも聞こえてきた。


「阿鼻叫喚の地獄とは、まさにこのこと」

 綱元も顔を青くして、先鋒を襲った惨劇を見ていた。



 城側から、太鼓が乱れ撃たれた。

 城門の近くにいた兵たちが下がった。逃げだした。味方の火を消すなど留まっていた兵が、打って出た湯沢城兵に続々と討たれた。逃げだした兵も、足早の兵に追い縋れて、討たれた。


「打って出よ!」

 城内から、閻魔の如き咆哮が聞こえた。その声に、秀綱も、勘兵衛も聞き覚えがあった。

――来たか、小野寺孫作――


「我らも出るぞ!鬨の声を上げよ!!」

 応!応!という鬨を兵士が上げた。


――士気は低くない――

 秀綱は胸を撫でおろした。


「いいか!敵は見ての通り、尋常じゃねえ! 一人相手に二、三人でかかっても恥じゃねえ。とにかく功に逸るな。焦るな。よいか!」

 応! 秀綱軍全兵士が、応じた。


「かかれ!」

 秀綱の号令に、鎖に繋がれていた猛獣が、解き放たれた如く、疾駆した。


 城側からも続々と兵が打って出た。白兵戦が、各所で展開された。一進一退の攻防であった。


――城側の突撃をまずは食いとめることができたか――

 秀綱は、軍の崩壊を抑えることができて、まずは安堵した。


――だが、このままじゃ済まねえだろうな――

 秀綱は、城門を見やっていた。このまま、兵だけが打って出て終わりのはずがない。この戦場に誇り高き孫作が、やってこないわけがない。秀綱も、勘兵衛も、それを確信していた。


「皆の者、先に逝っても待っておれよ!待ち合わせ場所は、六道の辻ぞ!」

 大音声が聞こえた。城内から、馬に乗った武者が出てきた。深紅の甲冑に、倶利伽羅剣の前立ての兜、違鎌十文字の槍に、憤怒の面頬を装着していた。

 地獄の辻に現れた不動明王の如き姿であった。


「ようこそ、最上の兵よ。湯沢城副将 小野寺孫作推参せり!」

 叫ぶや、孫作は馬を走らせ、突進してきた。それを見て、湯沢城兵も孫作の周囲に集まってきた。


「死ねや!死ねや!者ども! 殿を守って死ねば、それは敵将を討ったに等しき武功ぞ!」

「殿の武の舞を身近で見るべし!敵に邪魔させるを許すな!」

 

 湯沢城兵は、口々に叫んで、孫作のもとに集った。一丸になって、秀綱たちの軍に突進してきた。


外内喜内(とのうちきない)!お先に!」

米野清六(こめのせいろく)さらばじゃ!」


 討ち取られた兵の多くが、最期に名乗りを上げた。孫作への挨拶であった。孫作は、一人一人の声に頷いていた。


 その一方で、孫作は槍を振るって、戦った。向かってくる将兵を全て、槍の餌食にしていった。勘兵衛が驚いたのは、その槍さばきであった。孫作は、決して槍を突くだけの武器にしていない。相手の顔面に穂先を突き出し、躱されたとみるや、すさまじい速さで引きよせた。その際に、鎌の刃で首の動脈や静脈を斬る。


 倒れた兵は、首から夥しく出血する。


――血の霧を湧かすというのも、あながち嘘ではなかったのだな――

 

 勘兵衛は、震える手で槍を持っていた。武者振るいであった。体に力が溢れた。


 孫作が、秀綱の本陣に迫った。敵兵も、100ほどいた兵が、60程度まで減っていた。だが、突進の勢いは止まらない。孫作が、秀綱の本陣に迫った。秀綱は落ち着いている。鷹揚に槍を手にして、振り回している。

――殿の落ち着きようといったら何だ!それに引き換え、俺は!――


 勘兵衛は、自分でも要らぬ力が入っているのがわかった。雑兵程度はこれで討てても、孫作と対峙するなど程遠い状況であった。


 孫作が、勘兵衛に視線を向けた。馬を返して、孫作は勘兵衛に向かってきた。

 勘兵衛も槍を構えて応戦の格好を見せた。


 一昨日の晩にやってきた涼やかで高潔な武将が、眼前の不動明王の如き烈将であるとは、勘兵衛は信じられなかった。



 

そして、次回は、孫作と勘兵衛の戦いが始まります。

今のままでは、勘兵衛が討たれるは必定

秀綱はどう動くのか


次回もお楽しみください

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