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太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第1章 最上家の武将 鮭延秀綱編

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政宗との約束

秀綱の功績を政宗も認めて、宴で称賛をします。

 秀綱は、黒川城に入城した。先に伊達勢が城を接収していたので、難なく大手門を潜れた。一時は裏切りや確執などと噂されていた秀綱の入城に、戦勝気分の城内の空気がにわかに緊張した。


「おお、我らが英雄のご帰還だな」

 成実が、秀綱に近づき、声をかけた。確執の相手となっていた成実の親しげな接し方に、周囲は当惑していた。

「いいか、お前ら。我らのいがみ合いは策だった。憎まれ役を秀綱殿が買ってくれたのだ。今、こうして黒川城で寛げるのは、全て秀綱殿の功績あってのものだ」

 成実は、一人でも多くの兵の耳に入るように大声で秀綱を称えた。兵たちに困惑と歓喜の声があがった。


「おう、勘兵衛。無事に初陣は飾ったか」

 成実は、秀綱の脇にいた勘兵衛に声をかけた。


「はい、名のある武者は討てませんでしたが、ある程度は活躍できたと思います」

 勘兵衛は、まだ緊張と興奮の混じり合った顔をしていた。


「いや、お主は赤田を討った。誇るべき手柄だ」

 成実は思い出したように、言葉を継いだ。


「赤田の妻に迫っていた奴だがな、俺らの手で処断はできなかった。あんな奴でもそれなりに伊達家でも力を持っていたからな」

「そうですか」

 勘兵衛は、浮かない顔をしていた。せめて赤田日向を裏切りに走らせたきっかけを作った奴に罰を与えてほしかったのだろう。


「だがな、悪いことはできないもんだ。この戦いで、流れ矢を受けて死んじまったよ」

「えっ」

 勘兵衛は驚きの声を上げた。


「まあ、こんな形でしか解決できなかった。赤田の件は、殿も残念に思っている。だから、今後綱紀粛正に努めるだろう。それで、なんとか折り合いをつけてくれ」

 成実は、バツが悪そうな顔をしている。


――これは内内に粛清したようだな――


「成実殿、我らにとってはそれで十分にござる。まずは、城内で兵たちに休息を取らせとうございます」

 秀綱は、兵を中に進めようとした。


「心得てござる。鮭延勢の方々は、二の丸にお進みあれ。そこに、食事といささかの酒を用意してござる。この者が案内いたす」

 成実の家臣が、式部や綱元らを先導し、二の丸に案内していった。


「秀綱殿はこちらへ。簡易ながら、宴を用意してござる。着替無用。甲冑姿でお越しあれ。皆、戦場よりそのまま参ってござる」


 こうした宴では、首実検も行われる。討ち取った将の首を披露し、討ち取った者が主君や諸将の前で称されるのである。


 成実に案内されて、秀綱は末端の床几に腰を下ろした。並みいる諸将が、秀綱の入場に黙礼をもって迎えた。成実の入場を潮に、景綱と政宗が入場し、首実検が始まった。


 敵将の首級は、薄い化粧を施される。その首級は、三宝に乗せられる。首を持つ家臣は、親指で耳を抑える。政宗は兜を脱いだだけの武装状態である。斜に構えて、視線を決して首に合わせない。目の端で首を確認するだけである。そして、政宗は刀をいつでも抜けるよう柄に手をかけている。脇の近習も、一人は刀を抜ける状態で構え、もう一人は弓を番えて、いつでも撃てるようにしている。

 これは平将門が、首になっても飛んで行ったという逸話を踏まえての対応である。控える諸将たちも、いつでも刀を抜けるように構えている。


 この状況で、首実検は粛々と続いていく。


「最後は、金上かながみ遠江守とおとうみのかみ盛備もりはる殿でござる」


 一同、ほうっとため息をついた。秀綱も、盛備の首級を見て、灌漑深くなった。

――蘆名の執権とされた金上殿も、躯を戦場にさらしたか――

 秀綱も、一代の名将と言われた武者の首に手を合わせた。




 首実検も終わり、秀綱は黒川城本丸での宴の席へ案内された。

 秀綱は案内されて驚いた。席は、右の2列目である。重臣筆頭の片倉景綱、伊達成実に次ぐ三番目の席次であった。

「これは何かの間違いではござらぬか」

 秀綱は脇の景綱の尋ねた。

「いえ、これは殿の意向でございます」

 景綱は微笑んで応えた。


「損な役回りを押し付けた秀綱殿へのせめてものもてなしでございましょう」

 景綱がそこまで言うやいなや、政宗が登場した。諸将と同じく、甲冑を纏ったままの登場であった。

 政宗の登場が合図になり、小姓たちが何人も出てきて、慌ただしく酒を注いで回った。併せて、簡単な料理も出てきた。準備が整ったのを待ち、政宗が立ち上がって話した。


「此度の合戦で、会津は我が領地となった。これも、皆の奮闘努力のお陰である。時に、今日は皆に伝えたいことがある」

 政宗は、秀綱に視線を向けた。

「首級の働きはないが、この戦の前に我が意を汲んで、偽りの内応と言う苦肉の策を演じてくれたのが、叔父上から援軍で参ってくれた鮭延秀綱殿じゃ。我が陣営の裏切り者を暴き、戦の潮目で蘆名本陣を突いてくれた。その働き、比類はない。軍忠状に記せぬが、敵将の首をとったと、いやそれ以上の武功であると私は認める」

 景綱と成実は、手を叩き秀綱を称えた。諸将もそれに倣った。秀綱は、政宗に向って礼をした。


「ここで、秀綱殿に問いたい。何か望みのものはないか。叶うならば、褒美として遣わす。遠慮なく、、申すがよい」

――褒美と来たか、さて――

 秀綱が考えていると、太史慈の声が聞こえた。

『こんな時に、金や財宝などではつまらないな』

――わかっている。政宗は、変わり者だ。粋や派手を好む。ならば――


「ならば褒美として、伊達家と最上家の永劫の誼を頂戴いたしとうございます」

 秀綱の申し出に政宗は困った顔をした。


「あの叔父上か……。秀綱殿の前で言うのも何だが、お主は信頼できるが、叔父上は油断がならん。誼というのも、警戒していては結べまい」

「恐れながら申し上げます。主君 義光は、単純に身内に甘いお方。政宗殿も、お身内であれば、誼を通じるは十分に可能かと」

 政宗は困った顔をした。

「よい、その話は後じゃ。まずは、周りから飲ませろの視線が痛いゆえ、まずは飲ろうぞ!」

 応!の声が広間に響いた。それを合図に、所掌の膳に料理が運ばれた。



「安堵せよ。此度は、吸い物は適温じゃ」

 政宗は、ニヤニヤと笑いながら語り掛けてきた。秀綱は吸い物を口に含んだ、旨味が口の中に広がった。


「秀綱、近う」 

 政宗は、秀綱を座の正面に来るよう言った。瓶子を持っている。秀綱も盃を空けて、政宗の前に座った。


「叔父上との誼を褒美に求めるとは、驚いたぞ」

 酒を注ぎながら、政宗は語り掛けた。


「何、ささやかな仕返しにございます」 

 秀綱も瓶子を手にして、政宗の杯に注いだ。


此奴こやつめ。油断ならんわ」

 政宗は哄笑しながら、盃を飲み干した。


「景綱もこれへ」

 政宗は、景綱も傍に呼んだ。景綱は、ゆっくりと政宗の前にやってきて座った。


「秀綱殿。叔父上はわからんが、お主は信頼できる者だと私は思った。それゆえ、褒美であるが、これではどうだ。伊達と最上の関係は、どうなるかわからん。だが、お主が窮地に陥ったら、我らに知らせよ。その時は、損得を抜きにして助けてやる。どうだ」

――ほう!――

 秀綱も思わぬ言葉に目をむいた。


『ははは 金銀などの褒美はその時で終わりだ、だが、この約束は信頼の証だ。粋ではないか』

 太史慈も愉快そうに語った。


「望外の褒美でございます。ありがたくお受けいたします。それがし、最上家が危うくなりし時、政宗様を頼らせていただきまする」

 秀綱は、平伏して感謝した。諸将が気づいたので、景綱が政宗の言葉を諸将に伝えた。この褒美の話題は、やがて黒川城全将兵に伝わった。鮭延勢は、かわるがわる伊達兵の歓待を受けた。


 



 余談だが、後年、鮭延秀綱の最大の危機で、政宗がこの約束を果たすことになったのである。





この約束は、後に大きな意味を持っていきます。

さて、この後は、秀綱は最上義光の娘 駒姫に気に入られます。

一方で、天下の動きは、秀吉の天下がほぼ確定

政宗も、秀吉に降ります。その後の奥州仕置きで、奥羽には一揆の嵐が吹き荒れていきます。「

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