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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第1章 最上家の武将 鮭延秀綱編

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田鶴の決意

出羽の最上家の領地 秀綱の領地に向かう間に。田鶴はいろいろ考えが整理されていきます。


途中、畑谷城に立ち寄り、田鶴は生き直す決意を抱きます。

 嘉蔵と田鶴たづは、出羽の国 畑谷城に入った。ここから先は最上領である。


「田鶴殿、ここから最上領に入っていきます」

 嘉蔵の言葉に田鶴は頷いた。覚悟はできていた。


 田鶴は、秀綱が蘆名家への内応を見破った上で騙し討ちをした赤田日向の妻であった。田鶴は、一度は遊女に身を落としても生き延びようと思っていた。それで、夫の仇も討てればと思っていた。

 しかし、遊女として薹が立っているだの、戦場での遊女となって屍を晒すことになると脅され、躊躇した。そこで、嘉蔵に新たな生き方を提案されて、秀綱の領地に向かう途中であった。


 赤田日向が伊達家への裏切りを画策した原因は、田鶴が伊達家家臣から手籠めにされて、泣き寝入りをしたことであった。伊達家中で力を持っていた相手を見るうちに、赤田日向は怒りを抑えきれなくなったのだろう。伊達家そのものを滅ぼすことで、復讐を遂げようとしたのだろうと田鶴は思っていた。


 しかし、道中で嘉蔵と歩んでいるうちに、田鶴はいろいろ想いを巡らせる時間ができた。


 田鶴は、もともとは赤田家と同じ国人領主の娘であった。親同士の誼があり、日向は田鶴と縁組をした。しかし、日向は田鶴を大事にしてくれた。田鶴の家は、戦の中で滅亡した。田鶴だけが残った。その田鶴を日向は大事にした。


 しかし、その手籠めの一件以後、日向は田鶴を求めなくなった。決して嫌っているわけではないのはわかっていた。それはわかっていた。でも、どうしたなのかはわからなかった。


――きっと、私を見るたびに、自身の弱さを見せつけられるように感じたんだろう―― 

 田地は、今ではそう思っている。だからこそ、その克服のために伊達家を裏切ろうとしたのに違いない。道々考えながら、田鶴はそう確信していた。きっと多くの謀反なども、その根源は弱さから生じているのではないかと田鶴は思った。


――でも、そんな追い詰められた感情で行う謀反など成功するわけはないのだ――

「馬鹿なお方だったな」 

 田鶴は、日向のことをそう考えた。憎しみや怒りなどはなかった。ただ、哀れを感じるだけだった。しかし、愛しい気持ちも残っている。


――この思いをふっきるためには、米沢や会津を離れた出羽の奥地に行くのも悪くはない―― 

 寂しさと期待の混じりあう感情を有して、田鶴は最上家の領地に足を踏み入れえた。




「嘉蔵が警護するなど、そなたは秀綱殿の後添いか」 

 畑谷城主 江口光清(えぐちあききよ)は、嘉蔵と田鶴を本丸に招き、休息を取らせてくれた。

 光清は、冗談めかして田鶴に話しかけた。


「まさか、そんな畏れ多い。私は死にきれず、さりとて生ききれない哀れな女子にございます」 

 田鶴は、光清の冗談に応えた。光清も、嘉蔵から事情は聞いているはずだ。しかし、それを咎めるような気もないらしい。


――仇かも知れない私に警戒などしないのだろうか―― 

 田鶴は、最上家の警戒のなさが逆に気にかかった。


「おい、嘉蔵。妙をを呼んで参れ」 

 光清は、嘉蔵に命じて人を呼びに行かせた。狭い部屋に、光清と田鶴が残された。


「嘉蔵は面白いやつでな」 

 光清は、田鶴が聞いているかどうかに興味はなく、独り言のように話し出した。


「遊郭などでは、子供が生まれても邪魔なだけでな。女の子でも器量が悪ければ穀潰し。男でも貧弱だったら、穀潰しと蔑まれる。あ奴も、そういったところで生まれた奴らしい。詳しくは知らんがな」

 光清は、茶を口に含んだ。田鶴にも飲むように勧めた。田鶴も一口喫した。

 薬草も入っているのだろう、独特の香りと味がした。疲れを癒す茶であると光清が説明した。


「光清様、妙を連れてきました」

 嘉蔵が襖を開けた。下女の姿の女が頭を下げていた。


「妙、こちらは嘉蔵がお連れした田鶴殿だ、挨拶をしなさい」 

 光清が促すと、妙という女は頭を上げた。田鶴は息を飲んだ。左目に刀傷を受けていた。目も明かないのだろう。肌が白いので、余計に傷跡が無残に見えた。


「この妙は、薬草の知識が豊富でな。だが、山野に赴くのはこんな目でもあるので、危険じゃろう。そこで、足軽の男を護衛につけていったら、先日、その者から妻に迎えたいという話をされたようじゃ」

 妙は頬を赤く染めた。


「この者は、戦で目を失った。普通であれば、そんな女生きていくのも難しかったじゃろう。しかし、嘉蔵はこの妙を連れてきた。落ちた花でも根が生きていれば、また華を咲かせる。嘉蔵の信念じゃな。その妙は、今では畑谷城では医師顔負けの存在じゃ。その茶も、妙が入れたものじゃて」

 

 田鶴は、涙が頬を伝うのがわかった。夫から暗に否定された。自分の落ち度でもないのに。

 実家も既になく、頼れる夫の心も、実際には離れてしまったかも知れない。

 この世のどこにも私の居場所がない、と暗に気づいていたのかも知れない。


――この妙も、どれほどの絶望を感じたのだろうか――

 田鶴は、目の前の女性にこれほど勇気づけられるとは思わなかった。


「秀綱様は、こういった方々を養うことを許してくれています。もし、秀綱様を仇だと思うならば、それも仕方ありません。けれど、武士の身は相身互いのはず。もしできるならば、秀綱様を許してやってくださいませんか」

 嘉蔵は、田鶴に頭を下げた。


「もし、秀綱が許せないなら、この畑谷で過ごしてもよいぞ。お主のような別嬪なら、求める武士など両手で余るぞ。何なら儂でも」

「江口様、お年を考えてください」 

 光清に嘉蔵は冷たく突っ込みを入れた。


「あはははは」 

 田鶴は、笑った、笑えた。心から笑えた。

「よかった。田鶴さんはずっと悲壮な顔をしていたから、気になっていたんですよ」

 嘉蔵は、安堵した顔を見せた。


――ここだ。私が生き直せるのはここなのだ―― 

 田鶴は、心を決めた。

 生き場所が決まったように思えた。


 一つ、田鶴は気になったことがあったので尋ねた。

「嘉蔵殿がそこまで心服している秀綱様は、素晴らしいお方なのでしょうね」



「はい、大好きなお方ですから」

 嘉蔵は少し照れたような顔をして言った。


――この地で生きて行こう――

「光清様のお申し出ありがたく存じますが、私は景円寺に参りとうございます」

 田鶴は、力強く光清に言った。


「なんじゃ、やはり爺は相手にしてくれぬか」 

「既に三人もお子様がいるでしょう。年を考えましょうよ」

 光清に毒づく嘉蔵を見て、田鶴は再び、心から笑った。

 

 



ここで、駒姫と田鶴の内面を描いて、性格を紹介しました。


妙と言う少々モブ的な人も出しましたが、折角なので、この後でも、少々役割を背負ってもらおうと考えています。


これで、次回小田原参陣など、少し駆け足で天下とのやりとりを描いていきます。

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