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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第2章 奥州仕置き編

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秀次の城下視察

秀次は、山形城下の視察を行います。

秀綱は護衛として参加し、兼続に絡まれます。


一方、秀次は窮屈な視察に飽きて、単身抜け出して、城下に入りました。

そこで、駒姫を一目見て、惚れてしまったようです。

 秀綱が提唱した山寺参詣には、希望する大名はいなかった。

 秀次が、建設中の城下を見たいと申し出てきたからであった。


 仕方なく秀綱も、護衛のために、秀次一行についていくことになった。

 先導は、最上義光と、城下の建設に関わっている志村光安。この二人が秀次を案内し、秀次から問いかけがあれば答える役割を担っていた。


 秀綱は、一行の後ろからついていく役割であった。建設途中の場所を通るため、材木が倒れたり、地面を掘っていたりと、建設場所特有の危険もある、奥州仕置きに恨みや反感を抱く者が紛れ込む惧れもある。それらを、後背から見張る必要もあった。


「山寺の参詣が取りやめになって残念でしたな。私としては、摺上原の話をお聞きしたかったのですが」

 直江兼続が、秀綱に脇に来て、話しかけてきた。どこか面白げであった。


「秀次様が、城下の視察を望まれたのなら仕方ありますまい。皆、秀次様の警護を努めねばなりませぬからな」

 秀綱は、淡々と応じた。


「その秀次様ですが、お気をつけあれ。興味のむかうところ、突っ走る傾向がありますからな」


 確かに秀次は、先々で義光と光安を度々質問攻めにしている。


「馬見ヶ崎川と申すか。この川が、城下を流れるのは邪魔であろう」

「されど、堀の役割も兼ねてございます。もし、天下が治まり、戦のない世になりしたら、川の付け替えも必要になりましょうが、今は先年の一揆もございましたゆえ、防備を優先しております」

「左様か。儂の政治次第で、この山形の城下も変わるのじゃな」

「御意にございます」


 秀次は、熱心に話を聞いている。形通りの視察で済ませるでなく、通りや水路、寺町の作り、商人町の配置など、細かく具体的に討論をしていた。秀綱は、その姿を意外に感じた。ただ、火が付いたようで光安も、秀次に輪をかけて饒舌になっている。そのため、行列は遅々として進まなかった。


――秀次様も、光安同様に凝り性であると見えるな――

 秀次は、ふふふっと笑った。


「殿下の後継者とあろうお方が、町づくりにここまで興味を抱くとは、意外でござろう」

 兼続も苦笑しつつ、秀次を見つめている。


「いえ、某が笑ったのは、秀次様と光安が、意外と馬が合いそうだというところでござる。光安は、興味のある所になると、話が止まらなくなりますゆえ」

「ほう、最上の知恵伊豆殿(ちえいずどの)は、斯様なお方でござったか。さすれば、この城下の視察は長くなりましょうな」

「左様、日暮れても終わらぬやもしれませぬ」

 兼続と秀綱は顔を見合わせて笑った。


「貴殿とは、庄内で話をして以来でござったな」

 笑いが納まった後、兼続は笑みを残した顔で話を続けた。


「左様。あの戦で、友を失い申した」

「本当でござるか」

 兼続は探るような目で秀綱を見た。


「お疑いでも」

「いえ、池田盛周の死骸が見つからぬゆえ、私は未だ奴が生きておるのではないかと危惧しておるのです。斯様な場面で、秀次様を狙ってもおかしくござらぬゆえ」

 秀綱は遠い目をした。兼続の目を逃れるため、庄内の方向を向いた。


「信長様も生きておいでだと兼続殿はお思いか」

「まさか、左様なことはありますまい」

「で、あれば、盛周生存の懸念は、それと同じ程度の懸念だと某は思いますぞ」

 秀綱は視線を兼続に戻した。兼続は、一瞬の間をおいて、高らかに笑った。


「あっはははは。左様か。それであれば、懸念はありますまいな」


――かまをかけてきやがった。油断ならねえ奴だな――

 秀綱は、兼続の目が笑っていないことに気づいた。


 

 そうしている間に、一行は休憩をすることになった。光安が、城内も戻ることを提案したが、秀次はまた戻るのが億劫だということで、城下の広場で小休止することとなった。

 その休息中であった。一行が、騒がしくなったのである。光安が、秀綱の許に駆けてきた。


「厠に行った秀次様が姿を消した」

 秀綱のところに光安が駆けつけて急を知らせた。


「何かあれば一大事だ」

「わかった。俺も探そう。でも、誰もついていかなかったのか」

「行った。しかし、中から、度々声をかけて返事をされていたので、安心していたところに窓から抜け出られてしまったらしい」

「三枚のお札じゃねえんだからよ」

 秀綱と光安のやりとりを耳に挟んだ兼続が口をはさんだ。


「脇から失礼。秀次様は、度々こうしたことをなさるようだ。取り繕った場でなく、実際の民の声を聴きたいと言うことらしい。格好は、きっと目立たぬ格好に変えてるはず。私も捜索に加わろう」

――嫌だが、こいつも加わってもらった方がいいな――


「頼む。何かあったら、最上家の取り潰し案件になってしまう」

「承知。お主らに恩を着せる絶好の機会。逃しはせんぞ」

 秀綱たちは、秀次の行方を捜した。だが、度々のことのようで、諸大名は悠然と、いやあきれて、事態を待つ姿勢を示していた。




「いやあ、あなたのような方が、職人に給仕をされているとは」

 若侍に扮した秀次は、建築現場に足を踏み入れていた。そこで見たのは、美しい少女が、職人や人足たちに、水や握り飯を渡している光景だった。


――美しい。幼さも残るが、泥に塗れてもなお、光り輝く少女は初めてだ――


 秀次は、少女に近づいた。

 しかし、少女には護衛の武士がついていて、近づく秀次を警戒している。


「止まれ。お主は何者だ。無礼は許されぬぞ」

 警護の武士は、5人。その一人は、秀綱の家臣の佐藤式部が勤めていた。上泉信綱の高弟 疋田豊五郎(ひきたぶんごろう)に才を認められた使い手である。その式部が、秀次の前に立ちはだかった。


「いや、すまぬ。町のつくりを知りたくて、歩いていただけだ。その際に、天女の如き女性が、泥まみれの人足のために給仕をする姿にほれ込ん次第じゃ。全くもって、我が妻に迎えたいほどじゃ」

 秀次の言葉が、式部を怒らせた。


「お主のようなどこぞの馬の骨かわからぬ奴が、望んでよいようなお方ではない。それ以上、無礼を働くなら、たたっ斬るぞ」

 式部はそこまで言うか、刀を抜いた。秀次も、応じて刀を抜いた。


「おい、早く、姫を安全な場へお連れ致せ」

 式部は、他の護衛の武士に命じて、駒姫を避難させた。


「お侍様。あのお方は、最上の殿様の姫だで。お前さんの方が、分が悪い。はよ、この場を離れなせえ!」

 人足の一人が、秀次に叫んだ。だが、秀次は引かなかった。


「ほら、騒ぎを聞いて、鮭延様もやってきただで、お侍様 刀を納めなせえ!」

 人足は、さらに秀次に叫んだ


 騒ぎを聞いて、秀綱が駆けつけた。

 身なりは変えているが、面識のある秀綱には、若侍風の男が、秀次だとわかった。

 そして、相対している男が式部だと思った時に、暗澹たる気持ちになった。


「式部、引け。刀を納めよ」

 秀綱は式部に向けて叫んだ。思わぬ秀綱の乱入に、式部は驚いた。


「刀を納めよというのが、わからぬか」

「しかし、殿。この者、間者かも知れませぬ。駒姫様にみだりに声をかけようとしたゆえ」

 式部の反論を秀綱は遮って、秀次に平伏した。


「秀次様、我が家臣の無礼、平にご容赦を」

 秀綱の言葉に、式部だけでなく、その場にいた一同が驚き、平伏した。


 

次回は、秀次が駒姫を側室にと所望してきます。


最上義光は大反対をします。


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