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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第3章 湯沢城攻略編

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湯沢城からの使者

湯沢城側から、軍使が来ます。

城攻めを前に、使者が来るのはままありますが、決して卑屈にならない使者に対して、秀綱の側近の鳥海勘兵衛は、敵ながら敬意を抱きます。

 秀綱たちは本陣で軍議をしていた。いかに犠牲なく、城を落とすか。城の構造は、満茂が熟知している。そこで、城側の小野寺孫三郎、孫作兄弟の性格を、光安や知りたがった。


「孫三郎は、知略に優れた将で、弟の孫作は武勇並外れた武将です」

 秀綱は、二人のことをそう伝えた。


「だが、二人の名は寡聞にしてあまり聞いたことがないが」

 光安は、首を捻った。


「それは、二人が、特に孫作が武功に全く興味がないからだ。部下に手柄を譲るような奴だった。将を討ち取るのではなく、そのための道を作るような奴だ。だから、近隣にはあまり名前が出ない」

 秀綱は解説した。


「では、その武勇はいかほどだ」

 満茂が、重い口を開いた。それが、この戦いの要諦だと踏んでいるのだろう。


「はっ、某も孫作の戦う場面を見たことはございませぬ。ただ、谷柏の兵たちに聞いたら、孫作は『仙北の小覇王』ともいわれる程であるとか」

 秀綱は、『小覇王』と口にした時、軽い頭痛を感じた。己の中にある太史慈が、疼いたのを感じた。

 光安も、その言葉に反応したが、黙ってくれていた。


「それは、三国志を喩にした虚仮脅しの異名ではなくてか」

 満茂が、再び問うてきた。珍しい。秀綱は、頭を横に振って否定した。


「それは兵たちが言い出したこと。その名に恥じないほどの名将だと、口さがない兵たちが認めた者ほど恐ろしいものはございますまい」

 秀綱は、孫作を称えた。


「某も噂は聞いたことがあります。孫三郎のことを調べる際にですが、孫作が戦場に向かうところ、血の霧が舞うと言われているとか」

 光安が、付け加えた。秀綱はそれも肯定した。


「失礼いたします」

 鳥海勘兵衛と白石綱元が、帷幄に入ってきた。秀綱は、二人に何事かと問うた。


「はっ、湯沢城から白装束の軍使がお一人、面会を申し出ております」

 勘兵衛の言葉に、秀綱たちは顔を見合わせた。


「降伏の使者であろうか」

 満茂が、腑に落ちない様子で呟いた。


「いや、斯様なことはございますまい。あれだけの戦いで、降伏するとは思えませぬ。むしろ、城側の要望をこちらに伝えにきたのではないかと」

 光安もつかみきれない様子であった。


「いずれにせよ、会ってみねばわかりますまい。通してようございますな」

 秀綱の言葉に、満茂も頷いた。


「通せ。その後、綱元と勘兵衛も残って、使者との会見の場に残れ、万一に備えてもらいたい」

「はっ」

 綱元と勘兵衛は、帷幄を離れて、使者の許に向かった。



「ご使者殿をお連れ致しました」

 綱元に従って、使者が帷幄に姿を現した。確かに白装束であった。覚悟を決めての使いであることは、最上軍全軍に伝わった。


「うっ!」 

 秀綱は呻いた。驚いた。満茂と光安は、秀綱を怪訝な表情で見た。


「ああ。秀綱殿がおられるなら不要かと存ずるが、一応礼儀にて名乗り申す。某、湯沢城副将を務めており申す。小野寺孫作と申します。以後、お見知りおきを」

 孫作は、長身で堂々として体躯であった。そして、整った顔立ちと白い肌、優し気な目をしている。一見すると、優男である。血の霧で舞うが如き雰囲気を微塵も感じさせなかった。


「副将が自ら軍使と驚きました。して、用向きはなんでござろうか。降伏開城ならば、我ら喜んで貴殿ら 

を迎えまするが」

 光安が涼し気な声で、孫作に話しかけた。


「それは真にありがたきお言葉でございます。かつて、小野寺家でともに過ごした秀綱殿が、最上家に移ってからの活躍をしっておりますゆ、その言葉に嘘はございますまい。誠、最上家で働ければ、素晴らしいなとは思いまする」

 孫作は、気味悪い程に最上家を称えた。


「しかし、それは断り申す。秀綱どのような国人であれば、我ら谷柏の者は、おいそれとは敵に降れませぬ。特に、我らの伯父御を謀殺した最上家には」

 言葉の最後に向かうにつれて、孫作の言葉には怒りの色がにじみ出ていた。その矛先は、光安に向けられていた。おそらく、発案は光安であると孫作は看破しているのだろう。だが、当の光安は平然とその怒りを受けとめている。


「はて、面妖な。そも道為殿の死は上意討ち。その命は、小野寺義道殿が下したもの。我らを恨むは筋が違うかと」

「わっはははは。まさしくその通り。だが、愚かな殿を追い込み、たきつけたのは貴殿らであろう。ま、それに乗せられる我らが殿が情けないだけの話なのだがな」

 孫作は、光安への怒りの色を解いた。


◇◇◇


――まさか、この方が、敵の副将 小野寺孫作だったとは――

 会見を秀綱の脇で聞いていた勘兵衛は驚いた。



「ご使者殿、御大将がお会いになるということです。ご案内いたします」

 勘兵衛は、孫作に丁寧に語り掛けた。孫作は、少し驚いたような顔をした。


「ご使者殿、いかがなされた」

「いや、もっと乱暴に扱われると思っていただけに、貴殿のように威勢を誇りとするような若武者殿にここまで丁重な言葉をかけられるとは意外でございましたゆえ」

 孫作は率直な感想を伝えた。


「私は、軍使というのは、味方だけでなく、敵を信じて身を委ねる覚悟がいる。その勇士を、無碍に扱ってはならぬと、主君に言われておりますゆえ」

「左様か」

 孫作は、笑顔で頷いた。


「貴殿の主君は、鮭延殿でござろうか」

「左様でございますが」

 勘兵衛は、孫作が秀綱を知っているのが意外だった。


「貴殿のご尊名を伺ってもよろしいか」

 勘兵衛は、ただならぬ高貴な雰囲気を感じさせる孫作に興味を抱いた。


「はっ、鳥海勘兵衛と申す」

「ほう、されば、鳥海守衛殿のご子息か」

「父を知ってござるか」

 勘兵衛は、驚いた。それだけ、この武士が秀綱と親しい間柄なのだと思い、居住まいを正した。


「さて、名乗らぬは無礼なれど、帷幄も近い故、この中で名乗り申す。それで、無礼をお許し願いたい」

 孫作は、勘兵衛に微笑みかけ、帷幄内に招じられていった。孫作は、勘兵衛も中に入るのを目の端で確認して、名乗っていた。


 勘兵衛は、孫作の話を脇で聞いていた。楯岡満茂、志村光安、鮭延秀綱 これらを相手にして、しかも劣勢であるのに一歩も退かない雰囲気の孫作に、勘兵衛はいつの間にか敬意を抱き始めていた。

使者としてきたのは、湯沢城副将 小野寺孫作でした。

その要望とは何か。


次回も、話の半分は勘兵衛の視点で描いていきます。

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