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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第2章 奥州仕置き編

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駒姫の密かな決断 

最上義光は、秀次との婚姻に猛反対です。

しかし、駒姫はちょっと違うようです

 秀綱は、三の丸に向かった。駒姫は、そこで待っていた。護衛の武士である佐藤式部もいた。義光から変な誤解を受けないようにした駒姫なりの配慮だった。秀次から求婚があったことは、おそらく駒姫にも伝わっているだろ。そして、義光のいないところで、本音を聞きたいという想いを秀綱も感じた。


「あのお方が秀次様だとは思いませんでした」

 駒姫は、切り出した。建築の場で炊き出しを行っている時に、急に現れた武士が、まさか次期天下人だとは思わないだろう。


「お察しいたします。しかも、急に駒姫様に求婚するなど言語道断の所業です」

 秀綱は、不快そうに吐き出した。だが、それは演技である。秀綱自身は、秀次という人物をそう嫌ってはいなかった。弱い者たちを守ろうとする姿勢を持っているのは知っている。多少の好感を感じてはいた。


「秀綱殿、無理に周りに合わせなくてもよいのです。父が申しておりました。秀綱殿が秀次様と密かに話されたことを。その上で真実を聞いています。どのような方ですか」

「それは……」

 秀綱は、言葉を飲んだ。秀綱も駒姫が秀次に嫁ぐべきかどうかと聞かれたら反対である。しかし、そのために偽りを述べるのは違うと思った。秀綱が感じたことを申し上げた上で、駒姫が判断すべきことだと思った。

――聡い姫だ。嘘偽りを述べて誤魔化すは、非礼にあたろう――


「率直に申し上げます。まず、某は姫が秀次様に嫁ぐには反対でございます。その上で、偽りなく申し上げます。秀次様は、おそらく名君となる器かと」

「何故、そう思うのです」

「はっ、秀次様には軍才はございませぬ。ただ、それは優秀な家臣があれば足りること。秀次様には民衆や弱き者を慈しむ心があるように思います。多少軽薄なところもございますが」

 秀綱の言葉を聞いて、駒姫はケタケタと笑った。


「それは私も感じます。炊き出しの際の軽さといったら」

 駒姫はしばらく笑っていた。普段は大人びた雰囲気をもつが、こうした姿を見ると年相応だなと感じる。


「しかし、私は聞きました。秀次様は捨て子を側室にされているとか」

 秀綱は驚いた。そんな出自の者を側室にすることは、通常であればありえないことだった。


「父が調べさせたようなのですが、それを私も密かに聞きました。あ、これは黙っていてくださいね。まあ、父からしたら、そんな人と同格であるとかも耐え難い理由かもしれませんけど」

 駒姫は、フフフと微笑した。


「でも、今秀綱殿の言葉を聞いて、合点が行きました。平和の時代の統治者として、支え甲斐のある方かも知れませんね」

――駒姫様は、秀次様に嫌悪感は感じていらっしゃらないのか――

 出会いが出会いだけに、秀綱は意外に感じた。


「意外にお思いでしょう」

 秀綱の心情が顔に出ていたのだろう。駒姫は、いたずらを見つかった子供のような表情を見せた。


「父は私を大事にしてくださっているのはわかります。けれど、所詮女は、政略とは切り離されませぬ。されば、最上の家のため、最上の家のために命を懸けてくれる家臣のために、どこかに嫁ぐのが使命だと思っております」

「左様な悲しいことを申されますな」

 秀綱は本気で悲しんだ。最上家の家中全体が、この、父に似ないで済んだ幸運な美少女の幸せを

願っているのだ。


「いいえ。皆に守られて生きている私が、皆を守れるのは婚姻のみ。その相手がいかに邪悪でも従わなければならぬのが、戦国の倣い。その相手が、この上もなく善良で、この上もない権力を持つのであれば、この上ない幸せなのではないかと私は思うのです」

 秀綱は言葉がなかった。

 目の前の幼さの残る少女が、戦国の女として、大名の娘として、既に生きる決意を固めている。それを、単に少女だとして否定してよいものではないと秀綱は思った。

 ここまでの聡明をもって、世の中を見ているのだ。そして、その生き方は、姫である限り逃れられるものではない。悲しいまでのでの現実を知っているのだ。


「家臣である某は、義光様の思し召しに従うだけですが」

 秀綱は言葉を切った。


「某は、駒姫様のご決断を支持いたします」

 秀綱の言葉に、駒姫は寂しく笑った。



 秀次側からの婚姻の申し出に対し、最上家からは年齢が幼いことや都に行ったことがないことなどを理由に、未だ教育が不足しているとして、直ちの婚姻は避けられた。目途として、15歳での婚姻が当面の約定として定められた。


 その日、義光の顔は悲痛なほど、悲しみを感じさせた。秀綱と光安が密かに酒の席に呼ばれたが、お通夜のようであった。

 義光は、婚姻を先延ばしをして、理由をつけて破談にもっていこうと考えていると繰り返し話して、

悪酔いしていった。

 

 このままでは早晩親子喧嘩が勃発するだろうな、と秀綱は思った。


――そうなったら、駒姫の側に回ってやろうかな――

 秀綱はそう考えながら、酔いつぶれた義光に布団をかけてやった。



 

 


奥州仕置き編は、ちょっと将来への布石を残しつつ、終了します。


次回は、湯沢城攻略編

戦メインになりますので、書き甲斐もあります!

有屋峠の合戦での伏線も回収していきます。


お楽しみに。

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