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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第3章 湯沢城攻略編

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秀綱の感傷 湯沢城の戦い 始まる

湯沢城の戦いが始まります。

籠る湯沢城の将兵は800

攻める最上軍は、6000


圧倒的な戦力差になりますが、降伏勧告を拒否した湯沢城側に覚悟を感じます。

谷柏大和守(やがしわやまとのかみ)道為(みちため)殿、黒沢甚兵衛に上意討ちで討たれました」

 嘉蔵からの報告を、秀綱は複雑な想いで聞いた。

 一方、他の諸将は色めき立った。


「これで最大の障害はなくなった」

「ただちに湯沢城攻めの軍を動かすべし」

 最上軍の動きが慌ただしくなった。


 「秀綱、この度の策はやむを得ないと理解してくれ」

 光安は、秀綱の許にやってきた。


「安堵いたせ。これで、味方の将兵を無駄に死なせることはないと理解している。だが、少し谷柏の爺様とは、小野寺時代に交流もあったからな。ひと時、感傷に浸らせてくれ」

「わかった。半刻後、早速軍議を行う。それまでには、戻ってきてくれ」

「ああ。わかった」


 秀綱は、山形城の本丸の広間を離れ、二の丸庭園に来た。池を眺めていた。

――谷柏の爺様が、死んだか。気に障ることを言うが、憎めなかったな――

 その言動が、全て小野寺家を思ってのことだと皆が理解していた。秀綱が無能を装っていたことを道為は見抜いていた。義道のために力を尽くしてくれと懇願もされた。秀綱は、その時の顔を思い出した。


――まるで父親のような顔だったな――

 その、息子のように厳しく接した義道に上意討ちをされてしまった。最期の想いは何だったのかなと、秀綱は感傷に浸った。


「秀綱殿か」

 ふと、聞き覚えのある女の声がした。駒姫だった。秀綱は平伏しようとして、そのままと制された。


「いつも冷静沈着な秀綱らしからぬ悲しい顔をしていましたね」

――見透かされる程だったのか――

 秀綱は、いっそ気持ちを聞いていただこうと駒姫に道為とのいままでの因縁を話した。駒姫は、黙って聞いていた。


「申し訳ありません。父ならば気の利いたことを話すでしょうが、私は殿方の戦は疎くて、聞くしかできません」

 駒姫は恐縮していた。

「構いません。むしろ、殿に話したら、軍を起こす良い機会じゃと馬鹿笑いをして、こんな話をすることなどできなかったかも知れませんので」

「がっはははは、っていう感じですね、たしかに」

 駒姫が義光を真似て、高笑いをした。あまりにも似ていない。秀綱も、駒姫もそれに気づいて笑いあった。


「ただ、最上の者として申し上げれば、道為殿がいたら、多大な犠牲が出たでしょう。悲しむ家族が数多出たことでしょう。それが避けられたのは、感謝しています」

「わかっております。現実に、夫が、息子が戦死する家族の悲しみや苦悩に比べたら、取るに足らない感傷だということを。されど、これもまた私の気持ちでもありますので」

 秀綱は、ぼそっと話した。


「それはそれで、大事です。秀綱殿は、自分の想いを内に込めることが多いと思います。心のままに、感傷に浸るのも、時にはご自分にお許しになってください」

 駒姫が心配そうに秀綱を見つめていた。


「お言葉、感謝いたします」

「父のように、感情のおもむくままに、秀次様に冷たくするのも考えものですけどね」

 駒姫の困ったような顔を見て、秀次は笑ってしまった。


「たしかに、節度をもって感情を出すように致します」

「お願いいたします。秀次様まで冷静さを捨ててしまったら、最上家はただの暴走集団になってしまいますから」

 秀綱は、高らかに笑った。駒姫と話して、感情に整理ができた。

――全く、駒姫様は聡明なお方だ――

 秀綱は、感謝して軍議の席に向かった。


 文禄4年 1595年 最上軍は湯沢城に軍を進めた。大将は、楯岡満茂。副将に、鮭延秀綱と志村光安。総勢6000という陣容だった。

 既に、湯沢城周辺の支城は、ことごとく最上家に屈した。だが、湯沢城を守る小野寺孫三郎、孫作兄弟は降伏勧告を拒否し、湯沢城に籠城した。その軍勢は、800だった。


 最上軍は、湯沢城を包囲した。山城である湯沢城は、守るに易い堅城であった。力攻めでは、多大な被害が予想された。

 しかし、楯岡満茂は仙北一揆の援軍で、湯沢城に入った。城の構造を熟知していた。それは、相手もわかっているだろう。城の弱点を知る将兵がいることは、湯沢城をこの上もなく不利にしている。


「山麓の水の手を抑えよ」

 満茂の支持は適切だった。山麓に湧き出る水が、湯沢城の籠城には欠かせない。そのため、城兵を出して守備に当たっていたが、せいぜい100がよいところであった。光安が指揮した鉄砲隊おそよ50と、徒歩武者(かちむしゃ)500が、水の手の攻略に向かった。


「放て」

 静かに下した命令で鉄砲隊が一斉射撃をした。20人ほどの敵兵が倒れた。間、髪を入れずに光安は500の兵に怒号を上げさせた。山麓のため、周囲に怒号が響き、大軍がやってきたかのように感じられた。


 動揺した湯沢城兵に向けて、光安は弓を射かけさせた。次々と放たれる矢に、何人もの湯沢城兵が倒れていった。


「ひけ、ひけい」

 湯沢城兵は、たまらずに撤退した。小半刻で、光安が犠牲もなく水場を占拠した。

 だが、敵のとっても重要な水場であった。奪還のために、再び騒乱になる惧れがある。満茂は、水場の守備を山根大善に代わらせて、光安を本陣に戻した。


「鮮やかだな」

 秀綱は、満茂の采配に巧みさを感じた。そして、敵にも味方にも犠牲を少なくさせようという意図も感じた。叶うならば、湯沢城の将兵も味方にしたいという考えであった。


――だが、そうなるかな? ――

 秀綱は、城将の小野寺孫作という人物を知っていた。谷柏の者であることを誇りにしている高潔な武将であった。良将の少ない小野寺家でも屈指の勇猛の将であり、兵士想いの将でもあった。


――味方にできれば、それに越したことはないが――

 秀綱は、本陣から湯沢城を見上げた。

 旗印は、谷柏家の旗だった。小野寺家の旗は掲げられていなかった。

次回は、秀綱と小野寺孫作が対峙します。


互いの器量と誇りを掛けた湯沢城の戦いの開始前。


湯沢城からの使者がやってきます。


この回は、鳥海勘兵衛の視点を中心に描きます。

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