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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第2章 奥州仕置き編

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盛周との再会

鮭延秀綱は、池田盛周と再会します。

しかし、敵味方に別れています。

一揆の終結は、盛周の命と引き換えになることは必至です。

 秀綱は、山形城を進発した。

 城を出る前に、駒姫から見送りを受けた。


「ご武運を」

 駒姫は、固い表情で声を掛けた。駒姫にも、今回の戦の意味が伝わっている。


 一揆を起こした民衆を討つ。

 これは、領主にとって最も避けねばならない戦である。それはとりもなおさず、統治側に問題がある。その問題は、誰あろう関白の秀吉から発している。


 奥羽は雪が多い。冬に大量に降る雪が、雪解けの際には濁流となって、川を下る。溢れる河川も多い。それはすなわち、田植えの時期に影響を与える。

 そして、冷涼な土地も多い。米はもともとは南方の作物である。夏の暑さが、成長には欠かせない。しかし、冷夏になったら、成長も芳しくなくなる。奥羽では、天下に比べて一石の単位が広めなのは、そういった際の補償に当たる部分もある。


 秀吉は尾張の生まれである。奥羽の雪を知らない。天下の基準を統一するのは、当然の政策ではある。しかし、他の温暖な地と同様の基準にされると、奥羽の民にとっては、大きな増税になる。一揆が起きるのは、当然と言えた。


 しかし、秀吉に臣従した奥羽諸大名は、秀吉の意に従うしかない。従わねば、統治能力なしとして取り潰しに遭ってしまう。家を守るために、領民を討たねばならない。秀綱の軍は士気低く出発していった。


◇◇◇


「お頭、あぶねえ」

 盛周は、鎖鉄球を振り回しながら上杉軍に近づいて行った。味方の一揆勢も、盛周からは距離を置いた。

「誰が頭だ。俺は山賊じゃねえぞ」

 回る鉄球で、迫る上杉兵の頭蓋を破壊しながら、盛周は一揆の百姓をたしなめた。


「いや、どっから見ても山賊じゃ。武士にしとくのは勿体ねえ」

「わっはっは、俺は前から百姓様になりてえって言っていたからな。こっちの方が性にあってるんだろう。槍や刀よりも、こっちの鉄球の方が面白い」

 この鎖鉄球は、かつてともに大宝寺家で知り合った鮭延秀綱に、お前に似合いそうだともらった武器だった。武士の表芸としては忌み嫌われていたので、山での狩猟などで遊んでいただけだった。


 盛周は、城門に乱暴に鉄球をぶつけて行った。二回、三回とぶつけるうちに、木戸が壊れ始めた。なおもぶつけていって、ついに城門を破壊した。


「盛周、一番乗り!」

 盛周は、迫ってきた敵将の顔面に鉄球をぶつけた。顔面が砕けて、敵将は仰向けに倒れた。城兵は、それを見て、恐怖に駆られて逃げて行った。


 これで、一揆軍が落とした城は5つ目であった。


 その翌日であった。一揆勢の者からの、朝日山方面から敵勢が来た という報告が盛周にもたらされた。旗印を確認させると、二つ引きの家紋だという。

――まさか、秀綱じゃないだろうな――

 盛周は、目を凝らして、山上に陣を張った相手を確認した。


――くそっ、秀綱だったか――

 盛周は、山上の最上勢を見上げていた。


◇◇◇


 秀綱は、城を逃亡した兵を保護し、戦況を聞いた。鉄球を振り回す武将がいた、という話で、秀綱は盛周だとわかった。


『甘寧のごとき者よの、殺すには惜しい』

 太史慈の声が、秀綱に語り掛ける。

――俺だって殺したくはない。仕置き軍の村々での蛮行は聞いている。だが、それは許されまい――


『相手もそうであろう。ならば、やりようはある』 

 太史慈は、自信満々に語りだした。


『物見に出ればよかろう。周囲の村に、それを知らせて、な』

 秀綱はピンときた。この辺りは、盛周の領地の一部であった。領民たちは、一揆軍に密かに加担している者も多い。そこから、盛周と渡りをつけられると秀綱は踏んだ。



 城の周囲を確認するという名目で、秀綱は陣を離れた。連れているのは、佐藤式部と白石綱元の二人だった。ともに、盛周には面識があった。城を見下ろす丘に差し掛かると、木陰から人の気配がした。


「いよう、はるばるご苦労だな」

 盛周が笑顔で現れた。

「お前はなんてことしてくれたんだ!」

 秀綱は、盛周を怒鳴りつけた。


「いな、俺も最初は一揆を鎮圧するつもりだったんだよ。それで、一揆側の者たちを説得にいったんだがな。あいつらから『頭になって下せえ』と頼まれてしまってな。気づくといつの間には、俺は一揆の首領になっていた。がっはははは」

「笑い事じゃないぞ!」

 秀綱は、怒りをぶつけた。


「だがなあ、仕置き軍のやつら、碌なもんじゃねえぞ。逆らったら、村人を斬りやがる。それを間近に見て、俺は我慢ならなくなってな」

 盛周は、その場面を思い出したのだろう。怒りを滲ませた。その心境は、秀綱にもわかる。


「しかし、一揆が各地を起こり始めた。本格的な追討がこれから行われる。上杉は、庄内に直江鐘続を派遣するようだ」

「上杉家筆頭の重臣直々か。俺も認められたもんだな」

「感心するのはそこじゃない! お前らは総勢6000の軍勢に攻められることになるんだ」

「俺らは、せいぜい1000か。終わったな。わっはっはっは」

「笑い事じゃないぞ」

 秀綱は、盛周をたしなめた。


「では、最後にお前と戦って、俺の人生を締めくくろうか」

「そんなことはしたくない。そこで、教えろ。確か、がけ下に深い淵のある川が流れていたな」

「ああ、それなら、すぐそこだ。ああ、なるほど。わかった」

 盛周は、ニヤリと笑った。


「一騎打ちで、俺はお前を討つ。その際に、お前はがけ下に落ちろ」

 秀綱は、狂言を提案した。


「俺はいいが、一揆に参加したものは、どうなる?」

 盛周はそこが気がかりであったようだ。


「首領が死んだら、そのまま降伏すればいい。一揆の頻発で、仕置き軍も今後の見直しを行うようでな。多少の隠し田には、目をつぶるらしい」

「わかった。そのあたりが落としどころのようだな」

 盛周は、そういって、帰っていった。



 数日後、兼続率いる軍勢が到着した。山上に陣を張っていた秀綱は、共を連れて、兼続の陣に向かった。


「おう、これは鮭延殿。御足労をかけ申した」

 兼続は、本陣で秀綱を迎えた。


「最上の名将 秀綱殿であれば、我らが到着する前に攻め落としておるものとばかり思うておりました」

 兼続は、涼しげな声で語り掛けた。

――これは皮肉か。いや、我らを疑っているか――

 兼続も、かつて秀綱が、盛周と親しい間柄であったことを知っている。庄内の上杉家への服属を認める際に、最上家の近い領主たちを保障するように迫ったことがあった。


「友人を責めるのは、忍びないことだとは存じまするが、天下の命を優先で願いますぞ」

 兼続が、厳しく言った折であった。


 盛周たちが籠った城から、太鼓と鐘が打ち鳴らされた。同時に、城門が開かれた。一揆勢は、城を打って出て、上杉軍に突撃をかけてきた。先頭には、馬上で鉄球を振り回しながら、兵を蹴散らす盛周の姿があった。


「あれが報告のあった鉄球ですか」 

 兼続は冷静に見ていた。だが、勢いのある突進に、上杉軍は一陣、二陣と突破されてしまった。さらに

、盛周は本陣に迫った。


「兼続殿、少し兵をお貸し願いたい」

 兼続は立ち上がった。槍と馬を兼続の小姓から受け取った。そして、秀綱は20名ほどの兵を借りて、盛周の前に立ちふさがった。




兼続軍に突進をかける池田盛周

その盛周と秀綱は、次回一騎打ちを行います。

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