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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第2章 奥州仕置き編

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駒姫をください

秀次へ家臣が刀を向けたことで、秀綱と家臣の佐藤式部は、処分を待っています。

しかし、理不尽な処分には抗議する気、満々でした。


しかし、義光たちは別の懸案があって、そっちに頭を悩ませていました。

 秀綱は、城内の一室に閉じこもっていた。自主的な謹慎である。同室には、佐藤式部がいた。式部は、恐縮したままであった。

 既に秀次一行は山形を後にした。その後のことはどうなったのか、秀綱にはわからなかった。


「殿、斯くなる上は、某は腹を切って……」

「気にするな。お主は役目を全うしただけだ。それをわからぬ我らが殿ではない。安堵いたせ」

「しかし、関白殿下の後継者に刃を向けたとあっては、ただでは済みますまい」

「その折は、俺が謀反を起こして、天下にその器を問うてやる。その時は、つきあってもらうぞ」


 秀綱は、式部をなだめた。式部に落ち度はない。駒姫に近づく不審な者を排除しようとしたに過ぎない。それを咎めるようならば、黙ってはいないと秀綱は思い詰めていた。


「鮭延様、殿がお呼びです」

 小姓が秀綱を呼びに来た。秀綱は意を決して、義光の許に向かった。


 義光は書院にいた。脇には、光安がいる。秀綱は、義光の正面に座った。光安は向かって右側に控えている。


「由々しき事態となった」

 義光は重々しく切り出した。


「はっ。されど、我が式部は、駒姫様を守らんがために刀を抜いたのでございます」

「そんなことはどうでもよい。この事態に、どう対処したらよいのかわからぬ。最上家の一大事じゃ」

 義光は深刻な顔のままである。


「非はこちらにはございませぬ。それを問題とされるなら、関白殿下に申し出て採決を仰ぐのみ」

「いや、関白殿下は関係ない。巻き込むわけには参らぬ」

 義光は、頭を抱えたままである。


「されど、関白殿下の後継者である秀次様の行状、勝手でございましょう。関白殿下が難しいなら、徳川様を通じて抗議されては」

「家康殿もこの件に関しては無力であろう」

 義光はなおも頭を抱えている。それほどに事態は深刻なのであろう。


「しからば武士の意地を通して」

「それは、お駒が最も嫌うであろう」

「さりとて、このまま座して待つよりも良いのではございますまいか。天下に信を問う必要がございましょう。式部一人の命を奪えばよいとはお考え召されるな」

 秀綱と義光のやりとりは重々しく、熱も帯びていた。それを脇で聞いていた光安が笑い出した。


「何を笑うか」

 秀綱も義光も、光安の笑いを咎めた。しかし、光安は笑いを納めない。


「いえ、お互いの認識が違うのにここまで会話が進むのも珍しいなと思いまして」

「認識が違うじゃと!秀綱、お主は何を考えておる」

 義光は怒鳴った。


「我が家臣の式部が、秀次様に刀を向けたことの責めを負わすべきとお考えなのでございましょう」

 秀綱は言った。義光はポカンとした顔をしている。


「何じゃ、お主はそんなことを気にしておったのか。お駒を守ろうとした故であろう。褒めこそすれ、責める気などさらさらないわ。後で褒美をやるゆえ、楽しみにしておれと伝えよ」

 秀綱は驚いた。自身の懸念は杞憂であるとわかり、まずは安堵した。


「ちなみに、秀次様も自身がお忍びで出た先での出来事ゆえに、問題にするべからずと周りにも申している。あのような忠実な家臣は宝じゃ、義光殿は良い家臣をお持ちだと褒めていた」

 光安が補足してくれた。これで式部も安堵するなと思った。


――では、何が出来したのだ――

 今度はそちらが気になった。義光が嘆かわしいほどにため息をついた。

「秀次様が、お駒を側室に迎えたいと申してきたのだ」


――何だと!――

 秀綱は目を見張った。光安も そういうことだ、とばかりに頷いた。

「殿は認められるのですか」

「認められるか!」

 義光は即座に否定した。だが、次代の天下人からの申し出である。断るもの難しいだろう。


「正直、駒姫様や殿の意向を無視すれば、最上家に利点はある。次代の天下人の縁者となれば、優遇されるであろうからな。悪い話ではない」

 光安は淡々と話した。


「だが、秀次には何人もの側室がおるのだ。そんなところに、大事なお駒を渡せるか。正室としてでないと、嫁にやるつもりはない」

 義光は、きっぱりと言い切った。秀次と呼び捨てにしていることを、光安も秀綱の気づいたが黙っていた。


「秀次様は、確かに多数の側室をお持ちです。お子も多い。それは、関白殿下にお身内が少ないからでしょう。そのため、いざという時に頼りになる身内を増やしておきたいという思惑もございましょう。そのためだと、考えられます」

「光安は、この縁談をまとめよと申すか」

 秀綱は、光安を詰った。


「いいや、大反対だ」

「ならば、何故斯様に秀次をかばい立てする」

 義光は光安にかみついた。光安は冷静に流す。

「反対して済む相手であれば、苦労はいたしますまい」


 三人ともここで、ため息をつかざるを得ないのであった。


「ところで、秀次様のご器量はいかがでございましたか」

 城下の案内の折に、多数言葉を交わした二人なら、それが感じられただろう。秀綱はそれを思って、尋ねた。


「それが思いのほか、情熱をもって語られていた。私は、名君の素質があると感じた」

「それは儂も思った。目の付け所が良くてな。話していて面白かったわ」


「では、意外と当家と相性が良いのでは」

「それところとは別だ!」

 秀綱が言うと、義光は完全否定した。


「何を好き好んで、秀綱と同じくらいの年長の者に嫁に出さねばならんのだ」

「今、某は辱められたのか」

 秀綱は苦笑して光安に聞いた。光安は、笑っていて、否定派しなかった。


「ただ、今は、年齢を理由にして先送りいたしましょうぞ。その内に、熱も冷めるかもしれませぬ。関白殿下に働きかけて、その婚姻を取りやめて、別の家と結ばせるように働きかけることもできましょうほどに」

 光安は、妥協案を提示した。義光も他に、良い案も浮かばないので、光安の案で進めるように命じた。



 数日後、秀綱の許に、駒姫から城下町の炊き出しに出向く故、護衛をしてほしいとの依頼が来た。


――この前の秀次様の件の話があるのであろうな――

 秀綱は、承知したと小姓に伝えて、駒姫のいる三の丸に向かった。

肝心の駒姫の考えがわからないまま周囲が動いていってます。


次回 駒姫は、秀綱に自身の考えを伝えます。

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