表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太史慈転生伝~最上義光を放っておけないので家臣になって手助けしちゃいました~  作者: 黒武者 因幡
第1章 最上家の武将 鮭延秀綱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/62

摺上原の伏兵

摺上原の戦いが始まります。

最初は、蘆名勢の有利に戦況は推移します。

 秀綱は、成実と密議をしていた。表面上、成実とは確執の最中だということになっているから、親しく話をするわけにはいかなかった。その成実から、文が一枚、秀綱に示された。


「これが、赤田日向の筆跡を真似た偽書だ」


 内容は、秀綱が内応を受諾した。我らは第二陣にいる。第二陣の我らが戦闘に入ったら、頃合いをみて裏切る。それに応じて、秀綱も第三陣から離脱し、蘆名勢に加わることを承知した。と言うものであった。


「これを猪苗代に着いたら、黒川城にいる蘆名義広に送る予定でござる」

 成実は、書をしまった。


「第二陣は、わざと崩れるということですか」

「左様、第二陣は混乱を致しましょう。そこで、鮭延勢が第三陣を離脱。敵は、予定通りの行動と捉えましょう。それこそが、我らが伏兵でございます」

 成実は、ニヤッと笑った。なるほど、最初から姿が見えている鮭延勢が、軍に混乱を引き起こすことになる。

「我ら500の兵で、それができるとお思いか」

 秀綱の言葉を、成実は意外な面持ちで見つめた。


「かの鮭延秀綱殿に、できぬと言われるとは意外でしたな」

 秀綱もニヤッと笑いを返した。


「いや、おいしいところを我らに譲っていただくとは意外でしたのでな」

「それなら心配ご無用。蘆名勢の混乱を見たら、わが軍はすぐさま反撃をいたします。義広を討つは伊達勢ゆえに、秀綱殿の手柄は隠れますゆえ」

 秀綱と成実は、軽く笑った。


 策は決した。成実は、密かに寺を後にした。



 6月1日 猪苗代盛国が、子の亀丸を政宗の許に届けた。一子を人質に出して、伊達家に恭順を示したのである。これを受け、政宗は本宮城を経由して、4日に猪苗代城に入城した。

 伊達領と蘆名領の緩衝地帯の一角であった猪苗代城が、政宗の掌中になったことで、蘆名義広の本拠地黒川城に一気に侵攻が可能となった。

 猪苗代盛国寝返りの報に接した蘆名義広は、急ぎ須賀川城から黒川城に戻っていた。


 6月5日 猪苗代城の奪還を目指した蘆名義広は、猪苗代湖に迫った。その軍勢の数、16000。

対する伊達政宗は、総勢23000であった。兵数優位は、伊達勢が保っていた。


『それでも攻めてきたのは、成実の書を信じたからかも知れないな』

 太史慈の声が、秀綱の脳内に聞こえてきた。


――それであれば、我らは嬉しいが――

『ま、戦が始まったらわかることだ。それより、この地の天候は調べたか。お、お気に入りの忍びが来たな。私は、黙ったきいておくとしようか』

 太史慈の声が、引いていくのを秀綱は感じた。


「秀綱様、付近の漁師を連れてまいりました」

 嘉蔵が、一人の老いた漁師を連れてきた。大軍がにわかに表れただけで驚愕なのに、その中に連れられてきたのだ。当惑と恐怖を感じていてもおかしくない。


「すまぬな翁よ」

 秀綱は、笑みを湛えて老漁師を迎えた。とんでもねえと、緊張した声色で答えた。少し声が裏返っていた。


「聞きたいことは、いくつかある。何、このあたりの気候のことだ。湖の近くは風が強くなろう。今後、どう吹いていくと思うか、俺に教えてくれ」

 秀綱は極力、優しく話した。そんなっことなら、と老漁師は教えてくれた。


「今は梅雨も終わりの時期だで、雨が降ったら強くなる。今は、少し凪だで知らぬものは漁に出るけんど、俺らはもう今日には漁をやめるだ」

「それは雨が降るからか」

「んだ。雨が降り始める時には、あの磐梯山から強い風が吹いてくるだで。船をひっくり返すくらいの風が吹くで、漁には出ん」

「その雨は、いつから降る。風は、いつごろ吹くか」

「さいですなあ。明日には風が強くなるだな。明後日には、雨が強く降るだ」


――風上に回るか――

 秀綱は、明日の戦いでの動きを決めた。


「嘉蔵、この翁に褒美をやってくれ」

 嘉蔵は、老漁師に袋に包んだ銭を渡した。老漁師は、恐縮しながら満面の笑みで帰っていった。



 5日日中になって、蘆名勢の先手が、伊達勢と衝突した。摺上原の戦いの始まりである。


 伊達勢の先手は、寝返った猪苗代盛国、第二陣は片倉景綱、第三陣は秀綱たちのいる伊達成実の軍、第四陣は白石宗実しらいしむねざね、第五陣は政宗の旗本で構成される本陣、第六陣は浜田景隆はまだかげたか、本陣の左手に大内定綱おおうちさだつな、右手に片平親綱かたひらちかつなという布陣であった。


 黒川城を守る意思の強い蘆名勢は、手強かった。先人の猪苗代盛国の陣を突破した。それを見越して備えた、伊達家の主力の一角である片倉景綱の率いる第二陣が、蘆名勢の勢いを食い止めた。戦が拮抗した時である。


「謀反じゃあ。赤田日向が寝返ったぞ!」

「宮園阿波が寝返りじゃあ!」

 兵たちが口々に、味方の謀反を叫ぶ声が、敵味方に広がった。


「いかぬ。腹背同時に敵を相手にできぬ。謀反者をまずは討伐に迎え!」

 景綱は大音声で叫んで、味方の兵を蘆名勢から離した。第二陣も総崩れの様相を呈した。


――頃合いだな――

 二陣を突破した蘆名勢が、第三陣の成実の軍と激突した時であった。秀綱は、軍を離脱させた。


「鮭延秀綱殿 謀反じゃ!」

「鮭延勢が、蘆名軍に合流するぞ!」

 秀綱たちが、自身の謀反を口にしながら、第三陣を離脱した。蘆名勢の士気がさらに高まった。第三陣もまた、成実の部隊であり、精鋭であった。蘆名勢との戦いは激戦となった。


 激戦の最中である。三々五々に離れていく鮭延軍に、気を配る者は少なかった。秀綱たちは、磐梯山の方向に走った。小高い丘が目印だった。そこに、大崎家から派遣された鉄砲隊500が控えていた。


 半刻ほど経っただろうか。戦いは、乱戦になっていた。蘆名勢は既に政宗の本陣の旗本ととの戦いになっていた。

「蘆名勢の先手が、だいぶ進んでいますな」 

 式部が秀綱に語り掛けた。

「ということは、我らから見えるあたりが、蘆名義広の本陣かも知れぬな」

 秀綱は呟いた。


「殿、磐梯山の頂上付近に灰色の雲がかかり始めました」

 物見の兵からの報告であった。


――そろそろだな――

 風の向きを秀綱は意識した。開戦時に西風であったが、今はやや東寄りの風に変わっていた。

――まだ、弱い――

 秀綱は、引き続き様子を見た。


 さらに、半刻ほど経ったころである。秀綱たちの背後から、ブワアッとばかりの一迅の強風が吹いた。それを皮切りに、東寄りの強風が吹き始めた。


――頃合いだ――

 秀綱は決断した。


「進むぞ」

 秀綱たちは、大崎家の鉄砲隊を先頭に、静かに進軍した。蘆名勢も伊達勢も、目先の相手に目を奪われ、秀綱たちの存在に気付いていなかった。


「鉄砲隊、構えい」

 大崎家の鉄砲隊500が、一斉に火ぶたを切った。


「撃てい!」

 一帯を揺るがす轟音が響いた。蘆名義広本隊の旗本が、バタバタと倒れた。

 強風の風上から放たれた銃弾は、思いのほか遠くまで伸びて、蘆名勢の損害は広範囲に及んだ。この轟音が、戦いの潮目を変えたのである。

秀綱の攻撃で、蘆名勢に混乱が生じます。

次回は、摺上原の戦いに決着がつきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ