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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第1章 最上家の武将 鮭延秀綱編

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最上家のアイドル 駒姫②

駒姫の家臣への想いを秀綱は初めて知り、感激します。

「ご武運を」という言葉は、ありきたりの挨拶ではなく、駒姫の真の願いでした。

 秀綱は、駒姫の反応を伺っていた。宴に付き合って、疲れているのではないかと思っていた。


「いいえ、家臣の方々の楽し気な顔が見られるから、つまらないなんてないですよ」

 駒姫は微笑しながら話した。


「しかし、琴はお上手ですな。わざと調子を外されて笑いを誘っていたでしょう」

「あちゃあ、気づかれていましたか」

 悪戯が見つかった子供の顔を秀綱に向けた。


「長く稽古をされていたはずですからね。お上手な流れが急に狂ったので、おかしいと思っておったのです」

「皆が笑ってくれるので、そうしているのです」

――やはり美しい。殿に似なくてよかった――

 駒姫の微笑を湛えた横顔に、秀綱は惹かれた。夫人似でよかったと心底から思った。


「本当の腕前を披露して下されば良いではござらぬか。わざと笑いを誘わなくても」

「家臣の方々の笑い顔をみたいですから。感心されるよりも、印象に残るでしょう」

「なぜ、そこまで笑わせることを狙うのですか」

 秀綱の疑問に駒姫はやや間をおいた。


「皆さま、戦場では怖い顔になるでしょう。それに、風流に興味がない人もやはりおります。そうした方々でも楽しめますので」


――この少女は、そんなことまで考えているのか――

 

 それがいいことかどうか、秀綱には判断しかねた。ただ、主君の姫が、家臣のことをそこまで考え、自分を落としてでも楽しませようとしてくれることに感激した。


――そういえば、武にしか興味がないような我が家臣も、楽しんでいたな――

 秀綱は、先ほどの宴の様子を思い出していた。


「秀綱殿、ありがとうございます」

「何が、でございますか」 

 駒姫の急な言葉に、秀綱は戸惑った。


「此度の戦で、誰も死なないで帰ってきてくれたことです」

 駒姫は、真剣な顔に変わっていた。


「そんな。戦場で、敵将の首など挙げてもおりませんのに」

「いいえ、戦の前に内応を見破ったと聞きました。でも、私が嬉しいのは、そこではありません」 

 駒姫は、秀綱に向って一歩近づいた。


「私はいつも戦前に山形に寄ってくれた将兵を見送っています。声をかける時は『ご武運を』と声を掛けます。掛けられない時は、心の中で念じています。『ご武運を』 この音羽の意味をご存じですか」

「うーむ、勝利を願ってのことと思っていましたが」 

 駒姫はそうではないという風に首を横に振った。秀綱は、腕を組んで考えた。


「すみませぬ。わかりませぬな」 

「そうだと思います。たいていは、勝利を願っての言葉だと思います。しかし、私は生きて帰ってきてほしい。そう思っています。けれど……」 

 駒姫は、少し言葉を飲んだ。秀綱は続きを待った。


「けれど、戦の状況によっては、死を選んだ方が誇らしい場面もあるでしょう。逃げた方がいい場面もあるでしょう。どのような振る舞いが、武士として取るべき道なのか、変わってくるのでしょう。だから、私は生きて帰ってきて、とは言えないのです。武士として最良な行動をとってほしいと願うしかないのです。ですから、『ご武運を』としか言えないのです」

 駒姫は寂しく笑った。そんな思いで言葉を掛けてくれているとは思ってもいなかった。秀綱は頭を下げた。


「私が見送った方々の中で、その後、帰ってこなかった方も何人もいらっしゃいました。だからこそ、生きて帰ってきてくれたことが嬉しいのです。父は何を考えているかわかりませんが、秀綱殿が一兵も損なわないで帰ってきてくれたこと。これは、私にとって、首級を上げる以上の功績だと思っています」

 秀綱は、駒姫の前に跪いた。


「ただ今の姫のお言葉。秀綱、なによりも誉れでございます」

 駒姫は、アハハと子供らしく笑った。


「秀綱殿、畏まらないでください。皆さまの笑顔を見ることで、戦場で命をかけないで済む疚しさをごまかしているだけなのですから。あ、いけない、父が起きそうです」

 駒姫は、そう話すと、急いで広間に戻っていった。


「こら、秀綱!いかに武功を立てたとて、駒姫はやらんぞ!」

 起き上がった義光が、秀綱のところに駆け寄ってきた。目はまだトロンとしている。


「殿!そのようなつもりはございませぬ!第一、殿を義父と呼ぶなんて、まっぴらごめんでございます」

「何!お主。駒姫を要らぬと申すのか。お主如きには勿体ない姫じゃぞ!なぜ、わからんのだ!」

 そういって、義光は秀綱に組み付いてきた。


「父上、止めてください!」 

 広間で駒姫が顔を真っ赤にして怒っていた。


――殿がわけわからない酔っ払いになってしまった!――


 膂力のある義光と組み合っている。秀綱も負けないとはいえ、殿を怪我をしないように放り投げるまでできるとは限らなかった。それを見た光安が事もあろうに、

「残った、残った」と煽ってきた。秀綱と義光の周りに、大勢集まってきた。


「殿、負けないでください。あ、でも勝ってもいけないのかな」 

 綱元の声が聞こえてきた。


――おい、悠長なことを言ってないで、助けろ――

 秀綱は思った。


「殿、秀綱如きに負けることはありますまいな」 

 脇から氏家守棟が義光を煽る。


「何を申すか。儂は主君ぞ!家臣ごときには負けぬわ」 

 義光は、腕に一層の力を入れてきた。


――これ、勝っちゃいけない流れか――

 秀綱はほとほと困った。ふと見ると、駒姫が寝ている延澤光延に声を掛けているのが見えた。


――まさか……――

『わっはっは。そのまさかだろうな』

 太史慈の声が脳裏に響く。


 光延の巨躯が跳ね起きるのが見えた。


「なんじゃあ、殿も、秀綱殿も。儂を差し置いて相撲など狡いではないか。儂も入るぞ」

 そうして光延は、まず義光を秀綱から引き離して、難なく投げ飛ばした。

 その次に、狙いを秀綱に絞って、組み合ってきた。二度、三度、投げを躱したが、最後は力任せの引っこ抜きで持ち上げれ、秀綱も投げ飛ばされた。


「どうじゃあ!」 

 光延は、雄たけびをあげた。宴で最高潮の盛り上がりを見せた。


 義光はそのまま、寝入ってしまったようだ。おそらく、覚えていまい。光延も同様だろう。最上家の幻の一番として、家臣たちの間で伝わっていくのだろう。


――まあ、よいか。それにしても、駒姫様のお考えが聞けたことが収穫じゃった――

『左様だな。何にもまして、守らねばならぬ姫だ。最上家の宝だな』

 感激を感じさせる太史慈の声に、秀綱も同意した。


――このような姫をもって、殿も、我らが家臣も幸せだな―― 

 秀綱は心底から思った。打ち付けた左上腕の痛みもいつしか忘れていた。



次回から何回かは、ちょっと駆け足になります。

小田原城参陣から検地反対一揆まで、描いていきます。


ただ、太史慈と秀綱と対話にも時間を割いていきます。


ま、どうなるかは筆次第になりそうな感じもしますが。


お楽しみにして下されば嬉しいです!

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