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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第1章 最上家の武将 鮭延秀綱編

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最上家のアイドル 駒姫①

秀綱は、戦勝の宴で最上義光の娘 駒姫と話し機会を得ます。

駒姫は、明るく、朗らかな人柄で、家臣たちの心を掴んでいきます。


そんな駒姫を、秀綱の中にいる太史慈が「似ている」と話します。


よかったら、評価や感想などいただけたら嬉しいです。

励みになりますので……。


秀綱は、駒姫という人物を知ろうと、宴の締めの時間に話しかけます。

 秀綱は、山形城に凱旋した。と、言っても、多数の兵を畑谷城から借りていたので、側近たちだけを連れた凱旋だった。

 

 しかし、既に物見や伊達家からの使者によって、秀綱たちの活躍は知らされていた。出迎えた最上義光は。上機嫌であった。特に、あの、生意気な政宗から礼を述べる手紙と使者がやってきたことが、殊更機嫌をよくした理由だと、秀綱は感じた。


 秀綱とその側近10名は、山形城本丸にそのまま通された。

 広間には、正面の義光に対面する形で、11の膳が用意されている。頭一つ突き出た膳に秀綱が、その後ろに5つずつ2列に並べられた膳に、10人の家臣が座らされた。

 

 脇に並ぶ重臣たちは、志村光安、延澤光延、氏家守棟、谷柏相模、堀喜吽など、山形に在番していた重臣たちが揃った。白石綱元や鳥海勘兵衛など若い武者たちは、普段は顔を合わせない重臣たちが揃っているので、緊張のせいか威圧のせいか、顔色が優れない。


「おやおや、摺上原の勇士たちが、こんなところで死にそうな顔してますね」

 光安が、秀綱に冗談めかして話しかけた。


「はっはっ、お前たち緊張する必要はないぞ。のう、勘兵衛。お主は、伊達成実殿に相撲を何番も仕掛けたではないか」

 秀綱が、勘兵衛に話を向けた。勘兵衛は、何を言おうか逡巡していた。


「おお、あの伊達家の鬼っ子と組んだか!で、勝ち負けはいかがじゃった?」

 家中でも随一の怪力を誇る延澤光延が、勘兵衛に話しかけた。


「いえ、何番も組みましたが、投げられたり、組み伏せられたりと、勝てませんでした」

「なんと、情けない。よし、立て。儂が相撲のコツを教えてやるわい!」

 光延は立ち上がった。天井の梁に着くかという巨躯に、勘兵衛も怯んだ。


「やめよ、光延。今度は、本丸を壊す気か」

 氏家守棟の苦言に、一同が笑った。


 光延は、最上家重臣一同が束になってかかっても叶わず、さらに、義光が敵わじと逃げたのを追いかけ、義光が登った桜の木ごとひっこぬいて投げ飛ばしたという逸話があった。


「こんど、我が屋敷に参れ。さすれば、成実ごとき片手で投げ飛ばせるようになるわ」

「ははっ、その力を身に着けとうございます」

「真か!鳥海勘兵衛と申したな。覚えておくぞ。わはははは」

 光延は高笑いをした。


――勘兵衛は、光延殿に覚えてもらったな――

 

 同じ家中でも、領地はそれぞれ離れている。そのため、重臣間であっても、各家の陪臣まで知っている例は少ない。だからこそ、他の重臣たちに名を知ってもらえれば、つながりも生まれて、共闘する際にも有利に働く。今日の報告は、10人を知ってもらえるいい機会であった。


「なんじゃ、儂を差し置いて盛り上がっておるようじゃな」

 義光が、ゆっくりと大きな声とともに登場した。そのまま、正面の席に座った。


「秀綱、ただいま帰りましてございます」

 秀綱は、義光に一礼して、摺上原の戦いの報告をした。義光は、上機嫌で聞いている。光安も、頷きながら満足げに報告を聞いていた。


「お主の活躍は、お義からの礼状で読んで、知っていた。最上との関係も良くなれば、と書かれていた。今までの確執もあれど、最上と伊達の絆を築く上でも、此度の働きは真に素晴らしい」

「ははっ」

 秀綱とその背後の10人も義光に平伏した。


「あの、父上。私もよろしいでしょうか」

 幼い女の声が聞こえた。皆が振り返ると、黒く艶やかな髪をした、目のくっきりとした少女がいた。萌葱の品のいい打掛を着ている。一同の視線を、少女が独り占めしていた。


「お駒か。むくつけき武者しかおらぬぞ、ここは」

 義光は、少女に声をかけた。


「あれが、駒姫様か」

 背後の誰かが呟いたのが、秀綱にも聞こえた。


「父上、むくつけきなんて言ってはダメです。最上家が誇る精鋭たちでしょう。母上も、歓迎して参れと仰いましたよ」

 駒姫は、義光にニコリと笑顔を向けた。よく見ると、手に瓶子を持っていた。


「まあ、よい。お主らの活躍は、既に知れ渡っておる。くどくどいうのも、無粋というものであろう。では、宴を始めよう」

 応!


 一同が応えて、小姓や侍女が酒と料理を運んできた。

「お駒。ここに来て、酒を注いでおくれ」

 義光は、駒姫に声をかけた。


「今日は、戦いに行って帰ってきた秀綱様たちのための宴です。お父様は何もしていないので、待っててください」

「そんな……、儂もいろいろしているのだぞ」

 義光は、悲しそうな声を出した。それを見て、一同笑った。


「では、まず秀綱様に」

 駒姫は、危なっかしい手つきで、瓶子を持っている。秀綱は盃を差し出すと、プルプルと震えながら酒を注いでくれた。

「いただきまする」

 秀綱は盃を飲み干した。それを見て、駒姫は満面の笑みを浮かべて、後ろに回った。


「お駒、秀綱だけでよいではないか」

 義光は、悲痛な声を上げた。


「お父様は黙ってて。お父様は、秀綱様たちがいないと、活躍できないではないですか。その秀綱様は、このご家臣たちがいないと、活躍できません。つまり、このご家臣たちがいてこそ最上家があるのです。私なりに感謝の思いを表したいのです」


――なんという素晴らしい姫なんだろう――


 秀綱は、感動した。今までは出陣の際に、義光と一緒に見送ってくれる姫という認識だった。しかし、このような想いを持ってくれていたとは、と秀綱は思った。


 佐藤式部や白石綱元、鳥海勘兵衛らは、感激していた。涙まで浮かべている者もいた。


『似ている……あの方に…………」

 秀綱の脳裏に、太史慈の声が聞こえる。感激して、泣いているように聞こえた。


――太史慈よ、どうした――

 秀綱は、太史慈に脳内で語り掛けた。だが、何も答えなかった。


――まあ、よい。後で、いろいろ聞くとしよう――

 秀綱は、吸い物に手を伸ばした。思わず熱さを確認した。それに気づいて、秀綱は苦笑した。

 

 脇を見ると、光安も笑っていた。

――こいつ、知っているな――

 思えば、秀政宗から出された煮えたぎった吸い物を飲んだところから、伊達家と秀綱の信頼が生まれたのだったなと秀綱は思い起こしていた。


 その感傷を打ち破るだみ声が座に響いた。


「殿、駒姫様を大事にしておいでのようですな。このまま、外の家に嫁に出さないで、最上家に婿を迎えてはどうですか」

 光延だった。見かけに反して、それほど酒に強くないようだ。既に酒に酔っている。


「まさか、儂にとって駒姫も、最上家にとっての将棋の駒に過ぎぬ」

 義光の言葉に、さすがご当主という言葉も漏れた。


「ま、角成り馬、飛車成り龍を足したような駒だがな」

 義光は盃をあおってから言った。

「それ、最強じゃないですか。滅茶苦茶大事じゃないですか」

 光延が突っ込んだ。座は、笑いに包まれた。その父の姿を、駒姫は冷ややかに見ていた。


 興が乗ってきたところで、駒姫は琴を披露した。時々調子を外して、家臣たちから突っ込まれた。その家臣に義光が怒るという光景が何度も繰り返された。駒姫がいるところで、笑いが起こる楽しい宴であった。


『表面で見るな、あの姫様は素晴らしい姫様だぞ』

 太史慈の声が再び聞こえた。


――どこがだ? 確かに賢い姫だと思うが――

『話してみろ。素晴らしさがわかる。あの方に似ているのだ……あの方に』


――あの方って誰だ――

 秀綱の言葉を遮って、太史慈の声が被さってきた。


『話してみてくれ。それで、わかる』

 それ以来、太史慈は再び沈黙に戻った。


――話と言っても、義光様もいるからゆっくり話もできもせんじゃろう――

 秀綱は、酔い覚ましに庭に出た。庭園を眺めていると、脇に駒姫がやってきた。義光も光延も酔いつぶれて、宴はお開きになりそうだ、ということを告げに来てくれた。


――これは、この姫を知る機会か―― 

「姫もこんなつまならない宴につきあってありがとうございまする」


 秀綱は、駒姫という人物を知る機会だと思って、話しかけた。


駒姫は、最上家のアイドル的位置づけにしようかと思っています。


明るく、みんなの心を掴む、アイドルです。


そのアイドルが、家臣たちに対しての想いを吐露するのが次回の内容です。

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