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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第1章 最上家の武将 鮭延秀綱編

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宴の駒姫 ~駒姫の想い~

前回の戦勝の宴を、駒姫の視点や感情で見ています。


このような想いで、秀綱たちの前に出ていました。


駒姫の性格理解につなげてもらえればと思っています。

 駒姫は、幼いころから賢かった。一を聞いて十を知る才知があった。見目も麗しく、才も豊かであった。そのため、父の最上義光、母の北のきたのかた(大崎夫人)からも愛情を受けて、育った。


 駒姫が5歳の時、義光の小姓の中に、駒姫が兄のように慕っていた武士がいた。駒姫は、『庄次郎しょうじろう兄様あにさま』と呼んでいた。庄次郎兄様も、駒姫を妹のように接してくれていた。しかし、庄次郎兄様は、ある日を境に姿を見せなくなった。


「父上、庄次郎兄様はどこに行ったの?」

 駒姫は、気になって義光の尋ねた。義光は、言いにくそうにしていたが、やがて


「庄次郎は、領地に帰っている時に戦に巻き込まれて死んだ」

 と、教えてくれた。

 まだ幼い駒姫は、完全に理解できていなかったが、もう二度と会えないとわかって、悲しい気持ちになった。


 それから少し成長し、駒姫は8歳になった。駒姫は戦に出る将兵の激励をするため、山形城で見送りに出た。その中に、庄次郎兄様に似た雰囲気の兵がいた。駒姫は、気になった。死んでほしくなかった。

「死なないで帰ってきてね」

 駒姫は、その兵と約束をした。


 その後、駒姫は母の北の方に呼ばれた。

「武士にとって、名誉は必ずしも生きて帰ることではありません。生き恥をさらしたら、その武士はもう武士として生きることはできなくなります」

 北の方は、「生きて帰ること」を約束してはいけない。その希望を口にしてはいけないと厳しく叱った。


「では、なんて声を掛ければいいのですか」

 駒姫は北の方に尋ねた。

「その時、その時によって、武士はどう生きるか、どう死ぬかを選ばなければなりません。それが間違わないように『ご武運を』と声をかけるのです」

 北の方は教えてくれた。それ以来、駒姫は将兵の生還を願いながら、『ご武運を』とだけ言うようになった。


 しかし、武運つたなく、討ち死にする者も何人もいた。見送った将兵で、顔を覚えていた者が帰りにいない時、駒姫の心は暗澹とした。


 だからこそ、生きて帰ってきた者たちだけでも笑ってもらいたいと駒姫は思っていた。だから、琴の演奏をわざと間違えたり、とぼけたようなやりとりをして、凱旋した将兵を駒姫なりに楽しませていた。

 

 駒姫は生きて帰ってきた者たちの笑顔を見ると、駒姫も少しだけ明るい気持ちになれた。



 鮭延秀綱が、家臣を連れて、伊達家の援軍に行くと駒姫も聞いた。秀綱と10人の家臣たちの顔を駒姫は覚えた。

――でも、きっとこのうちの何人かは帰ってこない――

 駒姫は、悲しい笑顔で秀綱たちを見送った。



 伊達家に行った秀綱たちの様子は、逐一忍びが教えてくれた。

 秀綱と伊達政宗の間に確執が生じたこと

 秀綱と成実が、対立したということ

 

 駒姫は聞くとはなしに聞いていた。家臣たちに確認したこともあった。そんな状況で、強大と言われる蘆名家と戦えるのか心配だった。みんな死んでしまうのではないかと不安になった。


「摺上原の戦いで伊達家が勝利。秀綱殿たちの策もはまり、勝利に貢献。なお、わが軍の将兵一人として死者なし」


 会津に送っていた忍びからの報告を駒姫は信じられない思いで聞いた。宴に顔を出すと、秀綱と10人の家臣たちが、誰一人と欠けることなく帰ってきてくれた。こんな明るい気持ちで迎えた凱旋の宴は、駒姫は初めてだった。


 義光が。駒姫も最上家の駒の一つと言った冗談も、駒姫は聞き流した。

 しかし、いざと言うときは、家を守る駒になる覚悟を決めている。

――最上家を守るために命を懸ける家臣たち 彼らを守るために私も命を懸ける覚悟はある――

 どこまでの覚悟か駒姫自身も、わかっていない気もするが、いざと言う時に生き恥を晒してはならないとは思っていた。


 宴で変わらずに調子っぱずれな演奏で笑いを誘った。皆が笑ってくれた。駒姫も心から笑えた。


 宴の終わりに、駒姫は気になっていた秀綱と話をすることができた。

 秀綱は、駒姫の演奏の間違いをわざとだと見破っていた。駒姫は驚いた。


 だからこそ、この人は信頼できると駒姫は思った。自身の想いを知ってほしくなって、ご武運をという言葉に込めた思いを秀綱に伝えた。

 それだけでなく、一人も死なせずに帰ってきてくれたことが、駒姫にとって最も優れた武功であると秀綱に伝えることができた。


 今までにない満足感のある宴であった。

 義光が起きるまでは……。


 起きた義光は、「娘はやらん」などと言って、秀綱と取っ組み合いになってしまった。

 酔った父の暴挙を駒姫は恥ずかしいと思った。


 でも、義光の膂力は強い。秀綱も投げてはならぬと考えて、義光ともみ合っている。


 駒姫は、周囲を見回した。この二人を止められる人はいないか考えた。


――志村光安……ダメだ。優男には止められない――

――氏家守棟……ダメだ おじいさんだから、死んじゃうかも知れない――

――堀喜吽……守棟とおんなじ――

――秀津の家臣の人たち……ダメだ、主君とそのまた上の殿を止められないだろう――


 駒姫は一通り見まわして、延澤光延を起こすしかないと判断した。


「延澤殿、父上と秀綱殿が相撲を取っていますよ。延澤殿を差し置いて、自分たちのどっちが強いか決めようとしていますよ」 

 駒姫は、光延の耳元で囁いた。

 光延は、パッと飛び起きて、秀綱と義光の二人を認めた。


「なんじゃあ、殿も、秀綱殿も。儂を差し置いて相撲など狡いではないか。儂も入るぞ」

 こう叫んで、光延は二人を投げ飛ばした。


「どうじゃあ!」


 そこまで言って、光延も義光も眠ってしまった。

 秀綱は苦笑を浮かべていた。駒姫は、得意げな顔を秀綱にむけて浮かべていた。


 

次回はもう一人内面を紹介したい女性

田鶴のことを描きます。


景円寺に向かう道中を舞台に、田鶴の内面を描く予定です。


ごめんなさい 小田原の役などの話は、その後に駆け足気味に書いていきます。

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