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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第1章 最上家の武将 鮭延秀綱編

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政宗 小次郎を討つ

政宗は、秀吉に臣従を決断します。

そして、北条氏は敗れ、日本は秀吉による天下統一が達成されました。

秀綱は、会津黒川城にいる伊達政宗に宛てた書状を認めた。小田原への参陣を促す内容だった。


◇◇◇


 政宗は、秀綱からの書状に目を通した。小田原では、茶の湯と芝居などの娯楽まで演じられている事実に政宗は衝撃を受けた。

――空前の大軍を遊ばせても揺るがない力がある、ということか――

 政宗は、片倉景綱を呼んだ。


――猿面冠者さるめんかじゃも、私の登場を待っているわけだな そこにかけるしかなさそうだ――

 政宗は、小田原に向かう腹をくくった。


「お呼びですか」

 景綱は、政宗のいる書院に入ってきた。

「小田原に行く」

 政宗は、景綱に秀綱からの書状を見せた。


「妥当でしょうな」

 一読した景綱は、即座に応じた。


「ただ、気になることが……」

 景綱は別の書状を見せた。政宗が、小田原参陣が遅れていることを不安視し、秀吉に従うために政宗を排除して、弟の小次郎を後継にして伊達家存続を図る計画に加担する者たちの名が記されていた。


「こんなにか……」

 政宗は驚愕した。もしこの勢力が反旗を翻したら、伊達家は崩壊しかねない。

「それだけ、不安に思っている者が多いということなのでしょう」

 景綱は、淡々と話した。


「一晩、考えさせてくれ」

 景綱は、政宗の前を去った。政宗は、景綱からの書状を火にくべた。



 その夜、政宗は夢を見た。小次郎が、まだ幼い姿で竹馬に乗ろうとしていた。しかし、上手くできない。政宗は、自分が乗ってみた。手本とコツを教えてやった。何度か、小次郎は転んだ、政宗は、できると励ました。そこから何度か竹馬に小次郎は挑んだ。

 

 ようやく、小次郎は竹馬で歩めた。

「兄上、できました、できました」

 小次郎は、満面の笑みを政宗に向けていた。心底嬉しそうな顔であった。



 政宗は目が覚めた。外は弱弱しい曙光が差し込んでいた。ふと見ると、政宗の目からは涙が筋を残していた。

――そういえば、二人で竹馬で遊んだこともあったな――

 政宗は幼き日のことにしばし浸っていた。


「俺にもまだ涙が残っていたのか」

 政宗は、白い寝間着の袖で顔をぬぐった。

――どうして小次郎を殺せようか。しかし、このままでは、伊達家は滅びる――

 政宗は苦悩した。


――秀吉と一戦どころの話ではなかったのだな。これは、我らの負けだ――

 政宗は近侍の者を呼んだ。起床の準備をするよう申し付けた。伊達家の新たな朝が始まった。



 政宗は、母の義姫と小次郎を呼んだ。小田原に行く前に、母と弟に挨拶をするためだと家中の誰もが思った。その時、事件は起きた。


 政宗は倒れ、黒川城の奥の間に運ばれた。一方、黒川城不浄門ふじょうもんから小次郎の遺骸が運び出された。二人の母の、義姫も心労で倒れたと伝わった。

 小次郎の守役であった小原縫殿介おばらぬいどのすけは、城の一角で腹を切っている姿が発見された。伊達家中には、混乱が生じた。


「殿は、今、病床である」 

 片倉景綱が、家中の主だった者を集めて、経緯を説明した。

 

 伊達家では小田原参陣を前に、政宗を排しようとする謀反の動きがあったということ

 その一派が、政宗の毒殺を図ったこと

 政宗は一命を取りとめたこと

 謀反人は、小次郎を押し立てようとしたため、政宗が小次郎を成敗したこと

 義姫は、子供二人を失いそうになった心労で倒れたこと

 謀反の責任をとって、小原縫殿介が切腹したこと


 景綱は極めて淡々と話した。

 

「不安に思う者もいると思うが、小次郎様なき今は、政宗様を守り、伊達家一丸になって関白殿下の許に向かうしかないと心得られよ」

 景綱は一同をゆっくりと見まわした。一人一人と目を合わせるその姿勢は、各将の意思を問い詰めるかのようだった。


◇◇◇

 政宗は軍勢を率いて、小田原に参陣した。

 

 秀吉と会見する際に、政宗は白装束で秀吉に見えた。死を覚悟しているという意味であった。

 この姿を見て、秀吉は目を輝かせた。伊達政宗という、稀代の役者に晴れ舞台に賞賛を送ったのである。

「よくぞ参った。もう少し、遅れておったら、こことここが、離れておったがな」 

 秀吉は、政宗の首と背中を、手にした馬鞭で小突いた。政宗は恐縮した。


 秀綱は、会見を終えた政宗の許に向かった。秀綱の訪れに、政宗は、すぐに目通りを許した。秀綱の前の政宗は、一息ついた表情をしていた。


「小次郎殿の件、お悔やみ申し上げまする」

 秀綱は、早々に悔やみを述べた。政宗の表情は、少し晴れたように見えた。


「小次郎への悔やみを述べたのは、お主が初めてだ」

 政宗は礼を返した。


「義姫様から、殿には度々、伊達家の話を聞いておりましたゆえ。それに、会津の召し上げも決まったとか」

「もともと、会津は小次郎に任せるつもりだった。今となっては、惜しくはない。骨を折ってくれたそなたには悪いがな」

 政宗は、茶を喫していた。奥で茶の湯の宗匠でも来ているようで、秀綱にも出された。秀綱も作法通りに、茶を飲んだ。


「そなたは、俺がほしい言葉を言ってくれるのだな」 

 政宗は、秀綱に微笑みかけた。


「最上家の次に大事なお家のことでございますので」

 秀綱も、政宗に微笑みを返す。秀綱も政宗も、摺上原の戦いを通じて、互いに信頼を寄せていた。


「ここ関東に、本当は小次郎も連れてきたかった。まだ子のない俺にとっては、小次郎は大事な伊達の跡継ぎだったからな。関白殿下に引見し、兄弟の絆を示したかったのだ」

「胸中、お察し申し上げる」

 秀綱は再び、頭を仕えた。そこに菓子が運ばれてきた。


「せっかくなので、武蔵の地に小次郎の菩提を弔う供養塔を立ててな。奥羽を離れ、ただの兄弟として過ごせる場を作ってやりたくてな」

 秀綱は不審に思った。

――なぜに、奥羽でもなく武蔵にわざわざ――

 

 菓子を口にしながら、秀綱は考えた。ややあって、秀綱はふと、ひとつのことに思い至った。


――まさか、小次郎殿をそこで匿っているのではないか?―― 

 秀綱は、真意を探る目を政宗に向けた。政宗は笑って、はぐらかした。


「どうじゃ、この菓子。甘いであろうか」

「そうですな。甘うございますな。されど、後味は悪くはございませんな」


 政宗は、満足げに頷いた。


 伊達家は、会津を没収された処分を受け入れた。


 天正18年 1590年 8月

 小田原城は、秀吉の前に降伏・開城した。

 

 北条氏政は切腹し、関東に覇を唱えた北条氏は、滅亡した。

 関東は、秀吉の勢力下に組み込まれた。伊達政宗も臣従したいたことで、秀吉の天下統一は完成したのであった。


 秀吉は、その後、関東北部の要衝 宇都宮城に入城した。ここで、奥州への統治に入る旨を宣言した。


 世にいう奥州仕置きである。この奥州仕置きが、奥羽に新たな動乱を引き起こしていくもである。


秀綱活躍編は終了


次回は、奥州仕置き編に入っていきます。


章立てでやりたくなったので、以降は第二章にしようと思いました。

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