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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第2章 奥州仕置き編

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直江兼続の野望 上杉家を北の覇者に

奥羽州仕置きを貫徹すべく、庄内で発生した一揆の鎮圧のため、上杉家は兼続が出陣決めます。

 秀綱は、友の池田盛周が一揆側についたことに愕然とした。

――今、一揆側に立つということは、天下に対して謀反をしたのと同義なのだぞ――

 

 小田原に理由なく参陣しなかった家は、秀吉の奥州仕置きで潰された。その筆頭になったのは、葛西家や大崎家であった。

 大崎家は、最上義光の正室 北の方の生家である。最上義光は、大崎家の家臣の一部を召し抱えることになった。


 そして、奥州仕置きの後、検地に対する反対の一揆が各地で起こった。その一揆の指導層には、取り潰された家の牢人たちが多数参加していた。一揆ではあるが、内乱状態であると言った方が正しい状況だった。



◇◇◇

 庄内での一揆勃発の報は、越後の上杉景勝の許にも知らされた。庄内の上杉軍も劣勢である報が、次々と春日山城に知らされた。


「いよいよ上杉殿の援軍が必要になって参りました」

 検地の責任者である秀吉配下の五奉行の一角 大谷義継の家臣が、景勝の助力を乞うために春日山城に駆けてきた。対応した兼続は、使者を城下で休ませて、春日山城本丸に向かった。


「殿、此度の庄内への援軍、某が参ろうと存じます」

 兼続は、単独で景勝に会えるほどの信頼を得ている。この時、兼続は、人祓いを命じていた。


「お主が参らねばならぬほどか」 

 景勝は、表情を変えずに言った。景勝は寡黙な男であった。常に冷静沈着である。それが、戦で将兵に安心感を与えていた。その景勝の、舌となり将兵を鼓舞する役目を兼続が担っていた。


「はい。以前申し上げた上杉家が覇者となるために」

 景勝は、ピクリと眉を動かした。続けよ、という意味である。


「未だ関白殿下を、下賤な者から成りあがった者と内心では軽侮する者が絶えませぬ」

 景勝は頷いた。そのようなものは、家中にも未だにいる。上杉家は謙信公以来の武門の誉れの家柄である。それを誇っている者ほど、その傾向は強い。

 そのため、五奉行の石田三成と親交を深め、豊臣政権内で重きをなす景勝と兼続に対し、厳しい視線を送る家臣もいた。


「さればこそ、上杉家は関白殿下の忠実な家臣としてふるまわねばなりません」

 兼続は、力を込めて景勝に迫った。


「認めましょう。秀吉は、運によって天下をつかんだのではありませぬ。織田信長、武田信玄、さらには謙信公ですら成し遂げられなかった天下統一をなした稀代の英雄であると」

 景勝も同意した。


「その英雄の許で、力をつけることこそ、上杉家の発展の道でございます。今の混乱期を治めるために全力を尽くすことこそ、かつて謙信公が足利幕府を支えたように「義」の家の使命であると愚考いたします」

 景勝は、誰よりも謙信を慕っていた。謙信のような名声を得て、かつての上杉家の隆盛を取り戻すことを自身に課していた。


「さればこそ、上杉家は関白殿下の忠実かつ信頼できる、かつての足利幕府の管領職のような存在にならねばならぬのです」

「それが、北の覇者になれということだな」

「はっ。奥羽さらに関東のことは、上杉に任されれば問題なしと関白殿下に知らしめる好機でございます。関白殿下のために、上杉は某を出した。関白殿下に刃向かうものは上杉は容赦はせぬと、天下に宣言するのです」 

 兼続は、一気に景勝に畳みかけた。景勝は、やや沈思して首肯した。

「5千の兵を連れて行くがよい」

 景勝は、自身の脇差を兼続に与えた。

「ははっ、殿に成り代わって叛徒を一掃いたします」


 兼続は、使者の許に戻った。

「ご使者殿、我ら上杉家は援軍を早急にお送りいたす。兵数は5000。指揮は、不肖ながら某が取り申す」

「兼続様、直々に! でございますか」

「左様。大谷殿にお伝え願いたし」

 使者は、望外の援軍の報に勇んで帰っていった。




 兼続は、屋敷に帰って、戦の準備を進めた。家臣たちを各地に派遣し、兵糧や進軍路の城への前触れ、用意できる鉄砲の数の算出などを進めていた。

 深夜、一段落して兼続は、一杯酒を飲んだ。盃は、かつて兼続が景勝に小姓としてつけられた際に、謙信公から賜った物だった。


「上杉家は武門の家柄。義を大事にする家柄だ」

 兼続は呟いた。


「そうだ、かつては秀吉もそうだった。誰よりも信長に忠実に仕えた家臣だった」

 兼続は、盃をあおった。


「秀吉は後継者に恵まれておらぬ。まだ、波乱が起きよう。治世が保たれれば、上杉は能臣として信頼を得ればよい。波乱となったら……」

 兼続は、再び杯に酒を注いだ。


「いずれにせよ、奥州は黄巾の乱のごとく、民衆が蜂起している。それを抑えて、上杉は奥州に勢力を広げる良い機会だ」

 兼続は、盃に浮かんだ灯の光を見つめた。


「最上と伊達、潰すか否か。じっくりと見定めるとするか」

 兼続は、盃を飲み干して、寝所に向かった。



◇◇◇

「奥羽諸大名も、関白殿下の天下を民に知らしめるため、出兵をすべし」

 奥州仕置きの責任者である蒲生氏郷から、奥州各諸大名に布令が届いた。


 最上義光の許にも、出兵の命が出された。そこには、【庄内の一揆を討滅すべし 総大将は鮭延典膳を出すべし】とされていた。


 義光からその旨を伝えられた秀綱は、頭を抱えた。義光もその心情を理解しているため、辛そうな顔をしていた。

「病となるか」 

 義光は提案した。しかし、秀綱は首を横に振った。


「それで、最上家が関白殿下から睨まれてまなりませぬ。既に、大崎家の件で、奥州では最上家の出方が注目されておりますゆえ」 


 正室の実家が潰された最上家が、一揆を扇動していると疑われても不思議ではない。実際にそんなことをしていなくても、秀吉に扇動していると疑われればそれまでである。そう思われないように振舞わなければならない。


「参りましょう。それしかありますまい」

 上杉は、直江兼続が出張るという話だった。最上も、秀吉に面識のある秀綱が出なかればつり合いが取れないだろう。


 秀綱は、友である池田盛周と戦う覚悟を決めた。1000の兵を連れて山形を出発した。

次回は、再び兼続と秀綱が、一揆勢鎮圧のために顔を合わせます。

そこに、池田盛周が兼続本陣を急襲し、戦闘が本格化していきます。

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