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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第2章 奥州仕置き編

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 一騎打ち

秀綱と盛周の一騎打ちに、周囲は見ているしかありません。


友人同士の一騎打ちは、長く続いていきます。

 秀綱は、槍を構えて盛周の前に立ちふさがった。

「秀綱、お前とは戦いたくなかったぜ!」

 盛周は、鉄球を振り回しながら、叫んだ。鉄球が空を切る音があたりに響いた。


「俺もだ、盛周。だが、天下への謀反を見過ごすわけにはいかん。降伏しろ」

 秀綱の言葉を、空を切る音が遮った。


「嫌だね。この奥羽では、領主を務めるのは民を慈しむことだと思っていた。けれど、秀吉の支配下に入って以後、民を虐げることに変わってしまった。それなら、俺に領主への未練はない」

――確かにこれは、盛周の本音だろう――

 秀綱は槍を構えた。


「お前の言うこともわかる。だが、時代は変わったのだ。それに従わねばならぬ」

「そうかも知れぬ。しかし、民を苦しめ、反対する者を斬る世なら、俺はそんな時代を拒否してやる」

 秀綱と盛周のやりとりを、兼続は黙った見ていた。


「ならば、これまでだ」

 秀綱は、馬を走らせた。盛周は、馬上から鉄球を投げつけた。秀綱は、槍で受け止めた。鎖が槍に絡みついた。馬が走ったままなので、秀綱は槍を手放した。勢い余った盛周も鉄球を手放した。


「やるな、秀綱」

「お前こそ」

 秀綱は刀を抜いた。盛周も、同様であった。互いに馬を走らせて、切り結んだ。一合、二合、三合と刀同士で火花を散らせた。


 後ろで一揆勢が矢を番えている。鉄砲を構える者がいた。

「おう、おめえら、手出し無用だ。秀綱は俺がたたっ斬る」


 秀綱の背後で、上杉兵も盛周を討とうと駆けてきた。

「兼続殿、手出しは無用。今後、武士が侮られることになる」

 秀綱も、上杉兵の乱入を制した。


「止めよ。鉄砲が秀綱殿に当たりでもしたら、最上家との遺恨になってしまう」

 兼続も、兵を制して、一騎打ちを見守る姿をみせた。


 その後、何合渡り合ったか知れない。盛周の刀が、曲がった。秀綱の刀の刃もボロボロと毀れた。ついに、盛周は刀を捨てた。秀綱と組み合った。二人は馬上でもみ合いになり、双方落馬した。

 

 見守る将兵から、おお、と喚声があがった。皆、固唾をのんで見守っていた。


 組み打ちから、秀綱が盛周を投げ飛ばした。倒れた盛周は、すぐに起き上がって、秀綱と再び組み合った。ややあって、盛周は右足で秀綱に足をかけた。秀綱はよろめいた。そこに盛周は、蹴りを一発くれた。秀綱は、たまらず地面に倒れ伏した。その際に、秀綱は顔を強かに打ち付けた。鼻や口からの流血した。


 盛周はそれを見て、馬に乗って、朝日山方向に駆けだした。秀綱も起き上がった。一騎打ちを見ていた兵士から槍を借り、馬に乗って、盛周を追いかけた。


 上杉の兵は、秀綱を追って、駆けだした。一里も追っただろうか。谷あいの道で秀綱は盛周に追いついた。秀綱は盛周に槍を着けた。盛周は、馬上から姿勢を崩して、がけ下に転落した。下には川が流れている。ドボンという大きな水音が響いた。


「秀綱殿、ご無事か」

 追いついてきた兼続が秀綱に駆け寄った。兵士たちはがけ下を見ている。兵士の誰かが、この下は深い淵になってるので、助からないだろうと言った。


「それに手負いゆえに、満足に泳げますまい」

 秀綱は、槍の穂先を兼続に見せた。鮮血で朱に染まっていた。


「なるほど、確かに。友を討ち取るのはさぞかし辛かったろうと存ずる」

 兼続は、頭を下げた。


「首謀者の盛周の死をもって、一揆は瓦解しましょう。されど、一揆勢は村に帰れば、貴重な働き手。叶うならば、お許し願いたい」

 今度は秀綱が、兼続に頭を下げた。


「もとより。それに、石田殿より、今後は多少の裁量も許されると内々の申し出もありました。多少は民百姓に余裕を持たせることもできましょう」

「それは何より。盛周もこれで浮かばれるでござろう」

 秀綱は、朱に染まった顔に笑みを浮かべた。見かねた兼続から手ぬぐいを渡されて、顔を拭った。



◇◇◇


 秀綱は、山形に帰った。今回も、一兵を失うことにない凱旋だった。

 駒姫が、笑顔で迎えてくれた。

 

 義光の許に報告に行くと、山形城の書院に通された。入ってきた義光もまた笑顔であった。

「小野寺領の一揆も、多数の犠牲を出したものの、鎮圧ができた。お主の活躍も聞いた。我が兵に犠牲が少なかったことをまずは喜びたい」

 義光は満足げに話した。


「そして、この功により、内々ではあるが、雄勝郡を与えられることになった。三万石程度だがな。だが、この意味は大きい」

「そうですな。一揆の扇動を疑われる恐れがあったにも関わらず、最上家は関白殿下から信任を勝ち取ったわけですからな」 

 秀綱も安堵した。兼続の前で、盛周を討ち取る印象を与えたことも大きかったかも知れないな、と思っていた。兼続は、五奉行の石田三成や大谷義継らと親しい。その兼続から、秀綱のことも聞きおよんでいるであろう。


「そして、儂は新たに家臣を召し抱えようと思っている。確か、お主とは初対面となるであろうな。入れ」

「はっ」

 義光の言葉を受けて、一人の男が書院に入ってきた。秀綱はその声をよく覚えていた。


「高名な鮭延典膳殿にお会いできるとは、無上の喜び。某は、池田悪次郎と申します。以後、お見知りおきを」

 盛周であった。川から落ちて、勝手知った淵の水の流れの緩い場所で、上杉の追及を逃れたのである。


「秀綱よ、以後、こやつの面倒も見てやってくれ」

「天下御免のお尋ね者ゆえ、名を悪次郎と改め申した、何卒、よしなに」

 盛周は、頭を床に着くまで、深々と額づいた。


「えっ、なにゆえ某がこいつの、いや、悪次郎殿の面倒を」

 秀綱は戸惑った。


「山形では、秀吉の配下の者や他国の者が度々訪れよう。そなたの領地なら、目につかぬであろう。なに、ほとぼりが冷めるまで景円寺にでも押し込めておけばよかろう。頼むぞ」

「この悪次郎。農作業にはいささか自身がござる。まずは、農地を開墾し、隠し田を作りますゆえ、何卒、匿いくだされ」

 盛周は慇懃に言葉を掛けてきた。


「ええい、お前の想い通りにさせてやるものか。こき使ってやるから覚悟いたせ」

 秀綱は、忌々し気に盛周に言った。


「なんじゃ、それでは一揆でも起こすといたすか」

「お前、ぜんぜん懲りておらんな」

 盛周は高笑いした。

「こら、人に聞かれたらどうする。お前は、明智光秀が如き、天下の謀反人なのじゃぞ」

 義光は、盛周をたしなめた。


「天下の謀反人! この悪次郎にふさわしき異名でございますな」

 盛周は再び笑った。


 秀綱は、この後、兵士に変装させて鮭延城まで盛周を連れて行くことになった。

 

 道中油断できないと警戒しつつ、秀綱の心は軽やかであった。

仙北一揆、庄内一揆など各地の一揆は鎮圧されていきます。


これで奥州仕置きが終わるかと思いきや、さらに大規模な一揆、いや反乱が発生します。


そして、それが最上家の最大の悲劇の入り口になってしまうのです。

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