表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第2章 奥州仕置き編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/62

豊臣秀次の山形来訪

秀綱の領内は平穏でしたが、、奥州では波乱が続きます。

奥州仕置きの最後を飾る九戸政実の乱が、勃発します。


しかし、最上家への波乱は、その後に来ることになりました。


 秀綱は、一揆鎮圧の後m、しばらくは軍役などはなかった。

 嘉蔵が、会津から連れ帰った田鶴は、景円寺で子供たちの世話をする日々を送っていた。


◇◇◇

 田鶴は、間近で秀綱にまみえた。かつての夫の仇だと憎しみを感じるかと思ったが、そうではなかった。むしろ、子供たちや村人、さらには寺を管轄する八郎兵衛から信頼を寄せられている姿を見た。


――夫では勝てないお方だ――

 そう感じて、むしろ夫への情が思った以上に冷めていた自分に驚いた。敬して遠ざけられていた日々が、思った以上に夫への情を削いでいた。


――むしろここの寺の暮らしの方が、充実している――

 田鶴は、八郎兵衛の許を訪れてから、子供たちに字を教えている。


「儂は生来の悪筆ゆえ、子供たちの手本にはなれん。田鶴殿の字ならば、子供も読みやすく書きやすいであろう」

 そう言われて以来、田鶴は子供たちに字を教え始めた。優しい雰囲気の田鶴は、子供たちからも人気であった。


「親父の字は、俺が言うのもなんだけど、汚くてね。だから、俺も汚い。何せ書いた自分でも後から見ると読めないんだから」

 義父の八郎兵衛の許を、綱元が以前よりも頻繁に訪れるようになっていた。


「何じゃ、お主は。以前よりも無駄に寺に来るようになったな。田鶴殿が来てからな」

「親父。そんなことはないぞ。秀綱様の軍役がないから、来れるようになっただけだ」

 綱元は、顔を赤くして八郎兵衛のことを否定した。


――綱元様も、八郎兵衛様も戦の苦しさ、非道さを知っている。だからこそ、掛けてくれる言葉も、向けてくれる視線も優しい――


 田鶴もまた、綱元のことを憎からず思っていた。


◇◇◇


 天正19年 1891年 秀綱領内は平穏であった。山形も目立った混乱や問題は生じていなかった。

 しかし、陸奥の南部家では、長年の対立が先鋭化していた。


 天正10年に当主の南部晴政が病死し、後継の晴継はるつぐも、父の晴政の葬儀の後、急死した。その後継を巡って、南部信直と九戸実親(くのへさねちか)が争った。重臣たちの合議で、後継は信直に決まったが、信直には晴継暗殺の噂があった。


 疑惑のある信直が後継に決まったことで、九戸実親の兄である九戸政実(くのへまさざね)が、南部宗家に対して、独立を宣言した。それを認めない信直との対立が長年燻っていた。


 ついに、天正19年 1591年 3月 九戸政実は南部信直に対して挙兵した。南部家の精鋭である九戸政実の兵の離反は、南部信直の手に余った。そこで、信直は秀吉に助けを求めたのである。


 6月 南部家からの要請を受けた豊臣秀吉は、総大将に甥の秀次を任じた。その配下には、奥州仕置きの責任者である蒲生氏郷、浅野長政をつけ、補佐役に石田三成を任じて、兵站の一切を仕切らせた。 

 その秀次に寄騎として、大大名がついた。前田利家は、津軽方面から進軍、石田三成、佐竹義重らは相馬方面から、仙北方面からは上杉景勝、大谷義継らが攻め上った。また、家康からは井伊直政が、名代と捨て派遣された。そして、白河には羽柴秀次が入り、脇を徳川家康が固めた。総勢は6万の大軍であった。

 

 この秀次軍の配下として、最上義光らがつけられた。しかし、大した軍役も課されないまま、出兵だけ行い、義光は包囲軍の一角に加わった。


 この精鋭たちの進軍には、九戸政実も耐えられず、9月になって豊臣軍に降伏した。しかし、秀吉は反逆を許さず、九戸政実の主だった郎党たちは、城で処刑された。政実ら一族は、捕らえられ、斬首された、


 

「このまま終わってくれたらよかったのだがな」

 義光は、城に帰るなり、諸将を集めた。何事かと参集した重臣たちを前に、義光は切り出した。


「この城に、秀次様が来ることになった」

 九戸政実の乱の鎮圧の総大将 豊臣秀次が、徳川家康を連れて、山形城に来るというのである。秀次

は、豊臣秀吉の後継者とされている。次代の天下人である。その秀次が来ると言うことは、名誉なことである。


「はっきり言って、断りたい」

 義光はため息をついた。秀次だけではない。各大名も山形城に入ることになる。それはつまり、山形城の防備など軍事機密を知られることにつながる。上杉景勝など、今後敵対する可能性のある者を城に入れたくはないのである。


「されど、断るわけにも参りますまい」

 志村光安は、こともなげに言った。光安は、氏家守棟(うじいえもりむね)から軍略・謀略の才を買われて、守棟の後継者として家中では目されていた。


「では、どうすればよいのだ」

 義光は、光安にいら立ったように問うた。


「諦めるのです」

 光安は飄々として言った。


「無理なものは無理です。むしろ変に糊塗すると、それにいいがかりをつけてきかねません。直江兼続あたりは、そうして最上家を牽制しようとするでしょう。伊達と最上、この両家は、蒲生・上杉に睨まれていると考えるべきでしょう」

「だから、城に入れたくはないではないか」

 義光は、語気を荒めた。それを、光安は頷いて返す。


「かの武田家は、人は石垣 人は城 と申しました。この度の訪問は、秀次を味方にすることをもって、勝ちと致しましょう」

「仔細、申せ」

 光安の言葉に義光も諸将も興味を抱いた。


「秀次様は、心から信頼できる家臣がおりませぬ。今の五大老たちも、関白殿下の家臣たちです。秀次様のご直臣と言われる方は少のうございます。それゆえ、秀次様は、池田恒興殿の娘御をはじめ、公家や国人領主たちの娘を側室に入れております。これは、すなわち、ご自身の腹心を得たいがためと考えまする」

「儂は、娘を側室になど出さんぞ。どこかの大名の正室にでないと、儂は嫁になど出さん」

 義光は、光安を怒りを抱いた目で睨んだ。


「もちろんでございます。駒姫様を犠牲にして、秀次様の歓心を得ようとは思いませぬ。仮にそんなことを言い出したら、某、諸将から切り刻まれ、ここから生きて帰れますまい。しかし、秀次様の信頼を得られれば、次代の天下で最上家が、上杉をしのぐことも可能でしょう。ですから、此度の訪問は、山形で秀次様だけを標的に、楽しませればようござる」

 光安は、とうとうと語りだした。


「どうやって行うのだ」

 諸将からも問いが出た。


「秀次様は、文化を愛し、古典を好み、茶を嗜まれます。能も自らが舞われるとか。さすれば、殿にはお好きな源氏物語を秀次殿と語らってくだされ。能は自らが演じていただきましょう。それも、此度の秀次様の活躍を描いた演目を作って、即興で演じていただきます。無論、相手が秀次様を引っ張る形にはなりますが」

「応、それができる能役者は、山形には何人もいるぞ」

 義光は、文化を愛する大名であった。都から能役者を招き、一流の能文化を山形に伝えている。


「そうやって、殿が秀次様と語らうことを通じて、出羽の地にも話の通じる者がいると認識をもっていただく。それが、他家よりも秀次様の信頼を勝ち取れることになりましょう」

「そうだな、それしかないな」

 義光は前向きに検討した。


「一方で、武芸や武家の気風を重んずる上杉のような面倒……、もとい、武家の鏡ともいえる家は、別のふさわしき者に応対させるべきかと」

「なるほど、諸大名を分けるのか。山寺などで武功の話などする会は盛り上がりそうじゃな」

「いいですな。山寺は比叡山の不滅の法灯が分灯された灯がございます。彼の信長様の叡山焼き討ち後の復興で、この山寺の灯が返されたことなど、よい土産話となりましょう」

 義光も乗っかってきた。光安の調子が出てきた。秀綱は、嫌な予感がした。


「その上杉などの相手は、誰がなさるのか。五大老格の景勝殿や家康殿も参られるのだぞ」

 秀綱の問いに光安は驚いた顔をしてみせた。


「驚いた。そんな方々を相手に話をできるのは、鮭延殿をおいて他にいらっしゃらいでしょうに」

「そんなことはないぞ」

「いえいえ、皆聞きたいのですよ。摺上原の戦いでの駆け引きや、庄内での一騎打ちなど近隣に知られた話を。それに、かの信長公や関白殿下とやりあったのは、秀綱殿でしょうに」

 秀綱は、助けを求める視線を義光に向けた。


「すまんな、秀綱。頼りにしておるぞ」

 義光は、満面の笑みを秀綱に向けていた。


 深いため息が、諸将の前で漏れた。

秀次の山形来訪は、最上家の大きな転機を与えることになります。


それは、秀綱の離れたところでおきます。


次回、秀次への接待が主流になります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ