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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第1章 最上家の武将 鮭延秀綱編

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稚児の祭衣装じゃないか!

小田原の陣が開始されます。

最上義光は、父の病のため、遅延を許されました。


そして、秀吉の目は、伊達政宗の向けられています。

ただ、秀吉は政宗には、特別な興味を抱いていることがわかります。

 秀綱は、最上義光の書状を携えて小田原を目指していた。志村光安も一緒であった。面会の相手は、秀吉の取次役である徳川家康であった。


 1590年 天正18年 4月 最上義光の父 最上義守もがみよしもりが病に倒れた。年齢は70である。死の床についた、と言っていい病状であった。


 折しも、豊臣秀吉は、小田原城を本拠とする北条氏政ほうじょううじまさの討伐に参加するよう、日本全土の大名に通達した。もはや時代は変わった。豊臣秀吉が天下を掌握するか否かではなく、豊臣秀吉の天下を認めるか否かであった。

 

 義光も、そこに異論はなかった。義光も、小田原に向かう準備を進めていた。その矢先に、父の義守が倒れたのであった。


 秀綱と光安は、義光に呼ばれた。参陣が遅れる旨を認めた書状を家康に届けてほしいという命令であった。


 義光は、かつて家督相続を巡って、弟を就かせて兄の義光を廃嫡しようとしたことがあった。それが、父と子の争いとなった。このことがきっかけで、義光は譜代の臣よりも、自身が能力を認めた家臣を積極的に採用し、今の最上家家臣団が結成されることになった。

 その最上家家臣団の象徴の一人が、秀綱であった。


「秀綱、光安、お主たちは家康殿や秀吉殿に認められた者だ。そなたらを先に派遣することで、最上家の誠意として主張したい」 

 義光は、秀綱と光安に話した。


「すまんな。あのバカ親父の所為で、迷惑をかける。だが、いまさらになって、父と出かけた思い出の地や幼き日の思い出がふとわいてきおってな。せめて、最後くらいはゆっくりと送ってやりたいのだ」

 義光の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。秀綱も光安も、書状を受け取った。


 小田原に二人が向かう日。義光に脇に駒姫がついて、見送ってくれた。


「ご武運を」 

 駒姫の言葉の真意を秀綱は知っている。


「最上家のために、最善の道を選びます」 

 秀綱の言葉に駒姫は頷いた。


◇◇◇


 10日後、秀綱と光安は、家康の陣に到着した。家康は、甲冑に陣羽織という戦場の衣装で秀綱たちに面会した。

 秀綱は、義光の書状を家康に差し出した。家康は、読み終えると立ち上がった。


「秀綱、光安。いまから殿下の本陣にいくぞ。ついて参れ」

「今からで、ございますか」 

 秀綱は面食らった。


「左様。既に早馬で義光殿の状況は伝えられておる。殿下も、義光殿の事情は理解しておった。だが、義光殿のこと。誰か使者を遣わすはずと申しておってな。ついたら、殿下の陣に連れてきてくれと頼まれておったのじゃ。ついてすぐで済まぬが、ついてきてくれ」 

 家康の言葉は穏やかだったが、有無を言わせぬ迫力があった。

 秀綱と光安は、着いたままの姿で秀吉の前に上がった。


「おう、お主らであったか。久しいな」 

 甲高い、愉快な声で秀吉は、秀綱と光安に対面した。

「関白殿下におかれましては、我らに格別なご配慮をいただき、御礼申し上げます」

 光安は、秀吉に型通りの挨拶を述べた。


「光安、何を堅苦しいことを。儂とお主らの間柄で、形式無用じゃ、んん、お主ら衣装が草臥れておるな」

 秀吉は、秀綱と光安の姿を見て、眉に皺を寄せた。


「はい、家康殿に挨拶をしたらすぐに殿下に面会すべき旨を言われましたので、とるものもとりあえず、御前を汚しましたもので」

 光安が、そつなく言葉をつなぐ。


「左様か、それはいかんのう。光安、お主にはこれをやろう」

 秀吉は、着ていた陣羽織を脱いで、光安に着せてやった。


「これは、畏れ多い」

 光安が恐縮し、手ずから拝領しようとした。


「よいよい、無理させた儂が悪いのじゃ。せめて着させてくれい」 

 満面の笑みで、秀吉は光安に赤い陣羽織を着せた。見事なまでに似合っていない。


「秀綱にも必要じゃな。家康殿、お主の陣羽織を秀綱に着せてやってくれ」

「承知仕りました」 

 家康も、秀吉の言葉で橙の陣羽織を脱いだ。そもそも、陣羽織はその下の甲冑と合わせて色を選ぶものである。平服で合わせても、なかなかに似合わない。秀綱も、家康に着せてもらったが、やはり似合っていなかった。


「秀綱、光安、お主らの訪問嬉しく思う。義光殿の真心と事情、しかと感じたぞ。安堵いたせ」

「ははーっ」 

 子供の祭り衣装のような格好の二人は、秀吉に頭を下げた。


「使者はこちらから送っておくゆえ、お主らはこの小田原の諸大名の陣を楽しんでいってくれ。そして、お主らの親戚の政宗めにも、こちらに顔を出すように伝えてやってくれ」

 秀吉は、そう言い残して、陣を離れた。


 家康も、自陣に秀綱たちを引き連れて戻った。


「殿下は、お主らの、特に秀綱殿が政宗と共闘した縁で、臣従するよう説得せよとの仰せじゃ。それは、わかったであろう」

 秀綱は頷いた。

「この役目は、秀綱しかできぬでしょうな」

 光安も家康の言葉を指示した。


「しかし、あの政宗殿が従うかどうか」 

 秀綱の言葉に、三人はため息を漏らした。


「言葉を尽くして説得するしかあるまい。殿下は、可能ならば政宗殿とは戦いたくはないと思っているのだ」

「殿下は、そこまで政宗殿を買っているのでしょうか」

 家康の言葉に、光安は疑問をぶつけた。


「正直、評価している部分はある。伊達家に従う家は奥州では未だに多い。敵に回すより、味方にしておく方が得だとお考えだ。全面戦争になった場合、戦線が無用に拡大しよう。小田原の比ではなくなるゆえのう」

 光安も、秀綱も納得した。確かに、小田原城に一族籠城する北条よりも、広大な奥羽の地で、各地で散発的に戦が発生する方が、長期化し、収まりもつかなくなるだろう。


「それには、殿下自身、今の状況に物足りなさを感じておられる。政宗殿のような、骨のある相手がいないと退屈なのじゃろう。殿下は、政宗を間違いなく気に入っておる」

 ほうっ!と秀綱は息をついた。


――それは、思ってもいなかったな――

 秀綱は新たな視点を得た思いがした。政宗も、たしかに派手好きだ。それは、秀吉にも通じるところがある。光安も、秀綱に視線を送ってきた。


「家康様。この小田原には、茶人も招き、茶会も開かれておるとか。芝居小屋なども設けられておるのでしょうか」

 光安は、家康に尋ねた。


「あるようじゃな。何なら、家臣に案内させよう。それもまた、殿下の思惑でもあるからな」

 家康は、服部正成を呼んだ。正成は、家康の忍び頭の武士で、半蔵のほうが通りがよい男である。


――なるほど、この格好で歩かせて、最上家の臣従を諸将に知らせる考えか――

 秀綱は、秀吉の思惑を感じ取った。


――ただなあ、この格好は稚児の祭り衣装じゃぞ――

 さりとて、秀吉と家康からの拝領品である。無碍にはできない。


「まあ、秀綱。これは、我らの芝居小屋。舞台じゃ。むしろ誇らしく、観衆に印象付けようではないか。出羽の最上家、ここにあり、とな。そして、お主の目に入ったものを、そのまま政宗に知らせてやれ。殿下は、お主の芝居を観たいと申しておる、とな」

 光安は大笑した。だが、秀吉の考えがわかったのは収穫だった。


 秀綱と光安は、正成の案内で小田原の茶会に参加し、芝居を見物し、風流踊りに庶民や兵たちと混ざった。どこでも奇異の目、好奇の目にさらされた。ただ、間違いなく注目を集めた。


――小田原の陣では、政宗と言う名優の登場を待っている、ただし、観衆は少々待ちくたびれている――

 秀綱は、その思いを文に綴って、政宗の許に届けさせた。

次回は、政宗参陣編です。


以前、共闘した政宗が、小田原に遅ればせながら参じます。


しかし、政宗は許されますが、元気がない。秀綱は、政宗を見舞います。

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